第2話 プロローグ-2
数日後、俺たちは依頼者から問題なしとの返答を受けた後、指定された岩石地帯にある洞窟に探索に向かった。
運が良かったのか道中で魔物が襲ってくることはなく、移動疲れだけで到着することができた。
「ここだな。見た感じは普通の洞窟だが」
「確かに。問題は暗さといったところか?。光魔術は皆使えるから問題ないな」
「あっ!。……反響もおかしなところはないし、今の声で魔物が来る気配もなし」
「テリトリーとして洞窟内外で線引きしている?。それとも単純にいない?。探知魔術始めるか」
「頼む」
カルザの言葉に俺は洞窟内へ探知の魔術を展開した。光球をいくつも創り出し、探索内部に高速で動くそれを放り込む。頭の中には光球が目になったかのように視界が表示され、内部構造を少しずつ記憶していく。
魔物一匹見当たらない。ゴブリンも、ラビットすらいない。作り立ての洞窟ならままあることだ。
「何もいないな」
「何も?。ラビットもか?」
「ああ。あり得ることだが……どうする?」
「危険度の判断なら難しいな。だがまだ探索は始めたばかりだ。先んじて決めた目標までは進めたいところだ」
「私もたまには派手な魔術打ち込みたいし。そこまでは行こ」
「魔物一匹いない、か。魔力が集中しているなら討伐するべきでもある。行くべきだな」
判断はほぼ全員一致。かく言う俺も問題なさそうだと判断した。目標は階段まで行ってその下の階層に魔術を打ち込むことだ。そこから先の情報を手にするのはそれからの判断でいい。俺自身もそう考えていたからだった。
先んじて探知したおかげで階段までの道も分かってる。魔物一匹いない洞窟を警戒は緩めずに歩いていく。
そして階段までたどり着いた。そこまでには何の問題も障害もなかった。
「さて、ここからだな」
全員がコクリと頷く。魔術を打ち込んだ後、どういったことが起きるのか。そういった不測の事態への対応が上手いからこそベテランと呼ばれるのだ。
彼らの腕が試される時だった。
「ヤヴォール」
「ええ」
ヤヴォールは杖の先に魔力を集中させ詠唱を開始する。本来なら詠唱は前衛であるファトスやカルザが時間を稼いでいる間に行う。それも高速で行うが、高速であるが故に威力が落ちるという欠点もある。
今回はそれに該当しない。ゆったりと魔力を集中させ、詠唱も彼女のペース。威力を最大にした炎魔術が展開される。
「タイダルフレイム」
ヤヴォールの魔術が階段下へと投下される。焼き尽くす紅蓮の火が津波のように流れていく。
同時に全員が警戒を最大に引き上げ周囲を警戒する。何かが起き得ることを起こしたからこその行動だ。
一秒……五秒……十秒……時間が過ぎていく。だが彼らは警戒を止めない。魔物や不測の事態は油断したときに襲ってくることを知っているからだ。
三十秒が経過した。警戒を緩め、ヤヴォールが口に出す。
「魔物が地下に居れば、燃え尽きてそこから先にまた燃えていく。反応はなくなったね」
「そうか」
ヤヴォールの言葉に全員が警戒を緩める。警戒が杞憂だったというのは悪いことではない。警戒せずに死の危険に晒されるよりか遥かにマシだ。
「階段下には下りれる?」
「一日おいた方がいいかも。洞窟内の魔力が希薄になってる可能性もある」
「それなら一度外に出るか」
警戒は洞窟に入った後と同等程度の、多少緩めた程度で移動を始める。来るときに記憶してきた通りの帰り道で洞窟の出口へと歩いていく。
だが出口は既に跡形も無くなっていた。岩で塞がれたようなものではない。綺麗に埋め立てられたような、誰かが仕組んだとしか思えない痕跡だった。
「どういうことだ?」
「出口が塞がれ…いや、なくなってる?」
俺たちがそれに気づいた瞬間、地面が揺れた。少しずつ揺れは強くなり、洞窟が崩壊するかとすら思えた。
「間違いなく何か来るぞ。戦闘準備だ!」
カルザが叫んだ瞬間、足元に一つの魔法陣が展開された。展開された魔法陣は全員が範囲に入っており、逃げる術はない。
「なっ!?」
「これは……っ!?」
次の瞬間、俺たちはその階層から姿を消した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます