第17話 帰還

「あぁぁぁ~終わった~!」



僕は大の字に寝そべって大袈裟に大声で叫んだ。



「ほんと。無茶するんですから・・・・・。」



剣からまた精霊人に戻った白雪は、大の字に寝そべっている僕の頭を持ち上げて正座した自分の膝の上におく。



「あなたが死んだら、私はどうするんですか。もっと自分を大事にしてください。」


頬から涙が伝っていた。



「ごめんね。ただ、白雪に言った手前、僕も無茶して死のうとは思わないよ。」



白雪を手に入れる時に散々死んだ僕がよく言ったものだ。


白雪の頬の涙を寝ながら右手でやさしく拭う。


「話があるんだ。僕たちは仲間だ。主従関係じゃない。だからこれからは、呼び名はマスターじゃなくて名前でよんでほしい。」


「えっ。」


驚いている。


「あと、敬語も禁止ね。分かった?」


白雪は戸惑い、困っている。そして、


「分かりました。マスター。」


「アハハ。ちがうでしょ。」




すると、今までで一番の笑顔で白雪は言った。




「分かった。レイ。」


「うん。」


僕は膝枕をしてもらっている頭をどかして、立ち上がり、白雪と向き合って手を差し伸べた。


「それでは、改めてよろしく!白雪。」


白雪が少し頬を赤く染めながら手を握る。


「よろしく。レイ。」



僕は固い絆が結ばれた様な気がした。



とりあえずは、最下層の探索をする。


「アイズ。」


大ムカデに唱える。


セントグ レベル123


123!強いわけだ。平均70レベルじゃないのかよ。


普通に攻略できるダンジョンではなかったのだ。


でも、成果も大きかった。魔光石がかなり大きい。いいお金になりそうだ。満足していると、他にドロップアイテムがあった。取ると魔導書だった。


珍しい。


魔導書はめったにドロップしないと、たしかお婆さんが言ってたっけ。


掲げみると、【魔導書:光の破壊】・・・・・ってそれだけ?


効果もなにも表示されてない。しかも光の破壊って。攻撃系だろうか。あのセントグが放った熱線みたいなのかな?


とりあえずは、魔導書に手をあてて呟く。


「光の破壊。」


文字が浮き出し僕の体の中へ。


これで覚えたはず。後で試してみよう。



もう一つ。用があった。



僕たちは、奥にある数ある骸骨を見下ろしながら探すと、一番奥にある骸骨から光る物があった。


それは他の物よりも光っていた。


白銀のペンダントだった。


僕は6個あったペンダントを手に取り、白雪に声をかけた。


「白雪。魔法で浄化ってできるの?」


「できるよ。ちょっと離れてて。」


僕は離れ、白雪は骸骨が沢山ある所へ向かって唱える。



「清みの精。」



すると、地下なのに天井から光がさした。骸骨が粉のように崩れながら天井へと舞っていった。



僕はそれを見ながら、手を合わせてお祈りする。





☆☆☆





洞窟の外に出ると、まぶしい朝日が差し込んできた。


という事は、2日たったのか。


今回はほんとに白雪が居てよかった。数が多すぎて体力は減るし、最後のボスは強すぎて、多分、ソロだったら攻略は出来なかっただろう。一人仲間が入るだけでこうも違うのか。



