四十九章 青い鳥は夜を駆ける
夜中にふと、目が覚める。
あの日、倒れてから数日が経った。
葵に悪い事をしたな。
ぼんやりとそう思いながら、寝台から起き上がる。
眠っている間に乾いていたのか、乾燥したカラカラな喉。
それを潤す為に談話室にある自動販売機へと向かおうと要舞は扉を開いた。
「あ……」
思わず声が零れる。
偶然隣の隣。二つ先の部屋が開く。思わず顔を合わせると葵がいた。
こちらに気がついたのか葵が要舞の方を向いた。
嬉しくなって葵に声をかける。
「葵じゃん。この間はありがとう。…どうしたのこんな夜中に」
心配かけたよねと申し訳なさそうに眉を下げた。
そんな彼の言葉に葵は首を横に振る。
「ううん、君が大丈夫で良かったよ。要舞くんこそ夜中にどうしたの?」
こてん、と首を傾げればじっと要舞を見つめる。
部屋から出つつも喉元を抑えれば首を横に振った。
「助かったよ。驚かせてごめんね?寝不足だったみたい。あ、ね、喉が乾いて……自動販売機に行こうかなって思ってるんだ。葵は?」
要舞は葵へと問いかけ返す。
葵も部屋から出ながら眉を下げて笑った。
「どういたしまして。寝不足かぁ…ちゃんと寝てね?何かあったら相談に乗るから。
僕もそんなところだよ。良かったら一緒に行く?」
全くと言いつつも要舞の方へと来ては、ぽん、と彼の頭を撫でた。
その言葉に要舞は勿論だと頷く。
そして、胸元にぶら下げられたさくらんぼのネックレスをゆっくりと握りしめた。
「うん、大分眠れるようになったよ…そうだね、相談させて欲しい、かも…信じられない話かもしれないけど、きっと葵なら受け止めてくれる気がするから」
お願いしてもいいかな?と問いかければ二人で並びながら談話室へと向かう為に階段を降りる。
そんな要舞の言葉に葵はこくり、と頷く。
深呼吸すれば、覚悟を決めたのか、己の胸元を強く握りしめた。
「うん、聞かせて。ちゃんと、全部受け止めるから」
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