第105話 天界3


「父上!!!そこをどいてくれ!!!」



カイトが叫ぶ。




レイが何かを唱え、気づいたら見慣れた場所にいたのだ。



ここは、祖国『エデン』。



その天空の島。城の横にある広い平原だった。



目の前には父、『エデン国』の王。

カイシス=ヘンギスが立ちふさがっていた。



父を見た瞬間。理解した。



レイが僕達を逃がした事を。

そして、自分だけが残った事を。



・・・・・そんな事はさせない。

・・・・・絶対に。



「どけぇぇぇぇぇぇ!!!!」



瞬時にカイシス王の懐にはいって拳を入れる。




バシッ!!



ドッッッッッッ!!!




カイシス王は難なくその拳を防ぐと、そのまま蹴りを入れてカイトを吹き飛ばす。



カイトは飛ばされながら、地に着地した瞬間、

踏み出し、カイシス王にめがけて唱える。



「グラビディ!!!」



ズンッッッッッッッッ!!!!!



「ぬうっ!」



重力魔法がカイシス王の動きを鈍らせる。



すかさず、背後に回り込むと、光の弓を引く。



・・・・・貫通系はまずい。

・・・・・気を失わせる打撃系の技を!!!!



「奥義【剛打矢】!!!!!!」



ドンッッッッッッッッッッ!!!



隕石の様な矢がカイシス王へと放たれる。



カッッッ!



当たる瞬間。カイシス王の体が光る。



「クッ!」



カイトは光に目を細めると、背後に気配を感じた。



背後から声がする。



「・・・・・よくぞここまで成長した。」



ドッッッッッッ!!!



振り向いた瞬間、腹に激痛が走った。



「ガッ!・・・・・レイ・・・・・。」




・・・・・レイ。知っているかい?僕は君の真っすぐな所に惹かれているんだ。

・・・・・そして、どんな時でも仲間を想う君に。


・・・・・君との冒険はとても楽しい。苦難を乗り越えた時、共に成長したと感じるから。・・・・・そんな君だからこそ、後ろで支えたいと思うんだ。


・・・・・レイ。忘れたくないよ。

・・・・・君を。




ドッ。




カイトは気を失い。倒れた。




・・・・・カイトよ。強くなったな。まさかここまでとは思わなかった。・・・・・もし、息子が本気を出していたら、私も本気を出さざるを得なかっただろうな。




カイトを見ていた王は、振り返り、彼女を見る。




「さて。・・・・・待たせたな。白雪君。」



カイトが倒れた数メートル先に、白雪が立っていた。










☆☆☆










白雪の下げられた両手から、白く美しい剣が現れる。



・・・・・斬るわけにはいかないわね。

・・・・・なら・・・・・。



「無殺の剣。」



そう言うと、二刀の刀身の周りに膜の様な空気が覆われる。



白雪が訓練の時に相手を傷つけない様にする技。

無殺の剣。峰打ちの様なもので、相手を斬る事は出来ないが、十分に威力はある。



それを見ていた、カイシス王が言う。



「白雪君。・・・・・もう分かっているはずだ。戻ってもどうにもならない事を。・・・・・彼の覚悟を尊重してやってくれないか?」




それを聞いた白雪が怒鳴る。




「貴方は!!!!!何も知らない!!!!

 私達の事を!!!!

 そんな貴方に彼の何が分かるの?????」



シュン。



そう言った瞬間。白雪が消える。



!!!!!!!



ギィィィィィィィィィィィィィィィィン・・・・・



素早く出した大剣で、ギリギリ白雪の一刀を防ぐ。

が、白雪の攻撃は止まらない。



「シッ!!!!!」



キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!



キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!



キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!



キキキキキキキィィィィィィン!!!!



ドッッッッッッッッッ!!!!!




白雪の無数の連撃に、防御が追い付かず、大剣を通り過ぎ、強烈な一撃をカイシス王に与え、後ろへと吹き飛んだ。



カイシス王はゆっくりと立ち上がる。




・・・・・何だと?・・・・・強い!・・・・・なんて強さだ。・・・・・舞の様に切り込む速さもそうだが、一刀一刀の重みが私並みにある。


・・・・・実力は私と同等かそれ以上?・・・・・ありえん。本当に現界の者なのか?・・・・・これは手加減などと言ってられんな。




「白雪君。・・・・・これからは本気で行かせてもらう。」



そう言うと、カイシス王の体の周りが薄っすらと光り出す。



「・・・・・参る!」



ドンッッッッッッッッッ!



ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!



ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!



ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!



ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!



ガンッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!



ザァァァァァァァァァァァァ!!!!!!




お互い技を出さず、純粋な剣と剣との斬りあい。



もの凄い速さで斬り込んでいた両者だったが、二刀流の白雪が、途中、渾身の一撃を入れるカイシス王の一刀を一本の剣で受け流すと、もう一本の剣を体に叩き込んだ。



「・・・・・ガハッ!」



カイシス王は、数メートル吹き飛んだが、踏ん張り、片膝をつき吐血する。



白雪は負傷したカイシス王を見ると、剣をおさめ、行こうとする。




カイシス王は大声で叫ぶ。





「ここに!!!!!!!

