キャンプの理由

倉橋刀心

第1話

あんたさ、たまに一人でキャンプ行くよね?

うん。まあ、好きだからね。いつも近場だけど。

私もキャンプ行く。

え?なんだよいきなり。今まで一度も興味示したことなかったのに。

だって今の世の中、何があるかわかんないじゃん。やっぱりサバイバル技術が必要だと思うの。火起こしたりとか、イノシシ捕まえたりとか。これからの時代、ちゃんと自立しなくちゃ。

いやいや、高校生の未来なんて確かに不確定だけど、なんでそういう発想になるわけ?お前女だし、別に誰かに助けてもらえばいいじゃん。…いつも近くにいる奴とかにさ。

それじゃイヤなの。私はあくまで助ける方になりたいの。

まあ、一人で色々できるようになるのはいいかもな。イノシシ捕まえんのが自立かどうかは別として。じゃあ、キャンプ頑張れな。

は?あんたも一緒に行くんだよ。

え?俺?なんでよ。自立すんじゃないの?

私ってさ、いつもあんたに助けられるじゃん。テスト勉強とか、忘れ物した時とか。

いきなりなんだよ。まあ、あんま意識したことないけど、そういやそうかな。なんて。

でもそれじゃワリに合わないと思うの。私もあんたを助けてみたい。

みたいって、なんだよ。お前、俺を助けたいわけ?

だって不公平じゃん。死ぬまでずーっとあんたに助けられ続けるより、私もあんたを助けまくって最終的に借りは半々にできればいいなって。

死ぬまでずーっとが前提って、新手の脅迫かよ。それとも遠回しの…え?まさか、今ここでこ、こ、こ?

なにキャドってんの?だから、お願いなんだってば。一生のお願いだからサバイバル手伝ってよ。あんたを助けるために色々訓練しなくちゃだしさ。第一助ける本人がいなくちゃ意味ないじゃん。血の止め方とか。

血の…実践で?

うん。実践で血の止め方、教えて?

…俺さ。

うんうん。

俺さ、お前がスッゲーアホだってこと、たまに忘れちゃうんだよなあ。全く俺としたことがなあ。やっぱり一生かかっちゃうのか…。

え?

いや、まあとにかく、その、キャンプは来週末でいいか。

えー、今週末はダメなの?来週末は私の誕生日だけど…まあ仕方ないか。

いやあ、二人きりでお祝いしたい男とかいるなら?無理にとは言わねえけど。

あはは。私の誕生日を祝いたいなんて、そんな変人いるわけないじゃん。いいって、気にしないでよ。お母さんにも言っとくから。あ、あんたにも会いたがってたよ。

ああ。そうだった、その問題があったよ…。じゃあとりあえず、今週末はお前の親御さんに挨拶か。いつぶりだろ、お前んち行くの。

ん?今週予定あるんじゃないの?それに、キャンプ行くのにわざわざ親に挨拶?

あったり前だろ、アホ。人を助ける訓練には、段階ってもんがあるんだ。

へーそうなんだ。知らなかったよ。流石、あんたは本当に頼れるね。

まあな。誰かを助けてみたいって人間を助けるのも、助けてもらう人間になるのも、色々と段取りが必要なんだよ。

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キャンプの理由 倉橋刀心 @Toushin-Kurahashi

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