ドM浦島太郎
下垣
子供の読み聞かせに最適なお話です(*^▽^*)
むかしむかし、あるところに浦島太郎という青年がいました。
浦島太郎は年老いた母親と二人暮らしをしていました。母親を年金を使ってはSMクラブに通うというしょうもない行動をするクソみたいな息子でした。
今日も今日とて、SMクラブで女王様に鞭でしばかれに行きました。
ビシ! バシ! と密室に鞭が鳴り響く音が聞こえます。
「おぉん。あぁん。ああ、もっと叩いて下さい。ああ~」
嬉しそうな悲鳴をあげる浦島太郎。独身男性。彼女いない歴=年齢。
満足した浦島太郎は、漁師の仕事をするために海に行きました。すると、三人のメスガキが亀を虐めているではありませんか。
「ざぁ~こ。ざぁ~こ。甲羅に籠るひきこもり」
「タートルだかトータスだかハッキリしないやつ。優柔不断~」
「ウサギに手加減してもらえないと勝てないノロマ~」
メスガキたちは亀を足蹴にして虐めています。カメは首を引っ込めてただひたすら耐えるだけでした。
その様子をみて、浦島太郎は怒りに震えました。
「ふざけるな! あの亀め! 畜生の分際でメスガキ様に虐めて貰えるなんて許せん!」
浦島太郎はメスガキたちに向かって歩きはじめました。
「キミたち! 亀を虐めるのはやめなさい!」
「は? なにおじさん。ウチらに文句あんの?」
「あたし、この辺の地主の娘なんだよね~あたしに手を出したら、パパが黙ってないよ」
「ふふ。金と権力に負けるざぁ~こ。所詮、大人は力には勝てないんだよ」
浦島太郎はその言葉を聞いて興奮しました。だが、興奮していることを悟られてはいけない。あくまで自然の流れでメスガキにわからされたいという欲望が出てきました。
「く……なんて卑劣な娘っ子たちだ。だが、大人として見過ごすわけにはいかない。キミたち! 生き物を虐めたら可哀相じゃないか!」
「は? おじさんには関係ないでしょ」
「ねえ、こいつ生意気だよ。わからせてあげようよ」
「さんせーい。あーしらに二度と逆らえないようにしっかり躾けてあげないとね」
メスガキたちは浦島太郎に、よってたかって覆いかぶさってきました。その気になればメスガキ三人を仕留められる腕力を持つ浦島太郎。だが、浦島太郎はもちろん拳で抵抗しない。メスガキの成すがままになってしまった。
「や、やめろー。なにをするんだー」
メスガキに踏まれ、蔑まれ、ビンタされ、わからされ、辱められ、なじられ、なぶられ、浦島太郎は身も精神も痛めつけられてしまいました。だけれど、浦島太郎の顔はどこか幸せそうでした。
「あ~スッキリした。ねえ。こいつ虐めてスッキリしたからもう家に帰ろうよ」
「そうね~虐める方も体力いるからね~」
「じゃあね。小汚いおっさん。もう二度とあーしらに逆らったらダメだよ。ペッ」
最後にメスガキの唾を顔に浴びる浦島太郎。最後に嬉しいプレゼントを貰って満足したのでした。
「はぁ……はぁ……」
浦島太郎は顔を紅潮させ、息をあらげました。余韻に浸りながら人生の素晴らしさを肌で感じ取っていました。
「あ、あの~」
「ん? なんだ亀か。どうした?」
「助けていただきありがとうございました」
亀は浦島太郎に助けられたと思っています。浦島太郎としては、自分の欲望を満たすためにメスガキにわからされに行っただけでしたが、結果的に亀を救ったのです。
「ああ。気にしなくていい。
「なんてすばらしい人なんですか。あの子供たちを傷つけないようにわざとやられっぱなしになって、私を助けてくれるなんて。自己犠牲精神の塊、他者貢献の権化。あたなのような殊勝な人間に会えて」
亀は浦島太郎の行いに感動してしまった。
「ぜひお礼をさせてください。私は海底の竜宮城に住んでいるんです。ぜひお越しください」
