巡り合わせディジャナレート3

やまない雨はない。

そんな言葉をよく聞く。

今日の空は雨をやます気は無いんだろうな、と要舞はぼう、と窓の外を眺めた。

風が強く吹き、雨が真横に降り注いでいる。

その雨の雫が窓を叩きつけていた。

ヘッドホンから流れる曲。

己の作った曲。在舞が歌ってくれた曲の編集をしながらぼんやりと外を眺めていた。

ふと、机の上に置かれているカメラストラップが目に留まる。

この間、商店街で二つ買ったカメラストラップ。

紅い目の蒼い鳥の柄をしていた。

葵とお揃い。

実は、ずっと葵と同じものが欲しくて要舞は二つ、カメラストラップを買っていた。

商店街で偶然一目惚れをしたのだ。

己が使う訳では無いのに、つい買ってしまった。

でも、無駄な買い物だとは思っていない。

カメラストラップをプレゼントした時の葵の喜びようを思い出す。

「喜んでくれてよかった」

プレゼントを渡したあの時、家宝にしたいと言われた時は流石に笑ってしまった。

でも、要舞にとっては最高の返事だったかもしれない。

渡せてよかったなと机に突っ伏せば、カメラストラップをぎゅ、と強く握りしめる。

「葵……君と出会えたのが運命だったら……僕は嬉しい、かも……しれない」

小さく呟いた。

自分の言葉に恥ずかしくなって脚を小さくじたばたとさせる。

頬がにやけた。

頭につけたヘッドホンが雨の音をかき消している。

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