白い雪のティアドロップ3

「あの、入れてくれてありがとう……」

助かったよ、と葵が要舞に礼を言う。

結局寮まで一緒に帰ってきてしまった。葵は申し訳なさと、葵として、初めて出来た友達と帰れた嬉しさの間を行き来してきた。

「ううん、大丈夫。気にしないで」

どういたしましてと背伸びして要舞が葵の頭を撫でる。

頭を撫でられてないせいか葵は照れくさくなったのか頬が熱くなる。

「濡れちゃうよ、要舞くん……」

その言葉にクスクスと要舞が笑った。

「確かに……葵は凄く濡れているね。早くお風呂に入った方がいいんじゃないかな」

思ったよりも濡れているよと心配そうに葵を見つめた。

自分の心配よりも他人の心配なんだ……

とても優しい彼に心が温かくなる。

「あ、あの……」

葵が要舞に話しかけようとした時だった。

「イル!遅い。僕ずっと待ってた。あ、それにこんなに肩ずぶ濡れ!もぉ、雨なんだからちゃんと傘差して!」

ぷんぷんと要舞に良く似た少年が要舞に問い詰める。

「ごめんね、アル」

アルと呼ばれる少年。

クリクリの瞳に栗色の髪。要舞にとてもそっくりで、違う所といえば頭にさくらんぼの形をしたピンがついてるか居ないかだった。

在舞と呼ばれた少年が要舞の頭にタオルをかける。そしてわしゃわしゃと拭いた。

「もう、こんなに遅く帰るなんて。今度から遅くなる時はちゃんと連絡して……ん?」

葵と目が合った。葵は思わずびく、と大袈裟に身体を跳ねさせてしまう。

「あ、えっと、こ、こんにちは……要舞くんのご兄弟かな?」

恐る恐る問いかけた。

そんな葵にくすくすと在舞が笑う。

「初めまして、イルと双子の紡在舞つむぎあるまだよ。よろしくね」

ゆらゆらと楽しそうに手を振った。

「は、初めまして、嶋津葵です、えっと、えっと、」

よろしくお願いしますと手を差し出した。

そうか、双子ということは同い年か。

在舞が快く葵の手を取った。

「初めまして、葵!よろしく」

楽しそうに在舞は笑った。

「は、はい、よろしくお願いします」

思わず敬語になってしまう。

「あ、敬語は良いよ。普通に喋って欲しいな」

そうだったら嬉しいと元気よく笑った。

そして葵の姿に驚いた顔をする。

「葵めちゃくちゃ濡れてるじゃん!?これは、イル所じゃない!イル、ほら、タオル貸して。ほら、葵先に拭くよ」

要舞からタオルをもぎ取る在舞。その姿に思わず可笑しくて葵は笑ってしまった。

二人が葵の方を見る。二人からの視線に思わず固まってしまった。

「え、な、なんですか……」

思わずキョドって問いかけてしまう。

そんな様子に二人は楽しそうに笑った。

「良い笑顔。素敵だね」

要舞が思わず葵の手を取って握りしめる。

「そんなふうに笑うんだね君って」

知らなかった、と今先程出会ったとは思えない発言をする。

二人の褒め言葉に照れたのか、葵はタオルで顔を隠した。

ふと、葵が考える。

そういえば、己と同じ魔法少女にも双子の兄弟がいたなぁと。

「まさかね……」

思わず葵が呟いた。

二人が揃って首を傾げる。その揃った仕草はまさに双子だった。

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