巡り合わせディジャナレート2

目が覚める。

何故か分からないけれど頬が濡れていた。

泣いたのだろうか。

でも、哀しい夢を見た記憶はない。

どうしてだろう?

不思議そうに葵は首を傾げる。

水でも飲もうかと、一旦寝台から起き上がればふと、カメラストラップが視界に入る。

そういえば今日友人の要舞がプレゼントしてくれたんだった。

友人からプレゼントを貰うことが初めての葵にとって要舞からのプレゼントはとても嬉しいものだ。

家宝にさせて欲しいと思わず要舞に言ってしまった。

そんな葵を見て要舞がありがとうと、つくって良かったと、楽しそうに笑う。

要舞に喜んでもらえて良かった。

葵もつられて嬉しくなる。

そんな学校での出来事を思い出す。

カメラストラップの模様に描かれた蒼い鳥。その蒼い鳥の瞳と目が合った。

蒼い鳥なのに紅い瞳。

その紅さに思わず吸い込まれる。

「綺麗だなぁ」

思わず声が零れ落ちた。

何処かで見たことあるような赤い瞳。

一体誰だっただろう?

思わず葵が首を傾げる。

「あ、」

思い出したのか再び蒼い鳥へと視線を落とせばふふ、と笑った。

「メリルと同じだ」

愛おしそうにストラップの表面を指の腹で優しくなぞる。

そっと、瞳を細めれば窓の外を見つめた。

今頃メリルは何をしているんだろう。

そう考えながら、カメラストラップを首に掛ければ、水を飲みに部屋を出ていく。

机に立て掛けられていたノートがぱたり、と音を立てて倒れた。

一枚の写真が床へと落ちる。

そこには桜を見上げてそっと微笑んでいる御影の姿が写し出されていた。

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