カランコエはまるでアナタの様で5

夕方、授業が終わると之彦は屋上に来ていた。

屋上から見える景色は絶景で、隣町まで見える。

之彦はポケットから購買で買った、プリン味のロリポップを取り出した。

それを口へと咥えると、再び街を眺める。

そこには、大切な祖母と過ごした街が広がっていた。

之彦の両親はとても多忙な人で、之彦をいつも祖母の家に預けていた。

寂しくて泣いてしまいそうなそんな時、祖母がいつも鳴らしてくれたのがオルゴールで、之彦はそんな祖母とオルゴールが大好きだった。

ある日、之彦がオルゴールを壊してしまう。小さいながらそのオルゴールの魅力に惹かれ、自分でも鳴らしたかったのだ。しかし、自分では上手くネジを巻けず壊してしまった。

そんな時だった、祖母が倒れたのは。

嗚呼、自分のせいだ。自分がオルゴールを壊したから。だからおばあちゃんは……

之彦はすぐさまオルゴールを直そうとした。でも、直ることはなかった。

それもその筈、之彦がオルゴールを直そうと手にしていたのは乾電池だったからだ。

乾電池をいくらカチカチと入れても、決して音が鳴ることはなかった。

その後、祖母が息を引き取る。

幼ながらに世界に絶望した瞬間だった。

それから数年がたち、この学園に入学した。

そして、ある日運命を変える一通のメールが携帯に届く。

そして、メールにこう願いを打ち込んだ。

『壊してしまった祖母のオルゴールを元に戻して祖母に返したい』

その日から之彦は魔法少女になったのだ。

その後シモンと出会って、相棒になり、今に至る。

「懐かしいなぁ」

カリ、と小さくなったロリポップを柔く噛みつつフェンスに寄りかかる。

街に背を向けた。

風が吹き抜ける。

之彦の髪が靡いた。

空を見上げれば、日が沈んで来たのか、少しづつ辺りが暗くなっていく。

「標くんやゆうきくんじゃあないけどさ、…………強く、なりたいな」

思わず声が零れた。

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