トイソルジャーが守りたかったのは2
無性にむしゃくしゃした。
外の天気は己の気持ちのように大荒れで、とても腹立たしい。
要舞は思わず寝台の上にある枕を手に取れば壁へと投げつける。
ごと、
勉強机の上に置いてあった写真立てが落ちた。
そこには二人の人影がいる。
一人は自分で、もう一人は知らない顔だった。
クリっとした瞳、陽気そうな笑顔は妙に懐かしさを覚えさせ、富士額に少し黒い前髪が掛かっている。その少年が要舞と仲良さそうに肩を組んでいて、ピースをしていた。
要舞は、じ、と写真を見つめる。
「君が……御影、なの…?」
問いかけに返ってくる言葉はない。
そんな訳ないか、と鼻であしらって写真立てを元に戻す。
窓の外へと目を向ければなぜだか分からないけれど、何処か行かないと行けない気がした。
要舞はすぐさまコートを制服のシャツの上から羽織ると傘を持って寮から飛び出した。
ふらふらと宛もなく路地を歩く。
偶然、墓場の前を通る。
ふと、足を止めた。
何故足を止めているのか、要舞には分からない。
そのままふらふらと墓場の中へと向かった。
「人が……」
眼鏡をかけた長身の学生がその場に座り込んで濡れていた。
制服からしてうちの生徒だろうか。
このままにしていたら彼が風邪をひいてしまう。
思わず彼の方へと足を進めた。
そして、そっと彼へと傘を差し出す。
「大丈夫……?」
少年が顔を上げる。
泣いていたのか鼻が赤く、目が腫れていた。
「あ、りがとう……」
彼が小さい声で呟いた。
雫が傘に落ちて音が反響する。
土砂降りの雨は二人を包み込んだ。
『二宮』と書かれたお墓が二人を見守っている。
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