第40話 魔界へ



「ただいまぁ~!」





「これはこれはレイ様!お帰りなさいませ。」



「あらレイ様!お帰りなさい。」


執事のセメルトとメイド長のリンが迎える。




「こちらのお客様は?」



「あぁ。冒険の途中で知り合ったんだ。新しく仲間になったラフィンだ。皆、なかよくしてくれ。」



「僕はラフィン。よろしく!」



「あらあらあら、可愛いお仲間ですね。とりあえず、お部屋へご案内しますね。どうぞこちらへ。」



「ラフィン。ここは自分の家と思ってくつろいでくれ。」



「うん!レイありがとう!」





僕たちは、天界から自分の家へ帰ってきたところだ。






天竜の国『テンペスト』では、まぁ~シスコンどものせいで色々とあったが、何とかカギとなる石板をもらった。



戻ったらラフィンに大笑いされたのは余談である。





驚いたのは鳳凰の国『サクシアリ』だった。


この国は女王が統治している国だ。



ほとんど他の2国との繋がりがない国と聞いていたのに、すんなりと王の間まで通してもらい、何も言わずに石板をもらったのだ。





意味が分からなかった。



流石のカイトもポカンとしていたな。




お礼を言って帰るときに直接頭に女王の声が聞こえてきたのを思い出していた。






「・・・・・私の娘をよろしく頼む。」






何の事なんだろう。



それが気になっていた。



ただ、全ての石板が揃い、無事に浄化光石を手に入れられた。



この石を手に入れる事はほぼ出来ない。せっかくだから好きなだけ取るといいと言われたので、遠慮なく空間収納の中に入れられるだけ入れさせてもらった。



いつか何かの役に立つだろう。




そんなこんなで、魔界へ行く為の準備を終えた僕たちは、一度マイホームへ戻ってきたのだ。



あんなに天界まで行くのに苦労したが、一回攻略をすると自由に行き来できるみたいだった。



天界から一瞬で天の塔の入り口まで移動ができたのだ。






天の塔攻略から天界3ヶ国で王との面談・・・・・。




流石に疲れたわ。




久しぶりの我が家だ。数日はゆっくり休んでから魔界へ行こうと思う。






僕はとりあえず、温泉があるお風呂へと直行した。









☆☆☆








「よし!準備万端!白雪。ラフィン。」



「うん。大丈夫。」



「僕もオッケーだよ!」



「じゃ行こうか!」




「気をつけていってらっしゃいませ。」


執事のセメルトを筆頭に全員が見送りにきていた。





家で10日ほどゆっくりと休んだので元気いっぱいだ。



ラフィンもすっかり慣れて、ほんとに自分の家の様にくつろいでいた。




よかよか。




さて、お次は魔界だ。




魔界に行くには、この世界の中央にある島。


封印の島『カルテル』へ行かないといけない。




この限界の世界は、東西南北ぐるっと円の様に大陸が広がっている。


そして、その円の内側と外側は海がひろがっているのだが、内側の海は中央に行けば行くほど気象が激しく、航海が難しいとの事だった。

通常行くなら、数ある国を通り、海に出たら中央にもっとも近い島へ行って行ける船を探すか、飛空艇とかで空から行くしかなかった。




僕はカイトからもらった紙切れを取り出した。


不思議な模様が書いてある紙だった。




「レイ。これはね、僕が現界へ行った時、何とかカルテルへ辿り着いた時に設置した帰還紙という物さ。」



何とこの紙を使うと、同じ紙を設置したカルテルへ瞬時に移動できるのだと言う。


ただ、同じ世界までで、天界から限界とか、別の世界には移動できないとの事。








これはすごいな。








カイトは何枚も持っていたので、できるだけもらった。


これは今後、役に立つだろう。




カルテルが記録されている帰還紙を取りだす。



僕の左肩に白雪が、右肩にラフィンが手をおく。



僕は帰還紙を半分に切った。







一瞬で視界が家の庭から、島に変化した。


周りを見渡すと、岩だらけだ。木々もなにもない。そしてすぐ先には海が見える。




ほんとになにもない島だった。




しかしここが封印の島『カルテル』。




この島へは普通では上陸は出来ないらしい。強力な結界がはられているとの事。


どうやってカイトが結界を通ったのかは気になるが、それは後で聞いてみよう。





「ここがこの世界の中心かぁ。」


遠くを見ようとするが、陸らしい物は見当たらない。大陸がこの孤島中心に広がっているなんて思えない感じだった。





少し歩くと、岩の祠があった。





怪しく光るその祠の中央には鍵穴の様な穴がある。





魔界へ通じる扉はおそらくこの祠だろう。





僕は二人を見て声をかける。




「二人とも。行くよ。」



白雪とラフィンが頷く。





僕は、魔のカギを祠の鍵穴にさした。




すると後ろに空間を捻じ曲げたような大きな黒い物体が出現した。




これが入口なのだろう。




「さぁ!魔界へ行くぞ!」



僕たちは天界の王女を救出すべく、魔界へと足を踏み出した。









☆☆☆








「・・・・・森?」



空間を通るとそこは木々が生い茂る森だった。


後ろを振り返ると、同じ石の祠がある。






うぉ~!!!