 ・・・・・ここに君達の・・・・・いや。

 レイ殿の仲間が来る。

 ・・・・・置いて行くのか?」





白雪は、歩みを止めた。





・・・・・白雪。

・・・・・皆を・・・皆を頼んだよ。・・・・・・





頬に一粒、また一粒・・・・・大粒の涙がこぼれる。





「・・・・・ずるい。・・・・・ずるいよ。レイ。」




・・・・・目覚めてから、ずっと貴方と共に歩んできた。どんな時でも一緒に。・・・・・一人、また一人仲間が増えたけど、貴方がいれば私はそれだけで良かった。


・・・・・ずっと一緒にいる。その気持ちはこれからも変わらない。・・・・・どんな時でも。・・・・・レイ。・・・・・貴方がいない世の中なんて私には無意味。


・・・・・それなら私もいなくなるわ。・・・・・だから・・・・・だから!!!!!!!!!!!





白雪は右手に一本の剣を出すと、左腕に何かを剣で刻み始めた。





「私は・・・・・私は!!!!!・・・・・絶対に忘れない!!!!!!」






・・・・・



・・・・・



・・・・・



カランッ・・・・・。






握っていた白い剣を落とす。






暫く立ち尽くしていた白雪は振り返り、カイシス王に言う。



「・・・・・仲間。・・・・・私の仲間達は?・・・・・カイト?」



「・・・・・白雪君の仲間達は、皆この国に向かっている。・・・・・息子は気を失っているだけだ。皆が揃うまでゆっくり休むといい。」



カイシス王はそう言うと、3大天将の一人、テイルに指示し、テイルはカイトを担ぎ、白雪と共に王城へと向かって行った。





「すまん。・・・・すまん。・・・・・白雪君。」



カイシス王は一滴の涙を流した。




・・・・・



・・・・・



・・・・・



?????




暫くすると、ポケットの中にある手紙が光る。



カイシス王は、光る手紙を読み始めた。



「・・・・・レイ殿・・・・・。」



王は手をその場であげると、すぐに兵士や文官達が集まる。



「すぐに、出る!天鳥を!!!」



「はっ!・・・・・しかし王!どちらへ行かれるのですか?」



一人の文官が尋ねる。



「・・・・・この世界を救う為に、一人で立ち向かっている【英雄】を迎えに行くのだ。」




そう言うと、カイシス王は、天鳥のいる場所へと歩き始めた。










☆☆☆










「ハァハァハァハァハァ・・・・・。」





ここは白い空間の中。





目の前には神殿の様な建物がある。



「流石に疲れたな。」



肩で息をしながら、独り言を僕は呟く。



神殿の階段をゆっくりと上りながら、後ろを振り返り、見渡す。




そこには100体以上の白い魔物が倒れていた。




・・・・・レベル290前後はあったな。それが100体以上だ。一人で倒すには流石にきつかったわ。・・・・・でも、何とかなったな。・・・・・



すでに入って数時間は経っている。



もう僕の事は皆、忘れているのだろう。




「・・・・・・・ごめんな。皆。」




僕は神殿の階段を上りきると、その大きな神殿の入口を守る様に、3mはある2体の白い魔物が立っていた。



一人は斧の様な物を。もう一人は大剣を携えている。




ドンッッッッッッッッッ!



僕が一歩前へ出た瞬間。2体同時に襲い掛かってきた。



ブンッ!!!



斧を持つ魔物が僕めがけて斧を振り下ろす。



シュン。



ドカッッッッ!!!



斧が当たる寸前に消え、斧はそのまま地面へと刺さる。



瞬時に横へ飛んだ僕を、大剣を持った魔物が横一線に斬り込む。



・・・・・が、その剣をスライディングし、躱しながら一刀を入れる。



ザンッッッッッッ!!



足が一本綺麗に切れ、そのまま体重を支えられなくなった大剣を持った白い魔物は前のめりに倒れた。



僕は立ち上がろうとすると、追いかけてきた魔物が斧を振り下ろす。




ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン・・・・・ザンッッッッッッ!!!




振り下ろされた斧に、剣を斜めに受け流しながら立ち上がり、魔物の頭を切り落とす。



シュン。



ザンッッッッッッ!!!



そのまますぐに、片足がなくなった魔物の方も、頭を切り落とした。




「フゥゥゥゥゥゥゥゥ。」




これで、一通り倒したな。



あとは、中に封印されている者だけだといいんだけどね。



そう思いながら、僕は、神殿の入口の前で座ると、回復系のポーションを飲み始めた。



・・・・・もう時間を気にしなくていいんだ。とりあえずここで、ある程度回復してから入るか。



「しかし、この空間はどうなっているんだ?」



不思議な空間だった。



この神殿の様な建物とその周りに滅びた様な街並みがあり、その先は空も含めて真っ白い物に覆われている。



まるで町一個まるごとこの空間に押し込めた様な感じだった。





・・・・・あまり、気分のいい場所ではないな。






「さてと・・・・・行きますかね。」






少し休憩をした僕は、ゆっくりと立ち上がり、神殿の入口から中へと入っていった。






















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