第31話 アイリと白雪


朝起きて、食堂で朝食を食べている。


専属の料理人が作ってくれる料理はとても美味しかった。



これは癖になるなぁ。



家から出たくなくなる前に次の冒険をみつけないとな。


そう思っていると、扉が開き、執事のセメルトさんがやってきた。




「レイ殿。お客様がみえました。」




この家の人達で呼び合う時に、”様”は禁止にしていた。




「お客様?」




朝食を食べ終え、居間に行くと見慣れた女の子がそこに居た。


その子はお茶をしながら僕を見かけると、



「あら。遅い朝食だったのね。」



アイリだ。




「どうしたの?いきなり訪ねにきて。」



「訪ねにきてじゃないでしょ!家が出来て招待もしないで。」



えっ?そんなのあるの?やばい。



「ごめんごめん。まだ出来たばがりだから。僕が馴染んでから呼ぼうと思ったんだよ。」



「もう・・・・・でもいい家ね。暖かい雰囲気で、景色も良くて。」



「そうなんだよ。ありがとう。」



この家。かなり大きい気もするが、自然があって、お風呂広くて温泉だし、料理もおいしい。とても気に入っている。



アイリは僕たちと暫く話した後、


「じゃ~ちょっと行きたい所があるの。レイ。付き合ってれる?まだあまり知らないだろうから案内もしたいし。」



そうだなぁ。この温泉地と帝都しかまだ行ったことないから今日は付き合ってもいいかな。



「うん。今日はそんなに用事がないから付き合うよ。」


僕たちは立とうとすると


「白雪ちゃん。今日はレイと二人で行きたいの。いいかな。」





なだめるのが大変だった。





白雪があんなに一緒に行くと言うとは思わなかったからだ。


でも最後は諦めたのか、見送ってくれた。


今までずっと一緒に付いてきてくれたので、たまには自分の時間も作ってほしい。


こういう時間も作った方がいいんだろうなぁ。とあらためて思った。





外にでると、4,5人が乗れそうな小型の飛空艇があった。


それに乗り込んで空で移動だ。


僕たちの小型飛空艇の周りに4隻ついてきている。護衛だろう。



動いてみて感じたが、結構早い。リアルでいうと車が空を飛んでいる感じだ。



これなら結構遠くてもすぐ着くだろう。





いいなぁ。




1時間程だろうか、しばらく飛空艇に乗っていると大きな町へ着いた。



「さぁ着いたわよ。」



そこは、帝国内で最大の歓楽街を誇る町との事だった。



ショッピング街が立ち並び、他にも劇場や遊技場、飲食店もすごく多い。


そして、行きかう道もとてもオシャレで整備されている。




すごいな。




「じゃ~、色々案内しながら私の買い物も付き合ってもらうからね!」


楽しそうな笑顔でアイリは僕に話しかけ、手を握って先導する。





それからは、時間があっという間にすぎた。





女の子と二人で買い物したり、劇場見たり、お茶したり。



これじゃデートだ。



アイリが買った沢山の買い物袋を僕は抱えてこの街を見渡せる噴水のある高台に来ていた。


買い物袋を置いて街を眺める。




「うぉ~。街が綺麗だなぁ~。」



夕日が町を照らし、茜色に染まっている。


一日中、女の子と二人で遊ぶのはこのゲーム内では初めてだ。


リアルでもいつ以来だろうか。


白雪とは半日位はあったが、丸一日は流石になかった。




「アイリ。ありがとう。楽しかったよ。」


「フフフ。こちらこそ・・・・・私もこんなに楽しかったのは初めてかも。」



最後の方は小声だった。




「今日はね。どうしてもレイと一緒に楽しみたかったの。もう家族の心配もないし、こんなに落ち着いた気持ちで楽しめたのはいつ以来か忘れちゃった。」




アイリは僕の隣で一緒に茜色に染まった街並みを眺めている。


アイリの赤く長い髪が夕日に反射してとても綺麗に輝いている。


そして透き通った肌に思わず息をのんだ。




「綺麗だ・・・・・。」




思わず口に出てしまった。


思った事をすぐに口に出すのはリアルでも変わらない。性格だ。




「えっ?・・・・・バカ。何言ってるの!」


「アハハ。ごめんごめん。」


真っ赤になりながらアイリは僕の腹を小突く。



「でもほんと楽しかったよ。今度、落ち着いた時は僕の方からも誘うよ。」



「うん。ありがとう。でも、明後日にはこの国を離れるの。」



「えっ?」



聞くと、アイリは学生で、


全世界唯一の中立国『ピリカ』の学園都市『カラリナ』に通っている。




15歳~19歳まで、その都市で色々な事を学ぶのだという。


ちなみに、アイリは16歳だというのが一番驚いた。


一応僕は18歳だけど、リアルじゃおやじだ。


ある意味、犯罪だな。




毎年、一年に一度、長期休みがあって、そこで生徒は帰郷するのだとか。


アイリもそれで自分の国に戻ってきていたのだという。



「そっか。それじゃしょうがない。アイリがこの国に戻った時はまた誘ってよ。」


「うん。」



やはり皇女だ、僕と二人で行動はしているが、見えない所で騎士さんが気づかないように見張ってくれている。


僕を信用していると言っても、何か不測な事態があるか分からない。致し方ない事だ。


ご苦労様です。


僕たちは小型飛空艇に乗って、家路へついた。





帰りの飛空艇で、今までの冒険で『身代わりの指輪』を3つほどドロップしていたので、その1つを何かあった時の為にあげたのだが、


何故かとても感激して、ほっぺにチューをされたのは余談である。








☆☆☆







「白雪様。」


メイドのコウが声をかける。


「白雪様じゃないよ。」


「そうでした。白雪ちゃん。ゴロゴロしてないで、せっかくの自由時間なんですから何かしたらどう?」


レイがアイリと行ってしまい、すねていたのだ。





私はレイが大好きだ。





剣から命をふきこんでくれたレイ。





私が生まれたこの命。





レイに全てを捧げよう。付き従おう。と心に決めたのに、貴方は仲間として迎えてくれた。





白雪は白雪で自由に行動をしてほしいと。





でも私は貴方とずっと一緒にいたい。





剣だからじゃない。





日に日にその気持ちが強くなってくる。





今回みたいに居なくなると、とても胸が苦しくなる。





何だろう。この気持ちは。






そして実は私の秘密の時間があった。





レイが寝る時だった。





彼は寝るとどんなにゆすっても絶対に起きなかった。






寝たのをみて、いつも私は彼に抱きつく。


「レイ~♪」


胸に顔をくっつける。


彼の心音がとても心地よく、子守歌の様だった。


暫くそんな時間を堪能して最後にほっぺたにキスをしてから寝ていた。







これが私の大切な時間。



そして秘密。








これからも、どんな事があっても私は貴方と一緒にいたい。


だからこそ、もっと貴方につりあう女性になりたい。




メイドのコウに言う。


「私、料理覚えたい。ダメかな?」




「いいんじゃないですか!では早速やってみましょう!料理長も今は居ますから台所へ行きましょうか。」





コウは笑顔で白雪の手を握って台所へと向かって行った。



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