第66話 このリボンでポニーテールにして

 体調もほぼ戻ってきました。

 日中、レオと模擬戦を行えるくらいの体力はあると思います。

 正確には体調ではなく、レオが夜、あまりに激しいせいなのですけど!

 こればかりは彼一人の責任ではありませんし、それだけ深く愛されていると思えば、多少の…多少なのかしら?

 翌日、起き上がれないくらい、衰弱しているのですから、多少ではない気がしますわ。

 ただ、他の方に夜の営みがどれくらいのものなのかと聞くことは憚られますでしょう?

 そのようなかなり、際どいことを考えながら、ほのぼのとした夕食の席に着いています。

 今日はちゃんと五人全員が揃っての夕食ですもの。


 大陸有数の港町であり、新鮮な海産物や交易でもたらされた珍しい産物が豊富なリジュボーですから、ディナーの内容は海からの恵みが多いみたい。

 メインディッシュは大型の海老にコクのあるホワイトクリームソースをかけ、オーブンで焼いた物でしたけれど、これはアルフィンの方でも取り入れたいくらいに素晴らしいお料理でした。

 ただ、アルフィンは内陸にありますし、同じようなものを再現するのは困難を極めそうですわね。

 アルフィン湖に生息する淡水の海老でここまで大きな海老はいませんもの

 そんな美味しい料理を楽しみながら、夕食の席で決まったことは当分の間、ギルドのクエストを受けず、自由に過ごすということです。

 当分の間と言ってしまうと大まかで分かりにくい表現ですけども、本当はちゃんと期日が決まっています。


 実はレオの誕生日が二週間後に迫っているのです。

 プレゼントを考えたり、用意したりと色々ありますから、二週間などあっという間です。

 もし、クエストを受けていて、不測の事態が発生したらと思うと依頼を受けている場合ではないですわ。

 それなら、完全にお休みしておく、これが導き出された結論なのです。


 🦁 🦁 🦁


 夕食が終わった後、お風呂でレオと軽く運動をする程度(内容はご想像にお任せ致しますわ)に抑えておきます。

 本当に軽くですのよ?

 寝室に戻ってから、就寝に備えて、薄めの夜着に着替えました。

 いつものようにベッドの上に腰掛け、手を繋いで見つめ合いながら『愛している』って、互いの気持ちを伝えあう。

 私とレオのルーティンでこれだけでも十分満たされますわ。


「それじゃ、リーナ。約束は覚えてるよね」

「ふぇ?」


 照明は薄暗くなる程度に抑えてあって、あとは一晩中、愛し合うと思っていたので不意打ちを喰らった私は思わず、変な声を出してしまいます。

 ちょっと恥ずかしいですわ。


「まずは全部、脱ごうか」

「え? あ、あの? はい?」


 手慣れた手つきで折角、着た夜着が瞬く間に脱がされるのはいつものことです。

 そんなことに今更、驚いた訳ではありません。

 問題はそうではないのです。

 脱ぐだけで彼のお願いが終わりではないということですわ。


「それでテーブルに手をついて、そうそう。そんな感じ」


 もう全身を愛し尽くされていますし、生まれたままの姿になったからといって、それほど恥ずかしい訳ではな……嘘ですわね。

 恥ずかしいですわ。

 未だに羞恥心は残っているのです。

 あれだけ愛し合っているのに顔から火が出るくらいに恥ずかしかったりするんですもの。

 それなのに……


「なぜ、照明を明るくしましたの?」

「その方がリーナがきれいに見えるからだよ。それでこのリボンでポニーテールにして、目隠しもしてくれないかな。これがお願いだけどいいよね?」


 くっ。

 すごく恥ずかしいことを言われているのにその笑顔が眩しくて、勝てませんわ。

 抗うことなど出来ないのです。

 渡された肌触りの良いシルクのリボンはレオの髪と同じ濡れ羽色をしていて。

 私を独占したいっていう意思がはっきりと見えてきて、ちょっと嬉しかったりするのです。

 嬉しい反面、この後どうなってしまうのかが分からないから、不安だったりもするのですけど。

 あっ……でも、約束は約束ですもの。

 ご要望にお応えして、リボンで髪をポニーテールにまとめ、目隠しをしました。


「さっきのポーズは分かる? 目隠ししたから、無理かな。ここに手をついて。それでもうちょっとお尻を上げて。うん、それで足をもうちょっとだけ、広げて。いいね」

「は、はい……」


 視覚を奪われているせいでレオの手が少し、触れるだけでも物凄く、鼓動がうるさくて、心臓のドキドキで気分が悪くなってきますわ。


「ひゃぅんっ!?」


 彼の息が大事なところにかかって、その熱さにまた、変な声が出てしまいました。

 これはもしかしなくても目隠しのせいですのよね?


「リーナのここ、すごくきれいだ。それに……もう濡れてるね」


 見られてますの!?

 ううん。

 見られているというよりももっと、じっくり観察されているような……。

 今までにもそういう機会があって、レオに見られて、いじられるということがあったのですけど、それともまた、違いますわね。

 二人だけの部屋はとても静かで息遣いだけがBGMのように響いているのです。

 レオの息遣いがとても荒いから、彼がどれだけ、興奮しているのが良く分かります。

 私もいつもと勝手が違うから、興奮しているかもしれません。

 口にされると自分がはしたない娘みたいでちょっとショックですけど。


「見られてるだけでこんなに濡らして、期待してるね?」

「そ、そんなことないですわ」


 嘘ですわね。

 本当はもっと触って欲しい。

 早くあなたのが欲しいと思っている自分がいるのにそれを否定して、虚勢を張って。

 この期に及んでもまだ、お姉さんぶろうとしているのだから。

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