封印された祖だよ
あおい夜
一章 祖ですね
プロローグ 始まりは『私』ではない『私』の話
その日は激しい雨が降っていた。
この周辺では珍しい荒れた天気だった。
いつもは美しい花や草や木々等が荒れた風や雨で萎れたり折れそうなほど枝がしなっていた。
その中を一人の女が、、、いや、まだ子供の女の子がフラフラと頼りない危なっかしい足取りで歩いていた。
「、、、、、。」
その女の子の気配を感じたのか今まで誰も居なかった場所から男達が現れた。
その男達は皆とても美しい容姿と雰囲気をもっていた。
その男達は自分達の所にフラフラと歩いて来る女の子を見てとても驚いた顔をしながらもその女の子の元に急いで近づいて行った。
「末の!」
「何故ここに?しかも、、」
「何でそんな酷い怪我を?」
「直ぐに兄様が治してやるからな?」
「末の?」
「、、、、、。」
美しい男達はどうやら女の子の兄達らしい。
女の子の姿に驚いて話しかけていた。
女の子は手足や顔など至るところに傷を作っていて痛々しい姿をしていた。
女の子は兄達が話しかけても一切の反応をしなかった。
ただ虚空を見つめるその目は死んだ様に暗い影を落としていた。
「ああ、何が、何が、お前をこんなに」
「どうして、何があったんだ」
「あぁ、、、お腹の怪我が一番酷い、、、」
「、、、ぉ、、ゃ、、、」
「!末の?どうしたんだ?」
一人の兄が女の子の一番酷い怪我をしているお腹を治療しようとしたとき何も反応しなかった女の子が初めて反応をした。
「、、ちゃ、、、ん、、が、、、ぁ、、ん、、が、、」
「なにが、、、」
「それより雨が酷い、末の体力が心配だ。あとは家に帰ってからにしよう」
「ああ、そうだな」
「末の、兄様が家まで連れて行くからな、、、」
兄達は女の子を大事に大事に抱き抱えながら連れて家に帰った。
家に帰った女の子は数人の兄から魔法で怪我を治されていた。
けれど女の子は家に帰ってから一切喋らなくなった。
女の子は全てになんの反応を示さなく、その整った容姿もあいまってまるで人形のようだった。
「末の、末の?先程までは少し反応していたのに、、、」
「ナニがあったというんだ」
「どうして末のがこんな、、、」
なんの反応も示さなくなった女の子に兄達は悲しげに声をかけていると少し席を外していた一人の兄が何かを持って戻って来た。
「皆、これを」
「これは、、、水晶?」
「そうだ、これはかなり昔、、、祖父くらいの代の時のモノで一度だけ人の過去を視る事が出来るモノだ。
これを末のに使いナニがあったか確かめる事にした」
「末のに?」
「ああ、末のは見られたくないかも知れないが、、、このままだと末の心が完全に壊れるかも知れない」
占い師が使う様な丸い水晶を持ってきた兄の一人はそう言った。
その話に皆が納得し末といわれる女の子の前に水晶をかざした。
「末の、、、悪いが少し視させてもらうぞ」
そう言い水晶に力(神力)を込めると水晶が光その場に居る者を包んだ。
その時間は一瞬だったのか数秒だったのかもしかしたら数分か数時間たっていたのかも知れない。
兄達は涙を流しながら女の子を抱きしめた。
「こんな、、、こんなことが、、、」
「こんなことがあって良いわけがない!」
「ああ、、末の、、、こんな、、」
「辛かっただろうに、、、ここまで戻って来たんだな」
女の子に起きた出来事を視た兄達は女の子を浄めた後に少し家から離れた所に女の子を連れて行った。
そして女の子を封印する為の優しい魔法を唱えた。
「今はまだ辛いだろう」
「だから少し休むと良い」
「お前の心の傷が少しでも癒されたなら起きておいで」
「それまでずっとずっと守ってやるからな」
「「「お休みなさい」」」
女の子はクリスタルの様な宝石の中に眠る様に封印された。
女の子が起きるまであと、、、。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます