第76話 戦争6
「敵の将よ。もう終わりだ。何故まだ抗う。」
「ギリアに栄光を!!!!!」
もうほとんど力が残ってないキュリアス将軍は、最後の力を振り絞ってマルカスへと切りかかる。
その攻撃をものともせず、剣先が届く前に、愛用のハルバートがキュリアスの体を切り裂いた。
「敵の将を打ち取った!これで終わりだギリア軍よ!!降伏するなら命は保証するが、まだ向かってくるのなら一人残らず殺す!!!さぁ!決めろ!!!!」
ここはアルク帝国とギリア教国の中間にある【ベラミアム平原】。
アルク帝国180万対ギリア軍50万の戦いは、3日で終わりをむかえようとしていた。
『漆黒の虎』部隊率いるアルク兵はギリア兵に比べてレベルも高く、それでいて数も4倍近い戦力。
最初から勝ち目はなかったのだ。
それでも、3日も長引いたのは、ギリア兵の粘りがとても強かったからだった。
今、ギリア軍は1万も満たない兵しかいない。
将が討たれ、それでも向かってきた兵もいたが、大半は武器を捨て、降伏した。
すると、伝令兵が駆け寄り、マルカスへ報告をする。
「伝令!伝令!!マルカス将軍!!只今、アルク帝国は、【ゲート】を使って現れたギリア軍200万と応戦中!!!」
「・・・・・何だと?!!!!」
すると、降伏している一人のギリア兵が叫ぶ。
「ハハハハハ!我々の戦いは無駄ではなかった!!これで終わりだ!!アルク帝国よ!!!ハーハッハッハッハ!!!」
・・・・・しまった。まさかこんな作戦があろうとは!!!・・・・・どうする?すぐに引き返しても一週間はかかる。
それでは間に合わないだろう。かといって、このままギリアに行ったとしても、その間に相手は皇帝を殺し、帝都を占拠してから、兵を【ゲート】を使ってギリア国に戻して迎え撃つだろう。それだけの時間がまだあるのだ。
・・・・・アルク帝国に残っているのは『鳳凰の羽』部隊のみ。いくらエリアスでも30万しかいない兵力では厳しいだろう。どうする・・・・・どうすれば!!!!!
すると、もう一人の伝令兵が待機している飛空艇からこちらへと駆け寄ってくる。
「伝令!伝令!!皇帝より!!このまま進軍せよ!!・・・・・このまま進軍せよ!!!」
なんだと?我々がギリア国へ攻め入る時間までもつというのか?・・・・・それとも何かあったのか?・・・・・いや。考えまい。今は信じるのみ。
「・・・・・あい分かった。皇帝の命のままに。・・・・・歩兵は捕虜を連れて進軍せよ!!我々『漆黒の虎』部隊は、騎馬を使って3日。いや2日で辿り着くぞ!!飛空艇もその後に続けぇぇぇ!!!」
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!
