闇に踊る

五味千里

第0話 プロローグ

 雑踏。声。車。音、音、音。全てが煩い。言葉と感情が頭を掻きむしり、僕を嗤う。果てのないビル群が僕の翼を捥いで、呆れるほどの現実の海に陥れる。胸に秘めた黒点がケラケラと回り、僕の世界はバラバラ。


「ああああああああああ!!」


 発狂した。地面を蹴る。両腕を振り回す。

 抑えられない感情が、僕を躍らせる。可笑しい。聞こえるのは、トンネルの音。空洞を風が通って屈折する音。

 それでも周りの黒い木乃伊たちは、行進を続ける。

 僕は独り。孤独な道化。でも玩具じゃない。立派なニンゲン。

 

 ねえ。誰か見てよ。僕の踊り。

 離れないで。消えないで。


 僕のそばにいて。

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