マシュマロの角は柔らかく3

放課後。

葵はメルルとなり温室へと向かう。

緑が生い茂る温室は暖かく、春のような心地良さを感じさせられる。

奥の方へと歩いて行けば白い髪を風に靡かせた魔法少女が居た。

「あら、メルルちゃん、ごきげんよう」

久しぶり、とリリーがお上品に手を振った。

「久しぶりね。元気にしてたかしら」

「ええ、まあ、……それなりに」

目を伏せつつも片手に持っていたティーカップをソーサーの上へと置く。

「そう、元気にしていたなら良かったわ」

安心したとリリーの方へと近寄れば向かい側の椅子へと腰掛ける。

「メルルちゃんは紅茶?それともココアの方がいいかしら?」

リリーが問いかける。

「甘かったら何でも……」

その言葉にリリーはふふ、と笑う。

「メルルちゃんって甘いものが好きなのね」

「まあ、そうかも……」

メルルの言葉に、可愛いなと楽しそうに笑っては冷蔵庫からいちごミルクを取り出した。

「これ、あげる」

ほら、とリリーがメルルへといちごミルクの入ったパックを投げる。

「わ、」

投げられた物をしっかりと受け取れば嬉しそうに思わず目を輝かせる。

「ありがとう、リリー」

嬉しそうに笑顔を見せた。

「どういたしまして」

嬉しそうにつられて笑顔になる。

メルルがパッケージへと視線を落とす。

「あ、これ、好きなやつだ……」

思わず声が零れた。

「そうなの?それは良かったわ。今日後輩から貰ったの。でも、私あんまり甘いもの得意じゃないから良かったわ」

貰ってくれてありがとう、とリリーはメルルへと礼を言う。

礼を言われて照れくさくなったのかメルルの頬が赤らんだ。

「あ、」

メルルが何思い出したようにリリーの方を見る。

「リリーって確か私達の中で一番古参よね」

メルルがストローをパックに刺しつつ問いかける。

紅茶を飲もうとティーカップへと手を伸ばしつつ彼女の言葉に頷いた。

「ええ、そうだけれど……何かあったのかしら」

「一年生達がメリルや魔法少女について知りたいらしいの。教えてあげてくれないかしら?」

彼女の言葉に一瞬止まりつつも、笑顔を作ればメルルを見る。

「ええ、任せて頂戴」

私で良ければ、と胸に手を当てた。

安心したのか胸を撫で下ろしつつパックに突き刺したのストローへと口をつける。

啜れば甘い滑らかな味が口いっぱいに広がった。

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