第8話 誰にだって秘密はある ス
「「な!?」」
フォーと一緒に驚きで声を出したのは俺の側近シャドーウ君。まさか彼も知らなかったとは。普通に知ってると思ってたからこの反応には俺も驚いている。まさか影長たちを欺けるとでも思ってたのかお前?あんなバケモンに何でいけると思ったの。
そして必死に無罪を主張するシャドーウ君。ハイ被告人弁明をどうぞ。
「私は幼少の頃からスリー様にお仕えしております!それは何かの間違えではありませんか!?」
ハイ被告人はご着席下さい。
「俺が幼少のころからな。お前は俺の倍の年でしょうが。」
「そうなのですか兄上?」
そうなのだよ愛しの妹よ。
「影って影武者も兼ねるでしょ?」
「・・・ええ。」
突然の話題転換にびっくりしている妹。YES/NOで応えろよハゲって顔で俺を見ている。でも必要だからちょっとだけ喋らせて。
「影武者。まあ顔は整形。体格は服を詰めればなんとかなるとして、身長はどうやって調整していると思う?背伸び調整魔術?」
「そんな可愛い名前の魔術効いたことありませんわ。」
可愛いか?女の子の可愛いって男の筋肉主義と同じぐらい意味不明だよね。
閑話休題。
「そこで影秘伝の魔術に成長抑制っていうのが登場する。これがあってシャドーウ君は肉体年齢を俺に合わせてたの。影武者としての役割を果たせるようにね。」
8歳の対象には7歳~9歳の肉体で接することで影武者としての仕事をこなす。リアル幼児に影武者なんてできないからね。肉体年齢子供の大人がなった方が良い。ついでに護衛対象との心の距離も近づけるって算段なわけ。
「フォーの側近のシェードちゃんもそうだよ。実年齢言ったらぶっ殺されるから絶対に言わないけど。」
・・・シェードちゃんに眼睨みされてるから既に手遅れかもしれん。
ごめんね。女の子だもんな。年齢のこと言ったら駄目だよな。反省しているから許して?え、駄目?
涅槃静寂の間に影のみにつたわる瞬き信号で謝罪したら怒りの返信が帰ってきた。だからごめんって。
フォーはそんな俺等に気付かず解決しきれていない疑問を吐き出す。
「幼い頃からシェードが私と同じ背丈だったのも?」
「そう。その魔術のお陰さ。」
側近は王子の影武者も兼ねている。王子が子供の頃は当然幼い肉体の影武者を準備するべき。でも幼い子供に精巧な影武者なんてできっこない。だったら成長止めた大人を準備しちゃえ!ていう魔術が成長抑制。人権ガン無視の禁術だ。
王子の成長に合わせて自身の肉体を成長するために段階的に解除していくんだ。
禁術だけどね。これを弄れば不老魔術になるし。
長なんか全員ショタロリだ。永遠にゴールデンエイジ期(運動神経の発達が著しい時期)を謳歌する為らしい。そんなものの為に肉体の成長止めますか普通?アイツら騎士団と違って頭良い脳筋だから嫌い。心を折ることも忘れないから本当に洒落じゃ済まないんだ。
というか敵意を抱いた時点で消してくるから絶対に勝てないんだ。
「それにしても。。。。」
フォーは思い出したかのように俺の横に立つ男を見る。その目は人畜を見るように冷徹で、まるで氷のよう。心なしか、気温も下がっている気がする。
「なぜシャドーウを生かしているのですか?私が消しましょうか?」
「いや、フォーあのね。実はこれには事情が」
「私が処分しましょうか?」
フォーはさっきから怖いね!?そんな簡単に殺すとか言っちゃだめだよ!?
兄ちゃんそんな妹を育てた覚えはありませんよ!!
