第95話 もっと早くに気付くべきでしたわね

 大地が切り裂かれ、そこかしこに地割れが生じている。

 深緑の葉で飾られた木々もことごとく薙ぎ倒されており、生命を感じさせるものは何一つ、残っていない。

 惨状を招き寄せた張本人は地響きを上げながら、ゆっくりと歩みを進めていた。

 既にその姿は白銀の美しき巨人ではない。


『ハカイ……ハカイ……スベテヲ…………ハカイセヨ』


 全身に返り血を浴びたように紅く染まった凄惨な姿の巨人ク・ホリンが呪いのようにただ”破壊”の二文字だけを念じながら、死の行軍を続ける。

 陽光に煌めく、白銀の鏡面のような装甲が錆びつき、赤茶けた色に変化しており、緩やかな曲線を描いていた美しい外見は失われていた。

 鋭く尖った棘が何本も腕や脛の辺りから生えており、頭部からは捩れた角が二本伸びている。

 蒼い両眼が備えられた美しい人形のような顔も元の顔が想像出来なくなるほど、醜く歪んでいた。

 顔の真ん中で自己主張するように大きな単眼が位置しており、時折、額から雷光のような物を発し、周囲を灼いていた。

 その姿は冥府に住むとされる悪鬼のように悍ましく、見た者を恐慌に陥らせるのに余りあるものだ。


『ハカイハカイハカイ』


 延々とループする呪いの言葉を発しながら、ク・ホリンは死の行軍を続ける。


 🦊 🦊 🦊


 転移魔法で自由にアルフィンへの帰還を果たせるようになりました。

 どうして、最初からこうしていなかったのかしら?

 もっと早くに気付くべきでしたわね。


 ただ、隊商と行動を共に出来なくなったのは不幸な出来事が起きたせいですもの。

 それを考えると手放しに喜べないのですけど、食事・入浴・睡眠の欲求を満たせるようになったのは大きいですわ。

 これでストレスの溜まらない生活を送れるようになりました。

 心配な点はヤマトタケルが大きく目立つ見た目ゆえ、発見される可能性が高いということかしら?

 隠しておく場所を確保してからでなくては戻れませんわ。


 そして、どこを目指し、何をすべきかも決まったのです。

 当初はオルレーヌの都ヴェステンエッケを目指し、北に針路を取っていたのですが、東へと針路を変更することになりました。

 魔動兵計画において、技術の粋を集めて組み立てられた女王クイーンが一度も起動実験をすることなく、封印されたとありました。

 彼女の眠る地は都から南東の方角。

 つまり、東へと針路を変える。

 これだけで強力な切り札を手にする絶好の機会を得たのですわ。


 🦁 🦁 🦁


 真面目なお話を本当についさっきまでしていたのですけど、寝室に一歩足を踏み入れた瞬間、我慢していた想いが堰を切ったように溢れてきて、止められません。


「レオ……ちゅっ」

「リーナ、んっ」


 互いに足りない何かを補おうとするように唇を激しく、求めました。

 舌を絡め合って、体液を交換し合って。

 それだけで頭が蕩けてきそうになって、もうそれだけで私はいっぱい、いっぱいになってしまいますの。

 器用に私の歯列を軽く舐めてから、口内を蹂躙してくるレオのざらついた舌に翻弄され、足元がふらついてしまった身体を彼は優しく押してきました。

 いつの間にか、壁に押し付けられて、彼の手がやや乱暴な手つきで服を剥いでいくのを黙って、見ているしかありません。


「ふぁ……あんっ」

「リーナ、もう感じてるね」

「あっ、あん……違うからぁ」


 だって、右手で器用に服を脱がしながら、左の手は執拗に胸を揉んでくるんですもの。

 反応を見て、ただ揉みしだくだけではなくて、先端の蕾を摘まんだり、捏ねたりって……それ、ダメだからぁ。

 レオの手が恥ずかしいところへと伸びてきて、指で閉じている部分を広げながら、焦らすようにゆっくりと侵入させてきました。


「もう濡れてるよね?」

「ふぁ……ひゃぅ」


 彼の服も脱がせないといけないと思って、手を伸ばしても逆に手首を掴まれて、何も出来なくなります。

 熱を帯びて、真っ直ぐに見つめてくる紅くて、きれいな瞳が『いいよね?』と私に尋ねているみたいで。

 彼をただ見つめ返すだけしか、出来ないけど『いいよ』って、伝わったのかしら?


「ひゃぁ、あぁん……あんっ」


 壁に押し付けられたせいか、私はちょっと宙に浮いたような状態になっているみたい。

 そんな私の右足を持ち上げて、狙いを固定したレオが熱くて堅い杭を一気に打ち込んできました。

 抉られるような快感と愛されている幸福感に包まれて、私はただ、嬌声を上げるだけ。

 滾る欲望を叩きつけるように何度も打ち付けてくるレオはいつもより、激しくて。

 何度も奥まで深く刺激されたら、もう無理ですわ。


「あんっ、レオ! もうダメぇ、いっちゃう」

「リーナ! いっていいよ!」


 そう言いながらもレオは優しいから、私が達して無意識のうちに締めてしまうのに合わせるように最奥まで杭を打ち込んでくれます。

 大事な彼の熱い精がたくさん吐かれたのを感じて、私は気持ち良く意識を失って……ませんわね。

 でも、レオは本当に優しいから……え?

 あの休みは……ありませんのね?


 あれだけ、いっぱい吐き出したのにレオのはまだ、元気なままです。

 自己主張するように中にいて繋がっているのですけど……そのまま、抱き抱えられてベッドまで運ばれちゃうなんて。

 一歩歩くごとにコツンコツンと扉をノックされるから、『ひゃぅ』って変な声が出ちゃうし、涎が垂れてくるし、色々とありませんわ。


「最近、やれなかったし、今日はいいよね?」


 無理と言ったら、やめてくれますの?

 ギラギラとした捕食者の目をしてますものね。

 無言で頷くとご褒美のようにまた、唇を奪われて、舌を求められて……もう考えるのをやめました。


 久しぶりに愛し合ったからなのかしら?

 今日のレオは激しいのですが早いですわ。

 求められるままに組み敷かれ、見つめあいながら、想いと体液を交わすようにキスをするとレオが最奥に注いだのが分かりました。

 キスしながら、注がれるのって、すごく気持ちいいかも……。


 彼もそう感じているのかしら?

 キスをしながら、胸を弄ばれるのは癖になりそうでいけません。

 レオも何度も中で果てて、これ以上出ないくらいに注がれた気がしますわ。

 彼の怒張で満たされていた膣中なかがスッキリしましたもの。

 

 さすがにもう終わったと思いましたの。

 あれだけ、出して萎んだんですもの。

 そう思うのが普通ではなくって?

 甘かったですわ……。

 うつ伏せにさせられて、獣の交わる体勢になった途端、またレオのが元気になるなんて、思いませんでしょう?

 結局、彼の白濁は溢れるくらいに注がれまして。


 はい、それでも終わらなかったのです。

 もう、ほぼ意識が飛びかけている私が上になって、『も、もうダメぇ、壊れちゃう、やぁん、あんっ』って、声が枯れるくらい啼かされるのでした。

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