昼頃には町に着くかな。



とりあえずは、冒険者協会へ行って報告と換金だ。


それからジョイルさんに頼まれ物を渡したら祝勝会をしよう。


僕たちはゆっくりと町へと帰った。



☆☆☆



昼には町へ戻る事ができた。


冒険者協会の扉を開けると、周りがざわめいた。昼なので中には結構冒険者が居たのだ。


そして美人なお姉さんのシェリーさんが僕を見るなり受付から飛び出し、僕に飛びついてきた。両手が僕の肩を通り過ぎて胸が顔にあたる。



「おかえりなさい!よく無事に戻ってきましたね!」



ギューと抱きしめてくれている・・・・・やばい胸の感触が・・・・・。


それを横目で見ていた白雪が一生懸命引き離そうとしている。



少しして落ち着いたのか、離れて笑顔で



「取り乱してごめんなさい。それではもう一度、おかえりなさい。」



柔らかい感触をもう味わえないのが残念だが、隣の白雪の視線が痛い。



「ただいま戻りました。」


「それでは、成果を承りますね。こちらへどうぞ。」


シェリーさんが居た受付へ案内される。


「今回はどうでしたか?」


「はい。帰らずの洞窟。攻略しました!」


言うと周りがさらにざわめいている。



「!!!そうですか!おめでとうございます!それでは魔光石を鑑定しますね。こちらへどうぞ。」



別の部屋へ案内される。前回鑑定してもらう時に魔光石があまりに多かったので別部屋で預けたのだ。


それと同じだった。



「よろしくお願いします。」


僕は魔光石をテーブルには置けきれず、床に山ほど置いた。


「・・・・・どれ程の魔物を倒したのですか。この数は正直異常です。」



たしかに、自分でも数えられない位倒した。全階層が複数の敵だったからなぁ。



「これですと、またしばらく時間がかかります。明日以降に換金でよろしいでしょうか?」


「分かりました。それでお願いします。」


シェリーさんと約束し、別部屋から出ると、冒険者たちが集まってきた。


「オイ!数百年攻略されなかった帰らずの洞窟を攻略したのか?」


「ちょっと話を聞かせてくれや!」


「なになに?どうしたの?」


僕たちの周りに冒険者たちが集まって質問攻めにあった。


コミュニケーションは大事だからね。うまく話をして逃れようとしたが、1時間ほど捕まってしまった。



とりあえず疲れた。



今日はそのまま宿へ帰ってステータスをチェックしたらゆっくり休もう。


祝勝会は明日だ。


僕たちは、一旦宿へ戻って普段着に着替えてから、近くの店で夕食を取った。そしてシェリーさんから聞いた銭湯(あったのだ!)へ行ってゆっくり湯につかってから宿へと戻る。


「はぁ~。いい湯だった。」


ポカポカしながら白雪と一緒に夜道をあるく。なんかこういのいいね。


お湯の再現度にはびっくりした。


ホントにお湯である。暖かい。浸かって手でお湯を取ると透明で湯気が出ている。すごい。感動しきりだった。ゲームでお湯を感じるとは思わなかったからだ。



本当にこのゲームは別次元だな。



ご飯も食べて、お湯につかったおかげでライフも体力もほぼ回復した。白雪も同じの様だった。


気持ちのいい夜風にあたりながら、僕たちは宿へと向かった。


宿に着くと、少し白雪と話をしていたが、ベットに横たわって聞いていた白雪はそのまま寝てしまった。流石に疲れていたのだろう。



「おやすみ。」



僕は静かに白雪に布団をかける。



さて、寝る前にチェックだ。ステータスを開いた。


レイ=フォックス ヒューマン 年齢18歳 男 レベル100

基本能力値:攻撃力241 防御力241 体力300 魔力200   技:居合『光』

スキル:愛情3,450(×10) コミュニケーション262 速さ182 精神力71 魅力46 料理11 閃き11・・・・・等々になっていた。


技という新しい表示が付いていた。



そして剣。


白雪  WHITE SNOW

攻撃力+541 速さ+282 スキル:<カウンター><カウンター調整> 

世界に7本しかない伝説の武器の1本。この剣は主と共に成長する。



おぉ~。大分強くなっている。特に攻撃力と速さは剣補正を入れると、攻撃力782と速さ464だ。


まぁ~愛情がすごい事になってるがヨシとしておこう。魅力もあがってきてるし。


レベルで気になることが一つあったが、それは明日ジョイルさんに聞いてみよう。たぶん僕よりレベルが上だろうから。


今回のダンジョンは気が休まらずに疲れた。


僕もゆっくり寝よう。


ベットが一つしかないので、白雪から出来るだけ離れてログアウト&眠りについた。




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