第2話 結婚ごっこ


 小学生の時に結婚式をした俺と妹……勿論法的になんの効力は無い。

 でも……当時俺は妹が後1年で天国に行ってしまうと本気で信じていた。


 だから結婚式の後も妹の願いは、望みは……出来るだけ叶える様にしていた。


 小学生、特にモテたわけでは無い俺と、入院生活が長かった妹、そんな二人に恋愛経験なんてあるわけが無い、知識を得るにしても映画や小説の中ぐらい。


 その偏った知識での恋愛、結婚ごっこに……妹はすっかり俺の妻になりきってしまった。


 そしてそれから5年、幾度かの入院、手術を乗り越え、妹は普通の生活が出来る迄に回復した。


 それは勿論嬉しい事だ、妹が生きていてくれた事に関しては、ただただ感謝しか無い。


 でも……治るなら……あんな事はしなかったと俺は今、猛烈に後悔している。


 あんな事とは……結婚式だけではなく……。



「旦那様~~」

 夜になると……妹はいつも俺の部屋にやってくる。


「だ、だから旦那って言うなって、後ノックしろと」


「へへへ、見て~~新しいパジャマ」


「いや、聞けよ!?」

 妹が着ていたのはピンクのフワフワパジャマ、たしかアイスの様な名前のブランド品だった気がする。

 俺が某アニメ作品の様に、座ったまま首を後ろに大きく傾げさせ、化物の様に背後にいる妹を恨めしそうに煽り見る。

 そろそろ寒波襲来等とニュースで騒ぎ始める季節……妹はいかにも暖かそうなフワフワモコモコのパジャマを着て、まるでウサギの様な姿で扉の前に立っていた。

 こうして妹を改めて見ても……やはり年齢の割には小さいと思わされる。


 小さな身体に細い手足……病弱だった妹の身長、スタイルは……小学生の頃から殆んど変わっていない。

 

 さらに今日は黒髪ロングを両サイド二本にリボンで結んでいる。

 そのロングツインテールは、大きな耳を垂れ下げているかの様だった。

 小さい身体に垂れた耳、まるでホーランド・ロップという種類のウサギの様に妹は愛くるしく俺を見つめていた。


「あ、ああ……」

 可愛い……俺はそう思った。あの時と、結婚式の時と変わらず妹は俺にとっての天使だった。でも、俺は堪えた……抱き締めたくなる気持ちを抑え、気の無い様に演じた。


「えーーそれだけ? 可愛いとか言って、ねえ言って言って!」

 机に向かって勉強していた俺……まあ、妹の事を考えて殆んど出来て無かったが……妹は後ろから俺の首に抱きついて甘えてくる……いつもの匂い、甘い匂いを振り撒きながら、俺の首を絞めてくる……ぐ、ぐええ!。


「か、がわいいから、ぐ、るじい……」

 なんだっけこの技、プロレスであったよなあ……そしてここまで元気に力強くなったんだなあ……と……感慨に……浸りつつ…………意識が…………段々と………………遠退く…………。


「やったあ!」


「げ、げほ、うえ……そ、それで……用はそれだけ?」

 

「ぶううう、何よお、妻が旦那様の所に来ちゃいけないって言うの!」


「だ、だから妻妻言うなって」


「良いじゃん妻なんだから!」


「日頃言ってるから中学の時、つい皆の前でそう呼んじゃったんだろ?」


「あ、あれは、たまたま~~」


「たまたまバレなかったから良かったけど」


「高校では気を付けるよお、だから二人きりの時は良いでしょ?」

 

「駄目、駄目ったら駄目」

 可愛い顔しても駄目だから!


「ぶううううう」

 妹は口を尖らせ俺に抗議する。いや……もうこれ以上既成事実を増やすわけにはいかない……。

 妹も、もうすぐ高校生になるんだから、そろそろいい加減現実を見なければ……。


「じゃあさ、出来るだけお兄ちゃんって呼ぶからさ、そろそろ……ね?」


「ね? って……」


「だーーかーーらーー来年はいよいよ私も高校生、だから……ね?」


「だから……ね? って言われても」


「ああああ、もう! だーーかーーらーー、そろそろちゃんとエッチしようって言ってるの!」


「ちゃ! ちゃ、ちゃんとって、ちゃんとってなんだ! するか!」


「えーー、だから新婚初夜の時の様なもぞもぞっとした奴じゃなくて、ちゃんとお兄ちゃんのを、そう……」


「うわあああああああ、言うな、言うなああああ!」

 そう……俺達は……あの日の晩から……結婚式の晩から……何度か…………もぞもぞっとした事をしていた……。

 所謂……映画で出てくるベットシーン……な事を……。

 

 当時まだ小学生だった俺と妹の性的知識はほぼ皆無だった。

 

 とりあえず俺と妹の共通認識として、結婚した二人は初夜と言って、愛する二人が結婚しがその夜に、ベットでキスをして……そして……もぞもぞってするって思っていた……。


 それは一緒に見た映画での知識……裸で抱き合う二人にはシーツがかかっていて、正確に何をしているのかは当然見えない……だから……その……真似事っていうか……なんというか……。


「良いでしょ! 私達結婚してるんだから!」

 妹は再び俺の首を絞めにかかる……。

 ああ、もうそのまま……いっそ殺してくれええええ……。


 俺が妹と離婚したいけど出来ない無い理由は、これだけじゃ無い……まだまだ色々とあるのだった……。

 

【あとがき】

 先が気になる方は、ブクマ、★レビューを是非とも宜しくお願い致します。m(_ _)mヨロ

カクヨムコン出品中ですので、是非とも応援の程、宜しくお願い致します。(*゜ー゜)ゞ⌒☆ヨロシクデス

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