ウィッチグラウンドワークス
航悔 氏銘
第1話 プロローグ
「ねえ、知ってる? あの子、魔女と魔法使いの娘なのに、魔法に目覚めなかったんだって」
「ていうか、あいつ、動物と話すことも出来ないじゃん」
「それだけじゃないよ、箒で空を飛ぶことも出来ない」
「魔法に目覚めず動物との会話もできない、箒で空を飛ぶことも出来ない、あの子、何のために生まれてきたの?」
「失敗作じゃん」
幼い頃、少女にはいつもこんな言葉が体をまとわりつかせていた。その言葉はまとわりつかせるだけではなく心の臓を貫き少女の心に、自分はどうしようもない落ちこぼれなんだ、と言う言葉を刻まれていた。
少女の両親は魔法に目覚めない少女を優しくしてくれた。
「魔法が使えなくても貴方は私たちの子ども」唯一の救いだった。しかし、そんな両親も少女が4歳になる時に任務で命を落としてしまった。
泣いている少女に向かい近所の人たちは、励ましてくれたけど少女は知っていた、その人たちが影で「残ったのがあの子なんて、ポートフォリオも終わりだな」
「なんであの子が生きているのよ、頼りになる魔女と魔法使いが死ぬより役に立たない失敗作が死ぬ方が良いじゃない!」
失敗作、その言葉が少女の心の臓に突き刺さったまま、少女は死んだように生きていた。
もう、だれにも迷惑をかけないからひっそりと生きて生きたい、という少女の願いを近所の人たちが許すはずも無かった。
その日、少女は、何でこんな子が来ているんだ、と明らかに不満を隠そうともしない果物屋のご主人から、半分、傷んでいるレモンを買い、酒を呑んでもいないのに千鳥足で自分の家に帰ろうとしていた時だった。突然、足を掛けられ、少女は盛大に転び、レモンは地面を転がり続け、近くのねずみたち、小動物があざけわらうようにレモンを奪っていった。
キャハハハハハハハハ!!!
足を掛けた子どもたちが笑い続けている。少女は何も言わずに地面に俯いていた。
「ねえお前、なんで魔法が使える奴らの家で魔法使えないの?」
「お前が歩いているだけで町が汚くなるから家から出ないでほしいんだけど」
「キャハハハ、ねえ、そう言ったら可哀そうよ、ただでさえ、生きているだけで迷惑なんだから、こんな何にもできない子、見ているだけで腹が立つ」
「さすが、失敗作だな」少女は涙も浮かべず虚ろな目で落ちたレモンを拾い始めた。
その時、グシャ!!! とレモンを踏みつぶされた。
「おいおい、何無視してんだよ」
「うわぁ、かわいそう」
「おいおい、こいつ泣くんじゃねえか!?」
そんな声に関わらず少女は、虚ろな目で家に帰ろうとした。
「親も親だ、お母さんがいってたぜ、あの両親も失敗作だって」その声でリイカは生気とは別の膨れ上がる熱い感情により目を見開き、勢いよく、バカにしていた子どもたちを振り向いた。
しかし、自分の顔に子どもたちが、顔のない口だけの化け物が周りに浮かび少女の怒りをけなしているように見えた。少なくとも少女は子どもたちがそう見えていた。
「何か文句あるのか?」少女の怒りは恐怖で打ち消されてしまった。少女はその場でへたり込み泣いてしまった。勿論子どもたちは益々、増長した。
「おいおいおいおいおいおいおい!! こいつ、泣き始めたぜ!!」
「うわぁ、女じゃないわ、こんな惨めな子」
「泣いた顔もキモ」
と子どもたちが笑っていると、突然「止めろ!!」と声がした。
後ろを向くと、三つ編みの緑髪をした眼鏡の少女がリイカの落としたレモンを全て拾ったのかレモンを持ちながら立っていた。
「お!? なんだ!? ヒーロー気取りの登場か!?」と子どもはクリーチャーを緑髪の少女に向けて放った。と思っていた、しかし、そのクリーチャーは全く動かなかった。
「なんだ!? どうした!?」そこで気づく、そいつの体も全く動かないことに。
その声に「魔法を扱うのにそんなことも知らなかったのか、お前たちは魔法を扱うものとして、落第者だ」そう言った瞬間、子どもたちは体が弾かれたように後ろに転倒した。それに慌てて、子どもたちはひいい、と言いながら逃げた。
「なんだ、口ほどにでもない」そう言って緑髪の少女は後ろを振り向き少女に向かい手を差し伸べた。
「私の名前は、テスカ、君の名前は?」少女は、両親以外で手を差し伸べられたことに戸惑いを隠せなかったが、やがて手を握り立ち上がって「私の名前は……」
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