ラウドナオーブオリース4

夜中は喉が渇く。

水を求めて今日も要舞は談話室の自動販売機へと向かった。

最近何故か分からないけれど寝付きが悪い。

もしかしたら忘れていた何かを思い出してしまったからかもしれない。

そのせいか、最近夢見が悪いのだ。

談話室の方へと来てみれば、自動販売機のある方から飲みものが落ちる、ガコン、という音が聞こえてきた。

誰かいるのだろうか。

そう思い壁から顔を出して談話室を覗き込んだ。

「えっと、あいつは……確か……」

黒い髪のいかにも優等生な風貌に、襟のついたシャツのパジャマ。

少し猫背気味の背中を要舞は見つめた。

「確か、アルのクラスメイトの……」

その呟いた要舞の言葉が聞こえたようで、彼が気づいたのか自動販売機に手を伸ばして缶を手に取れば、こちらへと近歩み寄ってくる。

「えっと、こんばんは。こんな時間に来るなんて夜更かしさんなんだね」

眠れないの?と首を傾げれば少年は、はは、と頬を搔いて笑う。

その言葉に要舞がこくり、と頷いた。

「あーうん、確かに最近寝れないかも……えっと、君は風鴉君だったけ?」

合ってるかなと首を傾げればあってるよとこくり、と栄斗が笑う。

そして要舞をじ、と見つめればあっと声を上げ、ぽんと手を叩いた。

「もしかして、紡くんのお兄さんかな?目元あたりがそっくりだし、それにこの間文化祭で見た気がするよ」

違ったらごめんねと栄斗が眉を下げて笑う。

その言葉に要舞は頷いた。

「うん、あってる。アルの兄弟の紡要舞だよ。よろしくね。イルって呼んでもらえたら嬉しいかも」

そう言いながら要舞は栄斗へと手を差し出した。

栄斗が要舞の手を取る。

「うん、よろしくね。嬉しいなぁ、兄弟揃って知り合えて」

ありがとう、と栄斗が照れくさそうに笑う。

あ、そうだと何か思いついたように栄斗が要舞へとお茶の入った缶を差し出した。

「良かったらどうぞ」

その言葉に要舞が首を傾げる。

「いいの?君が買ったんでしょ、それ」

その言葉に栄斗がくすくすと笑った。

「知り合えたお礼として、貰ってくれないかな?」

どうだろう、と問い掛けては要舞は栄斗の顔とお茶の入った缶を見比べた。

そしてお茶の入った缶を受け取れば嬉しそうに微笑む。

「ありがとう、えっと、栄斗」

嬉しそうに缶を受け取れば、栄斗は照れくさそうに瞳を細める。

「これからよろしくね、イルくん」

その言葉にもちろん、と要舞が笑う。

二人を自動販売機の明かりが灯していた。


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