第86話 試験
「シェリーさん!おはようございます!」
僕は冒険者協会本部の館へと入ると、噴水がある銅像の前で待ち合せをしていたシェリーさんに手を振る。
「あっ。レイさん!待ってましたよ。・・・・・フフフ。今日は皆、仮面を付けているのね。」
「ええ。ホワイトフォックスの時は、このスタイルでいこうかと思ってるんですよ。」
「そう。レイさん達は有名人だから、かえってその方がいいかもね。」
正体を明かさないパーティって感じで、カッコイイのでやっているのだが、最近、シュバインさんが言っていた様に、僕達を探しているプレイヤーが結構いる事が分かったので、仮面を付けてて良かったと今さら思っている。
まっ!結果オーライという事だね!
今日は、SSS級試験の当日だ。
担当のシェリーさんと待ち合わせをして、
一緒に5階にある待合室へと移動した。
その待合室は数十人は入れるくらい広い部屋だった。
ザワッッッ
そこには、3つの人だかり。おそらく冒険者パーティだろう。僕達が入ると、一斉にこちらへと視線を向ける。
「おい・・・・・来たぞ。」
「・・・・・あれがホワイトフォックス。」
「・・・・・。」
うん?何か視線が痛いな。
ガチャ!
「おお!全員揃っているな。」
別の扉から、協会本部のマスター。ベルメゾン=ガーイッシュが現れた。
僕達と他の冒険者は部屋の中央に集まると、ベルメゾンは話を始める。
「さて。今回のSSS級試験に挑戦するパーティは君達4組だ!今までは多くても2組だったが、今回はその倍も参加資格を持ったパーティがいてくれて嬉しく思う!
君達には何としてもSSS級になってもらいたいものだ!是非頑張ってくれたまえ!・・・・・それではパーティの確認をさせてもらおう。担当官は前に出てくれ。まずは、『ガーディアンズ』。」
「はい。」
冒険者協会の制服を着た人が、そのパーティの前に出る。
「『ストーム』。
・・・・・『月光の狼』。
・・・・・そして『ホワイトフォックス』。」
それぞれのパーティの担当官が前に出ると、
ベルメゾンは一枚の用紙を渡す。
「君達には、冒険者らしく2つのSSS級クエストを受けてもらう。まず1つ目のクエストは、探索系クエストだ。
その紙にある通り、【水神の花】を手に入れる事。期限は3ヶ月だ。それまでに手に入れる事が出来なかった場合は失格となる。
この花は希少中の希少でね。流通される事はまずない、幻の花と言われている花だ。【水神の花】を煎じて飲めば、ある病気が治るとされている。
世界中に心待ちにしている人達がいるという事だ。・・・・・まさしくSSS級に相応しいクエストだと思わんかね。」
なるほど。
SSS級クエストを受けさせて、実力が問題ないか確かめるといった所か。
分かりやすくていいね。
「それでは健闘を祈る。解散!!!」
僕達は、シェリーさんに最上階にあるスカイカフェで打ち合わせをしようと言われたので付いて行こうとすると、隣から声をかけられた。
「やぁ!『ホワイトフォックス』のリーダーは君かな?」
「ええ。そうですけど。貴方は・・・・・?」
「私は『ストーム』のリーダー、ルーカスという者さ。同じSS級冒険者として挨拶しようと思ってね。」
そう言うと、ルーカスは手を差し伸べ、僕と握手する。
「あぁ。これはご丁寧に。」
「ところで、君は地球ではどこに居たんだい?・・・・・私はイギリス人でプロゲーマーだったんだよ。」
「へぇ~!!!それは凄いですね!僕は日本人で、しがないサラリーマンでしたよ。」
「そうなんだ。
・・・・・でも、MMOの時から君は一つ抜き出ていたからね。
・・・・・どうやったらそんなに強くなれるのか、どうやったらそんな強いNPCの仲間が出来るのか。しかも、レベル100って・・・・・どう偽造してるのやら。
まぁ色々と知りたいんだけどね。・・・・・でもプレイヤー同士の情報は命だから、そう簡単には教えてくれないか。」
「ハハハ。・・・・・まずはとりあえず、
お互い頑張ってSSS級になりましょう。」
「そうだね。それではまた三か月後に会おう。」
そう言うと、ルーカスは仲間達を連れて部屋から出ていった。
『ストーム』か・・・・・。
やっぱりプロゲーマーの方もいたのね。
まぁ一億人以上いるゲームだ。
いて当然か。
僕達は『ストーム』を見送った後、スカイカフェで、お茶をしながらシェリーさんと打合せをした。
どうでもいいけど、この飲み物うまいな。紅茶に近い味かな?