これだからフォーの中立派は誰も手出ししないんだ。コイツは平和の為に家族だろうが恋人だろうが友人だろうが躊躇なく潰しにくるからな。
ある意味で平等なんだ。人を平和の役に立つかどうかでしか見ないからな。身分とか家族とか関係ないんだ。家族よりも平和への愛を優先しちゃうヤンデレーナなんだ。
そして逆鱗に触れると全て消されるという破滅スイッチを搭載しているんだよね。
そんな怖い妹に頑張って返答する俺。偉すぎる。
「それには及ばないよ。というかシャドーウはお咎めなしって言ったじゃん。」
「何故です?まさか情が湧いたとかで、、、いえ、有り得ませんね。兄上がそんなこと考えるわけありません。」
やっぱりフォーは俺のこと舐めてるよね?もうちょっとリスペクト頂戴よ。ちょっとぐらいバチ当たらないよ?だからお願いだから敬意払って?
「純粋にシャドーウの手腕を評価しているの。影とかいう精鋭を洗脳してるんだよ?実力あるやつは手元に置きたいんだってさ。」
兄としての尊厳がこれ以上なく傷つけられていることを実感しながらもフォーに応えてあげる健気な俺。
影長がそういったら俺は逆らえないよね。怖いし危ないし。よって側近のまんま。
「本当ですか?」
「え?信じてくれてない?」
「ええ。」
マジか。妹にすら信用されていないとか参ったなぁ。。まぁ嘘なんだけど。
「うーんとね・・・じゃあ本当のことを言うよ。」
はよ言え、て顔のフォーに対して俺は大マジな顔でこう告げる。
「実はシャドーウって俺達の生き別れの妹なんだよね。」
「え、本当ですか?」
「嘘だよ。」
シャドーウは男の子だよ。妹にはなれない。
うーん、それにしてもどうしようか。さっきの言い訳でフォーは納得してくれない模様。それなら、母親が悪徳貴族に攫われてその時颯爽と助けてくれたのが実はシャドーウでした、にでもしようかな。
こっちの方が燃えるよね!
あ、いや5歳の頃、一緒に遊んでいた親友がシャドーウだったとか!いや、その親友の兄がシャドーウだったとかどうよ!!
うん、こっちの方が泣けるね!よし、これにしよう!
「いいかい、フォー。今から大切なことを言うからよく聞いていてね。。」
「・・・」
厳かな雰囲気を醸し出しながら、俺は口を開く。とそこで、迷い事を頭に浮かび出る。すなわち、燃える話か泣ける話のどっちがいいか。どっちを取るべきか。
難しいな‥‥ん、待てよ。
「あ、そうか!全部ごちゃ混ぜにすればよかったんだ!幼い頃愛しい妹が殺人鬼に殺されそうになって、母と協力して撃退したものの攫われた俺の親友が実はシャドーウ!!だから俺を裏切り奈落の底に突き落としてもシャドーウを許すんだ俺は!」
これなら泣けるし熱い話でもある。完璧かよ。自分の頭脳が恐ろしいぜ。
ふふん。フォーは驚きの余り声もでないか。
「イイ感じの話でしょ!これがシャドーウの秘密さ!」
「だからお前は嫌いなんだよな…」
今日もフォーは口悪いなぁ。。。
俺はちらりとシャドーウ君を見る。
他の影はコイツに唆されて洗脳されたんだけど、アイツは一人でに洗脳された。今までの影では異常事態だ。影は洗脳する側でされる側じゃない。ましてや一人でにっていうのはイレギュラーだ。
無からの想像はありえない。シャドーウの自然洗脳には何か理由があった筈。
だから長たちはシャドーウについて調べ尽くしたい。精神状態、生活様式、食生活、睡眠状態、その他諸々を調査し解明して新たな成長に役立てようとしている。
イレギュラーをも取り入れた存在になりたいんだって。
あいつらこれ以上強くなろうとしているんだよ。理屈は分かるけどそこまでするか、て俺は思うね。
そんな理由があってシャドーウは殺してない。殺したら体しか調べられないしね。
観察日記が付けれなくなるなっちゃう。
「長達にもバレてるなんて。。。」
なお、当の本人は呆然自失。まつで魂の抜け殻。
てっきりシャドーウは知ってると思ったけどマジで知らなかったんかコイツ。まあいいか、業務に差し支えは出ないだろう。
「さ。今日も元気に仕事しようぜシャドーウ!!」
「長にも。。。。バレてる。。。」
「仕事、しようぜ!!」
そうしないと俺が今晩眠れない!!
絶望なんかじゃなくて書類の山を見ようぜシャドーウ君!!
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