第6話 今日を歩んだら明日を歩める  昨日を歩んだから今日を歩める

 正直、六時間目にある委員会会議までは今日は楽勝である。

 睡魔も敵となり、昨日と比べると快調に値する。

 四時間目の体育だけはあまり気が進まないがクラスが替わって三日目にして初めて普通に授業を受けれている事に嬉しく思うのであった。

 初日は悪夢の自己紹介。

 二日目は居眠り。まぁ、これは完全に自業自得なのだが......

 (って、あれ?初日は何で寝てなかったんだっけ?)

 その瞬間、とても重大な事を忘れていたということを思い出した。

 そう、あのノートのことである。

 思い出した瞬間、少し冷や汗が出て一気に平常心で居られなくなった。

 (キンコーンカンコーン)

 三時間目が終わり、四時間目の体育のためにクラスの皆が移動する。

 男女共にグラウンドと体育館の間にある各更衣室で着替えてから体育の授業を受けるので、体育の時間は教室は誰も居なくなる。

 気が進まない中、更衣室へ向かう。

 その途中、水筒を忘れた事に気が付き、取りに行くか迷ったが一応、教室へ取りに帰った。

 すると、誰も居ない教室で一人の女の子だけが残っていた。

 教室に入る前に、少し観察してみた。

 辺りをキョロキョロしていたり、人の机の中を覗いて見たりしている。

 どうやら、探し物をしているみたいだ。

 時間がないので、教室に入る。

 すると、その女の子は振り返り慌てて去っていった。

 すれ違い様に顔を見たが、俺と同じ委員長であり、隣の席であり、本日の放課後に一緒に掃除をする事になっている天道桜だった。

 (何をしていたんだろう......)

 と考えていると、点と点が繋がりそうな恐怖感を覚え、背筋が少しだけゾッとした。

 (まさか探し物って......いやいや、ないない)

 これ以上、考えるのは怖くなったので考えるのを止めた。

 水筒を取って教室を後にした。

 ちなみに、俺はもちろん遅刻した。

 更衣室で着替えている最中にチャイムが鳴ってしまい、急いで着替えたのでおまけに服が前と後ろ逆になっていて、二度の恥をかきました。

 結局、三日目も普通に授業は受けることができなかったのである。

 昼食の時間は、一人でそそくさとお弁当を食べるので、特に何もない。

 ただ、言えることがあるとすれば今日のおかずは俺の大好物の唐揚げが入っていた事と、やはり隣の天道桜はたまにキョロキョロしていて、何度か視線を感じる事があったということくらいだ。

 俺がお弁当を食べ終わり、読書でもしようかと思っていた頃だった。

 隣から天道桜の声が聞こえた。

「そういえば、誰か最近落とし物とか拾ってない?」

「拾ってないよー。え、なに天道さん何か落としたの?」

 一瞬、ドキッとした。

 (もしや、あのノートは天道桜の落とし物......?)

「いや、違うの。私、委員長だからさ。もし拾ってたなら預かろかなって。」

「なにそれー!さっそく委員長らしいじゃん!!さっすがー!!」

「そんなことないよ!」

 という隣の会話を聞いて、すぐに読書に移った。

 内心、天道桜がノートの持ち主じゃなくてホッとしている自分がいる。

 いや、まだ決まった訳ではないが正直、天道桜だけはやめて欲しい。

 あのノートの持ち主の性格で、同じ委員長として一年間一緒に仕事をするとなると非常にやりづらくなる。

 まぁ、出来ればこのまま持ち主が見つからないというのも良いのかもしれない。なんて考えてみたりもしたが、あのノートを持っているだけで神経がすり減る気がしたので、今日家に帰ったら少し真剣に返す方法を考えてみようと思った。

 そして五時間目も終わり、いよいよ委員会召集の時間がきた。

 皆ぞろぞろと自分たちのクラスの教室を後にし、委員ごとに定められている目的の各集合場所へ向かう。

 最後ら辺に行くと目立つという登校時の知恵が働き、クラスの半分くらいが教室から出たことを確認し立ち上がる。

 するとーー

「私たちも行こっか!」

 と、視界の外から女の子の声が聞こえた。

 俺は思わず、

「えっ、あっ、うん」

 と、危うくあ行を全て使いそうな返事をし、教室を出る。

 女の子と一緒に廊下を歩くなんて初めての事なので、緊張して一切振り返ることもなくただただ早足で歩く。

「なんか緊張するね。他の委員長の人たちってどんな人だろーね!」

 俺に対して気を使って話かけてくれているのは分かっている。

「えっ、あっ、そうだね」

 だが、俺は話しかけられても何を話せば良いのか分からないし、そもそも妹以外の女子と話すのなんて一年以上ぶりなので話し方を忘れてしまっていた。

 結局、そのふたことだけ交わし、委員長の集合場所の教室へ着く。

 すると、そこには真面目そうな人と明るいクラスの中心人物みたいな人ばかりだった。

 微かに話し声が聞こえるが、重苦しい雰囲気ではあった。

 俺たちも入ろうとするとーー

「さーくらっ!」と、後ろから女の子の声がした。

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