第411話 宇宙クラスの最凶レイプ魔、それが…
エアコンが元あった壁の中に息を潜め――
吹き出し口の隙間から機関室の中を闊歩するエイリアンを観察しながら、三人の推論は続いた。
まずブルースの説はゾンビ説だ。
エイリアンの姿形がラプトリアンやサウロイドに似ているのは、人工ウィルスのバイオハザードが起きてこの基地にいた
「こういう
ナオミは昔話をするように口を開く。彼女は科学知識は皆無なので、ただアニィとブルースに知っている事実を話すだけである。
「それは元老会から
「禁忌?殺人を趣味にする
「…狩猟だ」
ナオミは殺人を訂正してから続けた。
「我らの掟において、そうした禁忌の生物は数種類いる。その中には猛者だけが挑戦を許され、狩りに成功すれば最上級の名誉を得られるという単純に強い生物もいるが、一方で手を出してはいけないという類の生物もいるのだ」
「ウィルス?」
「だから、その言葉は私はわからない…」
恒星間を移動する宇宙船を扱うくせに科学知識が皆無というのプレデターなのである――ウィルスと毒の違いなど分かるはずがない。
ナオミは溜息交じりに首を振って続けた。
「…ともかくだ。その生物の怖ろしいところは相手の特長を奪うところだ。…いや正確に言おう。相手に自分の子供を産ませるのだ、たとえ相手が別種であっても」
ナオミはエイリアンを睨みながら続けた。セリフの上ではまだ「その生物」と代名詞で言っているが、ほぼ眼前のエイリアンに対して言っている形になっている。
なお――
ここから話す内容は原作のエイリアンとは異なる(かもしれない!)創作だ。原作では言及されていないSF設定を筆者が勝手に取り入れたものである。それなりに理に適っているという自負はあるが、あくまでファンフィクションに過ぎないので「エイリアンってこういう生活史(誕生→成長→生殖→寿命の循環のこと)なんだよね」とほかの人に話してはいけない。いや、エイリアンの生態の話を誰とするのかはわからないが……
プレデターの掟の中で禁忌とされた生物が何種かいて、その中の一つは相手との間に子どもを作るという特殊能力を持っている――とナオミが説明すると
「それは…ミュータントということ?」
アニィが間髪おかず質問を返した。インドなまりの英語はカラフルなインコのようにうるさい。アニィは頭脳明晰だが、それゆえに知的好奇心が先行してしまう。相手の答えようのない質問とは話の腰を折るだけの愚問であると分からないのだ。
仕方がないのでブルースが「いちいち構うな」とアニィを諭し、ナオミに話を続けるよう促してやった。
「構うなよ。…さ、話を続けろ」
「ああ。いま翻訳機が動いたが、ミュータントという表現は少し違うようだ。そういうサイエンティフィックなものではなくもっと野蛮な交尾、レイプだ。そう、その禁忌の生物を禁忌たらしめているのは、レイプの特徴だ。相手にムリヤリ自分の遺伝子を植え付け、相手に子供を産ませる特徴なのだ」
彼女が言わんとする事を補足すると、ウィルスも勝手に細胞に侵入してそこにある栄養や機能を使って
つまり、どんな相手とも交雑してしまうという究極の有性生殖システムを持つ生物なのだという。
「……!」
ナオミとブルースは言葉を失った。
このとき二人が言葉にしなかったこと「他種と…ましてや別の星の種と交雑などできるのか?メチャクチャに遺伝情報を混ぜて出来上がるほど生物は簡単ではないはずだ」という指摘をナオミは先んじて話し始めた。
「繰り返すように私は科学は分からん…。だがともかくアイツらは“そういう事”が可能な異形の
三人はエアコンの吹き出し口の隙間から、恐怖だけでなく気味悪さが加わった視線で機関室を闊歩するエイリアン達を見つめた。
「アイツらの生存戦略は産まれる前から始まる。アイツらは“動く卵”に乗って宿主を探すらしい」
「“動く卵”?」
「ああ。私は役目を終え抜け殻になった“動く卵”だけは見たことがあるのだが、そいつは巨大な蜘蛛のような形状だった。だがこの蜘蛛は生き物ではない。あくまで卵なのだ」
二人はよく分からず、次の説明を待った。
「
この動く卵というのがいわゆる「フェイスハガー」のことだろう。
「…それで動く卵は何をする?」
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