第◯話 変態、虎柄を堪能する
【まえがき】
場面・時系列は水着披露時
【本編】
最初に吹っ切れたのは意外にも鬼の椿だった。【影姦遮蔽】により生肌を拝めないのは惜しいが、女の脱衣と着衣を逆光によるシルエットで鑑賞できるというのは控えめにいって最高だ。ご馳走様。
いやあ、これぞ合宿の醍醐味だよな。
「……ふんっ。反吐が出る」
恥辱と怒りにより赤鬼となって出てきた椿。よく鍛えられている上に女としての主張も決して忘れない肉体美は流石、の一言。
彼女は虎柄の水着を着用してカーテンから姿を現した。
「おいおい。鬼がトラ柄かよ」
俺はあえて呆れが入り混じった声と視線を椿に向ける。それで羞恥心が耐えられなくなることを知っているからだ。
「おい待て、なんだその反応は⁉︎ このような格好を姉さんにもさせたのだろう⁉︎」
「……へえ。ということはなんだ。お前は生理的に嫌悪している男を喜ばせるために、あの鬼姉に直接聞きに行ったわけか? ずいぶんとヤる気満々じゃねえの」
「ちがっ……! これは魔術を習得するために仕方がなく——」
図星にあたふたする椿。振動する度に揺れる魅惑の谷間が眩しいね。けけけ。
「——そうそう。なぜ鬼がトラ柄の下着を穿くか知っているか?」
「は?」
「鬼——ここでいうのは人喰い鬼のことだが、災いをもたらす存在だ。この鬼の出入りが北東——これが鬼門の由来だと言われている。この方角は十二支表で現すと
「だから何だ⁉︎」
と犬歯を剥き出しにする椿。
「おいおい。今の解説でわかっただろ? どうして俺がそんな雑学が頭に入ったままだと思う? ドストライクだからだよ。鬼にトラ柄の下着。最高じゃねえか。覚えておいて損はねえだろ?」
「鬼を何だと思っているのだ貴様は——【雷神】」
トラ柄水着のまま抜刀術を放ってくる。
もちろんこれは誘発したもの。すなわちいとも容易く躱すことができる。【奇跡不逃】で動体視力を叩き上げ、彼女の懐に潜り込む。
【仮装自在】から取り出すのは角のカチューシャ。
ただし、ただの飾りじゃあない。【色欲】の魔法を
「なにをするっちゃ」
刹那、椿の語尾が強制変換される。
彼女は口元を隠すように手を被せ、目を見開く。
「教え子の扱いには自信があってな。特待生以外に頼ることができないお前は必ず姉に相談すると踏んでいた。そのときの紫蘭の反応を拝めなかったが、想像するのも楽しいからな。きっと怒りに打ち震えていたんだろうよ。で、なんだかんだ妹に甘いあいつのことだ。己が受けた恥辱を飲み込んで、俺の性癖をお前に伝達すると思ってな。結果は案の定。そのカチューシャはとある条件を達成するまで取れないようになっている。普段はお堅い凛としたお前が特待生の前で「だっちゃ」。けけけ。同情するぜ?」
さらに魔道具の『玉』を取り出す。
これは頑固一徹の鬼が恥じらう姿と萌え属性を追加された映像——人はそれを黒歴史と呼ぶ——を保存するためだ。
この映像を視認した紫蘭の反応もまた面白そうだ。
これぞ鬼畜の遊び方というものだ。
「…………」
口を開けば鬼をバカにしたような語尾を口にしなければならない。
その対策として沈黙という手段を取る椿。
バァーカ! 甘い、甘い! 俺がそんな初歩の対処法を赦すわけねえだろ!
「そのカチューシャには呪いがあってな。語尾を百回口にするまで絶対に外れねえぞ?」
鬼の顔から血の気が引いていた。
さーて、お次は誰だ?
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