三十一章  天使はいちごミルクに溺れる

「エンジェはさ、魔法少女になる時何を願ったの?」

天気が穏やかになり、学校に登校した金曜日。

久しぶりに温室に来たエイトはふと、エンジェフラワーにそう問いかける。

エンジェフラワーと相棒になって一年半、よく良く考えれば自分はエンジェフラワーの願いをエイトは知らなかった。

そもそもお互いの願いの話をしたことがなかったなぁと、思う。

そこで勇気を振り絞って問いかけてみた。

エイトとして、一人の人間としてエンジェともっと仲良くなるために。

一瞬その言葉にキョトンとするエンジェフラワーだったが、麻雀牌をキュッキュと拭きながらくすくすと笑った。

「えぇ~そこ聞いちゃうんですかぁ、エイトちゃん?」

エンジェフラワーが首を傾げてエイトを見つめる。

その眼差しはいつもの潤った瞳とは違い一瞬曇っているようにも見えた。

「そりゃぁ、知りたいよ。だって、僕の大切な相棒であり友人なんだもの」

その言葉に照れくさそうにエンジェフラワーが笑う。

そして、立ち上がりエイトの方へと歩み寄った。

思わず戸惑いながらエンジェフラワーを見上げると、そっと頬に手を添えられる。

思わず照れ臭さに頬を赤らめる。

「え、エンジェ……」

「エイトちゃん」

にこり、とエンジェフラワーが笑った。

そして、エイトの耳元へと顔を近づければそっと囁いた。

「_______」

風が温室へと吹き抜ける。

エイトがエンジェフラワーをじ、と見据えた。

そしてエンジェフラワーへと手を伸ばす。

その手エイトの手を取ればふふ、とエンジェフラワーは笑った。

「みんなには内緒ですよぉ?」

その陽気な彼女の言葉は、どこか寂しく、とても切なく耳に残った。

思わずエイトが一筋の涙を流す。

「もう、私のために泣かなくて良いんですよぉ、エイトちゃん」

その言葉に涙を流しながらエイトは首横に振る。

エンジェフラワーがくすくす笑いながらエイトの頭を胸へと抱き寄せた。

エイトは涙を流しながら心の中でごめん、と呟くのだ。

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