攫われた姫を王子が助けに来るとは限らない4

羽を辿ってシモン達は子音の元へと辿り着いた。

「子音っ!」

シモンが叫ぶ。

しかし、その言葉は子音へとは届かない。

「タイヘン!シオン、キゼツ、シテル!」

ユアの言った通り、子音は崖の上の巣のような何かの中で気を失っていた。

「まずいな……早くしないと夢に取り込まれちまう」

焦ったようにシモンが呟いた。

「夢に……ですか?」

ユキが問いかけた。

「この世界は夢の集う所って話しただろう?だから、ここに来た人間はその夢に取り込まれるんだ。そして、そうやって取り込まれた人間を食べるのが……」

「ドリームイーター!……ダカラ、アブナイ!」

ユアがぴょこぴょこと跳ねる。

シモンが巣を見上げた。

ユキが心配そうに両手を握りしめた。

「っち、いつもこうやって人を食べてたんだな」

知らなかったとシモンが呟いた。

「凄い巣ですね……まるで鳥の巣みたいな……」

木の枝で編み込まれた巣。

その中に入れられる子音。

このままでは子音を失ってしまう。

サァ、と顔から血の気が引いた。

「ワタシ、ヤル、シオン、タスケル!」

ユアが腰にぶら下げていた乾電池をブチ、と取り外す。付属の玩具のゴーカートにそれを挿入する。ゴーカートを持てば手に竜巻のような風を起こし、その玩具を投げた。風の軌道により、一直線にドリームイーターへと当たる。ドリームイーターへと当たれば、中の電池がビリ、と電気を起こし、玩具の中に入っていた油へと引火した。

大きな爆発により、ドリームイーターが砕け散る。

「ヤッタ!」

ユアがガッツポーズをした。

「ヤッタ!じゃねぇ!」

思わずシモンがユアの頭に拳を落とす。

「イタッ!!!!シモン、ナニスルノ!」

ユアが頭を押さえた。

「いやいやいや、今のなんだよ!初めて見たぞあれ!危ねぇだろ!」

ユアがユキに助けを求める。

「シモンくん、口調戻ってますよ」

ソコジャナイ!とユアが半泣きになりながらユキに縋り着いた。

「こら、ユア戻ってこい!説教中だろ!」

シモンが顔を真っ赤にしながらユアを呼ぶ。

「ワタシ、セッキョウキライ!シモン、ヒドイ!」

ユキの後ろでふるふると首を横に振った。

「ひでぇのは、御前の魔法の使い方だ!」

ヒィン、とユアが泣く。

「二人共、ほら、早く子音くんを助けましょう」

ユキがシモンの肩を叩いて呼ぶ。

「そうだな。助けねぇと」

口調が戻ってるなぁと思いつつもユキが地面を強く蹴って巣まで飛ぶ。

巣の中で眠っていた子音を抱き抱えればゆっくりと二人の方へと降り立った。

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