三十七章 トイソルジャーが守りたかったのは

それはある日のこと。

「イル、何度も悪いとは思ってるけどさ、御影くんのお墓参り行かなくて大丈夫なの?」

在舞が要舞の肩に手を置いて聞く。

ここ最近、在舞は何をするにも言うにも御影という人物の話題を出す。

在舞曰く、御影の命日が近いらしい。

「アル、しつこい。僕は御影なんて奴知らないんだから…」

だから、放って置いてくれ。

心の奥底がムカムカして、思わず在舞の手を振り払う。

振り払われた手。

申し訳なさそうに在舞は眉を下げる。

そんな彼の姿に悪いなと思ってつられて要舞が眉を下げた。

「お願いだから、もう御影という言葉を僕に聞かせないで」

懇願するように今にも泣きそうな顔で在舞を見つめる。

そして要舞は立ち去ろうと足音をわざとたて、どしどしと己の部屋へと入った。

バタン、と勢いよく扉を閉める。

在舞が今にも泣きそうな顔で扉を見つめた。

そっと、彼の部屋へと手を添える。

「あんなにも御影くんのこと、大切に思っていたじゃん……」

扉へと額を付ける。

どうか、どうかイルが元に戻りますように。

瞳を閉じれば、そう願った。

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