馬が駆け、粉塵が舞った。
☆☆☆
空を飛んでいるドラゴンの一匹が先頭の赤いドラゴンに話しかける。
「ライカンド様!黒い者達はどうしますか!」
「ほおっておけ!!我々はあの門の前にいる男と一緒にいる大きな黒い女を討つぞ!!!」
「はっ!!!」
ライカンドはあの黒い女が現れた瞬間、背筋が凍った。
本能が言っていた・・・・・あの黒い女はヤバいと。
ならば我々、ドラゴンになった竜人600人が相手だ。
門を守っていた軍隊に、まさか我がドラゴン400匹が倒されるとは思いもよらなかった。でも、まだ半分以上はいる。ここで戦果をあげないと我々の威厳にかかわる。
真っすぐに空から青年に向かって下降していった。
☆☆☆
「凄いな。」
僕は思わす口ずさんだ。
何匹いるのだろうか。凄い数のドラゴンがこちらへと向かっている。敵意がなければ壮観な風景だった。
「あら。あれが現界にいる最強と言われているドラゴンね。私がもらっちゃってもいいのかしら?」
「・・・・・いえ。シャインさんはギリア兵をお願いします。あのドラゴンは別の人に頼みますので。」
そう言うと僕は、左手の指に付けている指輪を触る。
・・・・・来てくれますか?シャーベットさん・・・・・
すると、指輪が光り、僕の隣に美しい女性が現れた。
「・・・・・出番かしら?」
右手には大きな骨付き肉をもっていた。食事中だったらしい。
「ハハハ。相変わらずですね。すみません。そんなに経ってないのに呼んでしまって。」
「いいのよ。この命は貴方にあげると言ったでしょ。いつでも呼んでちょうだい。・・・・・でも、今度は、いきなりじゃなくて一度声をかけてくれると助かるかな。」
この指輪はシャーベットさんとなら、どんなに離れていても会話が出来るらしい。いきなり転送してしまって悪い事をしてしまったな。
「で?私はどうすればいいかしら?」
僕は空に指をさして言う。
「あのドラゴンをどうにかできますか?」
シャーベットはこちらに向かってくる数百匹のドラゴンを見ると、僕の前へと出る。
先頭にいる赤いドラゴンが真っすぐ急降下しながらこちらに来ると、シャーベットの前で着陸する。その後ろに同じようにドラゴンの大群が着陸していった。
すると、ドラゴンはみるみるうちに人間へと変化していき、先頭にいる真っ赤な髪の男がシャーベットの前で跪く。
それに続くように、他の者達も跪いた。
その赤い髪の男はシャーベットに話しかける。
「天竜様。お初にお目にかかります。私はこの現界にて頭を務めさせていただいておりますライカンドと申します。・・・・・まさか、こんな所でお会いできようとは。」
「あなた達。この方は我の主です。かすり傷ひとつつける事は許しません。そして、主が守っている者も同じです。それが出来ない様でしたら、私がお相手しましょう。」
「・・・・・天竜様に弓を引く事など・・・・・ありえません。そんな事をしたら我々竜人は絶滅してしまうでしょう。・・・・・分かりました。
それでは、失礼させて頂きます。お会いできて光栄でした。・・・・・帰るぞ!!!!」
ライカンドはそう言うとドラゴンになり、他のドラゴンと一緒に飛び立っていった。
隣にいるドラゴンがライカンドに言う。
「頭。いいんですか?このまま帰って。」
「・・・・・あの方は、天竜様だ。我々が束になっても勝てんわ。我が一族をここで失うわけにはいかないからな。・・・・・しかし、どうしてこの現界に居るんだ?」
ドラゴンの大群600匹は、空へと消えていった。
「・・・・・これじゃ物足りないわね。他にある?」
シャーベットは僕に言う。
「ええ。あと一つだけお願いがあります。・・・・・あの、大きな門を破壊できますか?」
僕は【ゲート】を指さす。
「いいわ。でもそんなのでいいの?・・・・・それじゃ壊すわね。」
そう言うと、シャーベットは人から金色のドラゴンへと変わっていった。
「あっ!真ん中にある門だけ残しておいてください!」
「フフフ。分かったわ。」
シャーベットは【ゲート】に向かってブレスを吐いた。
☆☆☆
「何だあれは。」
突然、金色のドラゴンが現れたと思ったら、協力していたライカンド率いるドラゴン部隊が逃げ帰ってしまったのだ。
完全に予想外だった。
すると、そのドラゴンは口を大きく開ける。
カァッ!!!
口が光ったと思ったら、地面にあたり、そのまま一直線に数キロ先の【ゲート】へと向かう。
ドンッ!!!!!!!!!!
