【奨励賞】 お天気ドーム

お天気ドーム

著・梁川航 

https://kakuyomu.jp/works/1177354054921764806


 自動制御型都市気候制御ドーム内でみつけたハウスで自然を堪能する天野千鳥と雨宮葵は互いに好意を持ち、本物の自然がある京都の大学へと進学する作品。


 SFを題材にした百合小説、でしょうか。

 人工居住区の設定は、昔のSF小説ではよく見た気がする。アニメならガンダムやマクロス、メガゾーン辺りかしら。

 地球だと思っていたら宇宙船の中だったとか、火星ドームと聞かされていたら地球だったとか、どんでん返しで使われることが多かった記憶がある。

 この作品は、人工居住区のドーム内でみつけた箱庭のようなハウスが二人を引き合わせ、自然を作って過ごす日々を終わりにしたくないと願いながら再開発でハウスがなくなることをきっかけに互いの思いを告白、ドームのない自然がある京都の大学へと二人は進学し、同じ部屋で暮らす流れだ。

 学校は疑似社会、箱庭だと喩えられることがある。このドームもまた、箱庭といえる。その箱庭の中で、自分たちが求める世界、箱庭を作っていた二人はやがて、ドームの外へと巣立っていく。

 ストーリーの流れはいいですね。

 会話文の冒頭がところどころ一マス下がっているところや、――ダッシュがよく使われてるのが気になったけれど、些細なことなので目をつむる。

 気になったのは、ドームという場所。

 このドームは、「都市全体を透明な膜でプラネタリウム状に囲」まれ、「二十四時間三百六十五日、人間にとって一番快適な気温と湿度で『晴れ』るように設定」され、「いつも曇りない空がドームのスクリーン上に投影され」るので、「ドームの中にいれば暑さも寒さもなく」快適に過ごせるという。

 透明な膜は全天モニターになっているのだろうか。晴れの時は、窓ガラスのように実際の空がみえるのだろうか。どうやってドーム状に形成されているのだろう。

 都市全体を囲んでいるらしいけれど規模は? 東京二十三区を覆ってしまうほどの大きさだろうか。「箱根がドームの境界線だから」とあるので、規模はおそらく東京を中心に半径七十キロほどの大きさなのか。

 だとすると、埼玉、千葉、茨城県や東京湾、相模湾まで覆うほどの巨大さだ。

 同心円状のドームではなく、ビニールハウスのようにチューブ型で細長く形成されているのだろうか。だとすると、ドームという表現がおかしくなる。

 あるいは、この世界では東京が首都ではなくなっているのかもしれない。エヴァのような、首都機能をもつ第二東京市が神奈川県に設けられた世界なのかもしれない。

 だとすると、ドームの規模はずっと小さく済みそうだ。

 台風、竜巻、ゲリラ豪雨、大雪など災害はドーム内には起きないという。ビニールハウスのような構造なら、台風が直撃したらひとたまりもない。よほど頑丈で、ものすごい科学技術で作られているのだろう。

 ドーム内の植物を装うメンテナンスも行われていることから、管理維持には相当の費用がかかることが伺える。ドーム内の住人の税金はさぞかし高いだろう。停電になったら、全機能が停止しそうだ。自家発電も完備されているにちがいない。

 主人公は、中学受験を機にドーム内に引っ越してきたとある。それなりの金持ちでないと、ドーム内で生活はできないのではないだろうか。

 ひょっとすると、ドーム内にいる人間はある種の特権階級の人間だけが住んでいるのかもしれない。だとすると、ドーム外の人から税を徴収して、ドーム管理に当てられているかもしれない。

 特殊な世界で、普遍的な物語を書いてみたいものです。

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