キミの世界、ワタシの世界。
キミの世界、ワタシの世界。
著・月乃石
https://kakuyomu.jp/works/1177354054918145559
水瀬芳夏は隣席の主席で高校入学した桐生昴と相容れないけど、言葉のセンスだけは共有できる。そんな二人の物語。
文章の基本ルールをいうのは割愛する。
「お前さぁ、ぺトリコールって知ってる?」
なんだろうと思わせる書き出しがすばらしい。
「米津玄師の歌だよね」と答えていたらどうだったのだろう。
会話のやり取りから、桐生昴がどういう人間かがわかる。自分で調べろといわれて調べるところから、水瀬芳夏の性格もわかる。
調べたことを教えると、今度は「ゲオスミン」はなにかと聞いてくる。彼女はペトリコールを昨夜、携帯で調べたとき、この言葉も調べていた。わからないことに興味を持って、調べる癖がついているのだろう。
ゲオスミンについて桐生昴は、知っている言葉ではなく自分で作った言葉「しゅうぉん」と表現する。その意味を彼女は翻訳することで意気投合。いままで相容れなかった二人が初めて噛み合った瞬間だ。
ペトリコールを「にみゃっ」と表現することに決まると、LINE交換しようと言われる。
「いい匂いがあったら俺に教えて。俺も絶対、芳夏に教えるから。二人で名前つけよう」
どうして彼は、雨の匂いについてこだわるのか。彼女にはわからない。匂いに興味があったわけでもない。頭のいい彼を興奮させる「何か」に興味を抱いたから、ライン交換することになる。
俺らで名付けた「にみゃっ」を見守ろうと昴からLINEが届く。
名付け親の二人が子供を見守らないでどうするんだと、メッセージでいわれてしまう。
彼には独特の世界があると思っていると、「芳夏ワールドという世界を持っているよな」と言われてしまう。
彼の行動に彼女はやはり理解できない。それでも言葉のセンスのときだけは共有できる不思議な関係。この先も二人は、言葉のセンスの幅を広げてわかり合えるのではと期待させてくれる。
理解できないけれど、ある一点だけ理解できる世界があると繋がれることを、この作品は教えてくれた。
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