紅茶の様な飲み物を堪能していると、シェリーが僕に話しかける。
「さて、レイさん。【水神の花】は、どこにあるか知っていますか?」
「いえ。さっき初めてその名前を知ったので、どこにあるのか皆目見当がつかないですね。
う~ん・・・・・。とりあえずは、どこのあるのか調べないとなぁ。」
すると、シェリーはカバンから分厚い本を取り出すと、テーブルの上に置いた。
「フフフ。そんな事だろうと思いました。レイさんがSSS級試験に受けると聞いてから、私なりにどんな難関なクエストでも対応できるように調べてきました。」
「えっ???」
調べるって・・・・・。シェリーさんは日中は仕事だ。という事は、僕達と会ってから今まで、仕事以外の時間を費やして調べてくれたという事になる。予想される様々なクエストを。
・・・・・本当に頭が上がらないな。シェリーさんには。
・・・・・ありがとうございます。
・・・・・ちゃんと僕達はその期待に答えないといけないな。
シェリーは、その分厚い本に沢山の付箋が貼ってある一つをめくると、僕達に見せる。
「これです。・・・・・最後に、この花を見かけたのが約100年前と記録されています。この花の特徴や名前を考えるに、私が思うのは、この幻の花は、地上には存在していないのではないかと思っています。」
「・・・・・と言うと?」
するとシェリーは確信しているのか、僕達を見渡してはっきりと言う。
「多分、海。・・・・・外海のどこかに存在していると私は思っています。」
「えっ???・・・・・という事は、海の中って事ですか???」
「そう言う事になりますね。」
まじかぁ~!
海の中はいくらなんでも無理ゲーだろう。
それとも、前に行った海の近くにあるダンジョンみたいな所にあるとか・・・・・・・・ん???
僕は何かを思いついたように手を合わせた。
「レイさん?何か打開策があるんですか?」
「打開策かどうかは分からないんだけど・・・・・探す当てはあります。」
「本当ですか!?」
僕は立ち上がると、それに合わせる様に皆、立ち上がる。
「シェリーさん。僕達はすぐに準備して、明日にでも出発したいと思います。」
「そうですか。分かりました。・・・・・でもレイさん。探索系クエストですが、難易度はSSS級です。何があるか分かりませんから十分に準備をして、気を付けて行って来てくださいね。
私は貴方達がクエストを達成する事よりも、まずは無事に帰ってくる事を祈っています。」
「ありがとう、シェリーさん。・・・・・それでは行ってきますね!!!」
僕はシェリーさんと握手をして、仲間と冒険者協会を後にした。
☆☆☆
「はぁぁぁぁぁぁ!すごいな!!!!!」
ここは、南の大国『ナイージャ』の外海にあるリゾート地【サンマルクス】。
僕達は、首都【ナイラビ】から専用馬車に乗って、3日かけてこのリゾート地へと来ていた。
そこは、様々な種族の人達が、南国風の服や、アロハっぽい服を着て歩いている。
そして、海辺の方を見ると水着を着た女性達がキャッキャ、キャッキャしている。
・・・・・キャッキャってなんだよ。キャッキャって。・・・・・まさしくおっさん思考だな。・・・・・
「こっここは!!!・・・・・天国なのか?!」
カイトが目をキラキラしながら、今にも海辺の方へと駆けだしそうにしている。
それを冷たい目で白雪が見ている。
すると隣にいるラフィンが僕に言う。
「へっへっへ~!!レイ!せっかく来たから海で遊ぶ?・・・・・僕達の水着が見れるよ!!!」
「へっ???」
僕は目を丸くし、白雪と目が合うと、白雪は頬を赤らめながら言う。
「・・・・・レイが見たいならいいよ。」
うっ!!!それは見たい・・・・・・・まじで。
「ハハハハハ。うん。皆の水着姿は是非見たいね。でも、それは目的を達成してからにしよう!・・・・・楽しみが増えるしね!」
「やったぁ!泳げる!」
「フフフ。そうね。」
「・・・・・水着買わないとな。」
「美しい女性達と話をしないとね!」
皆、賛成の様だ。
全て落ち着いたら、必ず来よう。
リフレッシュも大事だもんね。
さて!まずは、このSSS級試験のクエストを何としても達成しないとな!
僕は早めにこの試験を達成させて、このリゾート地で遊ぶことを心の中で誓った。
☆☆☆
朝。
朝食を済ませて外に出ると、ここは南国らしく、すでに気温が高く、とても暑い。
僕達は、このリゾート地【サンマルクス】で一泊すると、人気のいない海辺の方へと歩いていった。
静かに、優しい海のさざ波を聞きながら、リゾート地から数キロ離れた誰もいない海辺へとつくと、僕はアイテムボックスから一つの笛を取り出した。
貝殻で出来たこの笛は、見た目はとても綺麗で美しい形をしている。
「さて。・・・・・会えるといいな。」
その笛を見ながら僕は呟く。
僕はゆっくりと、腰が浸かるまで海へと歩くと、
笛を口に付け吹いた。
ピィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ・・・・・・・・・
独特な笛の音が海へと響き渡る。
バシャッ!
バシャッ!バシャッ!
バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!
どの位経っただろうか。
しばらく、そのまま笛を吹き続けていたら、海の方から一人、また一人と美しい女性が海面を時折跳ねながら、楽しそうにこちらへと向かっている。
人魚だ。
気づくと、笛を吹いている僕の周りに数十人の人魚がいて、僕を興味深げに見ている。
僕は彼女達に声をかけた。
「・・・・・僕はレイ=フォックスと言います。
彼女に用事があって笛を吹きました。
あの・・・・・いますでしょうか。
・・・・・ミーシャは。」
すると、彼女達は顔を見合わせ、悪戯っぽい顔をしながら答えた。
「フフフフフ。ええ。我らの王女なら貴方の横にいるわよ。」
へっ???
僕が素っ頓狂な顔をしていると、突然、隣の海面が跳ねた。
「レイさん!!!!!」
「うぉっっっ!!!!!」
ミーシャが嬉しそうに、海から跳ねると僕に抱きついた。
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