とにもかくにも初めての魔界だ!



天界に続いて魔界とか。



すごいな!







すると、無機質な声が響き渡った。



・・・・・ヒューマンが初の『魔界』へと踏み入れる。を達成しました。ボーナスとしてレベル20進呈します・・・・・





またまた、めちゃくちゃ上がった。



ラッキー♪






すぐに探索したいところだが、まずやらなければならない事があった。




魔界で生きている者以外の種族がいるとすぐにばれる。


それを誤魔化すために、天界の王にもらったのが、擬態できる薬だった。これを飲むと、自分が解除しない限りこの効果が続くらしい。


数本もらった。




僕たちはまずはそれを飲んだ。




すると、みるみると自分の姿が変わっていった。


髪が赤い長髪になって耳がつき、尻尾がついた。





獣魔に変身したのだ。





白雪もラフィンも獣魔に変身している。





やだ。二人とも可愛い。とても似合っている。





萌えるな。ありだな。






「うん。二人ともとても可愛いね。」


思った事をすぐに口にしてしまう。悪い癖だ。





白雪は顔を真っ赤に。ラフィンは嬉しそうに飛び跳ねている。




僕も言ったくせに照れてしまった。




浄化光石のペンダントも付けてるし、これで準備万端だ。




まずは、ここがどこなのか調べなくては。




石の祠に帰還紙を記録させ、町を探しに森の外へと歩き始めた。






森から出ると、広大な草原と、舗装された道があった。そして少し先には大きな町が広がっている。





でかい。





しかも、街並みがおしゃれだ。中世のロンドンみたいだ。




ここ魔界だよね?




とりあえずあの町で情報を集めなければ。



僕たちは町へと入っていった。






☆☆☆







ポケーっと街の風景をみながら歩いていた。




完全に田舎者だ。




でも、ロンドンの街並みって憧れてたんだよねぇ~。とてもこの雰囲気が好きだ。



行きかう人々も服装がおしゃれだ。男性は帽子を被ってスーツっぽいものを着てるし、女性は華やかな服装でパラソルをもっている人もいた。





ん?・・・・・いやいやいや。人ではなくよくみるとヴァンパイアだ。






よく物語や映画とかで見ていたが、なんかカッコいいなぁ。スタイリッシュに見える。






そして空を見ると、魔界は夜にさしかかっていた。



街並みは街灯がオレンジ色に灯り、雰囲気をより一層高めている。




僕たちは歩いていると、道端に黒いフードを被った子供がお金を求めて所々に座っている。



見ると体はやせ細り、栄養が足りてないのが見てとれる。行きかうヴァンパイア達は、気づいているのに見て見ぬふりだ。






「これで足りるかな?」


僕は子供の前においてある缶にゴールドを入れた。この世界でもゴールドが使えるといいのだが。





「えっ。あっありがとうございます。こんなに・・・・・!」


黒いフードを被った子供は笑顔でその場を後にした。





他の子供達にも同様にゴールドを配る。





するとラフィンが不思議そうに問いかける。



「レイ。何でお金をあげるの?この者達は弱いからこんな事をしているんだよ。なら僕たちがかまってやる必要ないよ。」





天竜の国は、強い者が偉いと聞いた。弱肉強食で生きてきたラフィンには僕の行動が不思議なのだろう。





「・・・・・ラフィン。僕はね、あげたいからあげてるの。それでこの子達が助かるかは分からない。でも見て見ぬふりはできないんだ。考え方が違うのは当たり前だからね。だからこそ、お互い違う考えを尊重できればそれでいいと思うんだ。もし、尊重できなければ付き合わなければいいだけの話だよ。」



僕はラフィンの頭を撫でながら答えた。





「うん!分かった!」



分かってくれたのか分からんが、まぁ~ニコニコしながらついてきてくれてるからヨシとしとこう。





「ん?」


何か小さいうめき声が路地裏の細い道から聞こえてきた。





「汚らしい!お前たちは我々の街で住む価値がない!さっさと他の町へ行け!」


「ごめんなさい。ごめんなさい。」





そこへ行くと、同じ様に黒いフードを被ったやせ細った少女が、高そうな服を着ているヴァンパイア数人に囲まれて蹴られていた。





「おい。やめろ。」


「何だぁ~?・・・・・!!獣魔!・・・・・チッ。行くぞ。」




僕たちを見るなり、街の通りへと消えていった。


変身した獣魔って結構使えるのかな?





「大丈夫?」



「・・・・・ありがとう。・・・・・お返し。出来ない。」


その少女は、か弱い声で答える。




「ハハハ。いらないよ。そうだ。僕たちと一緒に夕食でもどう?ここへ来てからまだ何も食べてないんだ。」



「・・・・・いいの?でも、お金ない。」



ん~。魔界では、奢るとかの習慣はないのかなぁ。



「いいさ。じゃ~奢るかわりに色々と教えてほしいことがあるんだ。それでどうかな?」



「・・・・・わかった。分かる範囲で教える。」



「ヨシ。交渉成立だ。」








僕は少女の手を取り、近くのレストランっぽい所へと向かった。

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