地面に当たった光はその周りにいるギリア兵を焼き、そしてそのまま真っすぐに【ゲート】に当たり、粉砕した。
「ハハハ。これはもうブレスじゃなくてレーザービームだね。」
目の前にいるシャーベットさんのブレスを見て、思わず僕は呟く。
そして、一つ。また一つとブレスで【ゲート】を粉砕していった。
「何をやっている!!!このままだと、全ての【ゲート】を破壊されてしまうぞ!!!【ゲート】の守りを固めろ!!!!」
我々の計画は、アルク帝国を占領したらすぐに主力部隊は【ゲート】で本国へ戻り、アルク軍本隊を迎撃するはずだった。
これでは、戻れなくなってしまう。
「止めろ止めろぉぉぉぉ!!!」
「こっちに盾部隊を!!!!」
「ガァァァァァァァァァ!!!」
しかし、あの金色のドラゴンが吐くブレスを防ぐことは誰一人出来なかった。かすっただけで、鎧や盾は溶け、体が焼けた。
あまりにも強力なブレスだった。
7つある内の6つの【ゲート】が破壊されてしまったのだ。
「チッ!!!」
エッジは、金色のドラゴンを見ながら舌打ちをする。
・・・・・いきなり現れた。黒の女達のように。・・・・・あのドラゴンもあの男が召喚したのか?・・・・・
何て事だ。これでギリアには短期間で兵を戻せなくなってしまった。クソっ!!!!!
いざという時は、ミッシェルに予備の【ゲート】を出してもらうしかないか・・・・・仕方ない、ならば出来るだけ早くアルク帝国を滅ぼすのみ!!!!!
「もう【ゲート】の事はいい!!!全軍、黒の者とあの男を殺し、門の中へ入るぞ!!!」
ウォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!
☆☆☆
「シャーベットさん。ありがとうございます。」
目の前にいる大きな金色のドラゴンに僕はお礼を言う。
すると、ドラゴンは光り、気づくといつものシャーベットへと戻っていた。
「お安い御用よ。貴方の役に立ててよかったわ。」
僕はシャーベットさんと握手を交わす。
「本当に助かりました。これが全て終わったら色々とお礼をしたいので、とりあえずは僕の仲間と一緒に門を守っていてもらえますか?」
「フフフ。楽しみね。それじゃ、ラフィンもいる事だし、一緒に守りましょうか。」
「お願いします。」
そう言うと、シャーベットは正門へと駆けていった。
「さて。」
僕が攻めてくるギリア軍に向き直ると同時に、後ろにいるシャインが呟く。
「黒の手。」
シャインの肩辺りから真っ黒な長く鋭く大きな手が2本伸びていった。
長い。
その腕だけで数百メートルはあろうか。
するとその一本の黒い腕が、こちらへ向かってくるギリア兵に右から左へ大きく振り抜いた。
ゾンッッッッッッッッッッッッッッッッッ
その振り抜いた黒い手は、数千の前衛のギリア兵の上半身を薙ぎ払っていった。
そして、今度はもう一方の黒い手が襲い掛かっていく。
「ヒッ!!!ヒィィィィィィィィ!!!!!」
ゾンッッッッッッッッッッッッッッッッッ
その後に続く前衛のギリア兵を亡き者にしていく。
勢いよく突撃してきたギリア兵は、その異様なまでの腕と、殺され方に完全に止まってしまった。
僕は後ろにいるシャインを見上げて言う。
「シャインさん。準備運動はもう済みましたか?」
「ンンンンンンンンンンンンンン~♪いい感じよ。フフフ。娘達は貴方の顔色をうかがっているから、まだ遠慮しているみたい。そろそろ全力でやってもいいかしら?
・・・・・レイ。貴方が合図を。」
何か視線を感じていたんだけど、そういう事ね。僕がシャーベットさんを呼んだから、黒の一族の皆は少し遠慮してたみたいだ。
僕は右手を天に掲げながら叫んだ。
「目の前にいるギリア軍!!全ての殲滅を!!!!!!」
・・・・・・・ギリア軍にとって、とてつもなく長い一日が始まった。
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