「えー。私忙しいのにな」
「そ、そんな……海底には美しい女王様がいるのに」
美しい女王様。その言葉が浦島太郎の琴線に触れた。正にドMの習性。逆らえない運命。遺伝子に刻まれた宿命。
「わかった。そこまで言うなら付いていってやろう」
「おお。流石です。さあ、私の背中に乗って下さい」
浦島太郎は背中に乗った。だが、なんにも楽しくない。女王様を背中に乗せてお馬さんごっこをしている時の方が一億倍楽しいのだ。
浦島太郎はなんやかんやあって、竜宮城につきました。絵にも描けない美しさ。
竜宮城についた浦島太郎を迎え入れたのは乙姫。独身女性。彼氏いない歴=年齢でした。
浦島太郎は乙姫を一目見て、恋に落ちました。この人に踏まれたい。そう思ったのです。
「亀を助けていただきありがとうございました」
「あ、いえいえ。私は人として当然のことをしたまでです」
「どうか。この竜宮城でゆっくりと楽しんでいってくださいね」
浦島太郎をもてなす豪勢な料理、鯛の舞。それで浦島太郎は楽しみました。けれど、浦島太郎が真に満たされることはありませんでした。
ここでは浦島太郎は主賓扱い。とてもぞんざいな態度をとられることはありません。ドM的にはそれが不満でした。折角美しい乙姫がいるのに、虐めてもらえないなら蛇の生殺しもいいところです。
このままでは収まりがつかない。そう思った浦島太郎は思い切って乙姫にぶっちゃけることにしました。
「あ、あの乙姫様。お願いがあるのです」
「なんでしょう。あなたは亀の恩人。なんでも言うことを聞きましょう」
「えっと……私を踏んで下さい」
「え?」
「貴女の美しいおみ足を見た時からずっと踏まれたくて仕方なかったんです。お願いします。この卑しい豚にご慈悲を下さい」
浦島太郎は土下座をした。これにはさすがの乙姫も困惑。まさか、踏んでくれなんて願われるとは思わなかったからだ。
「え、えっとわかりました。頭を上げてください。踏んで差し上げますから」
「いいえ。このまま頭を踏んで下さい。お願いします」
「ええ。わかりました」
乙姫は恐る恐る浦島太郎の頭を踏んだ。その瞬間、乙姫の心の中の扉が開いた。今まで抑圧されていたなにかが解放されて、ゾクゾクとした快感が襲ってきた。
そして、頼まれてもいないのに浦島太郎の頭をぐりぐりと踏み始めた。
「お、おぉ~」
「気持ち悪い声をあげないでください。豚が」
「ぶひぃ~ぶひぃ~」
乙姫の中のなにかが目覚めた。それは浦島太郎にとって幸福なことであった。このことを切っ掛けに浦島太郎は竜宮城で暮らしていくことになり、官能的で幸福な毎日を送るのであった。
そんなある日、いつものように乙姫が浦島太郎のケツをぶっ叩いていた時。
「おら! この豚! これがいいんでしょ?」
「は、はひぃ~」
「豚ははひぃ~なんて情けない声出さないでしょ?」
「ぶ、ぶひぃ~」
「全く。こんな風に育っちゃって。親に申し訳ないと思わないの?」
乙姫のその一言が浦島太郎を現実に引き戻した。
「そうだ……私には母親がいたんだ。すみません。乙姫様。私には帰らなければならない場所があるんです」
ドMモードの浦島太郎ではない。真面目な浦島太郎。それを見て、乙姫はこの関係が終わることを悟った。
「そうですか……あなたは地上の人間。いつかは帰らないといけない日が来るのですね」
「はい。申し訳ありません」
「わかりました。それではあなたを地上へと返します。そして、この箱を持っていきなさい」
乙姫は浦島太郎に箱を渡した。
「これは……」
「これは玉手箱と言うものです。これを決して開けてはなりません。あなたの女王様からの命令です。あなたは言いつけを守れない不躾な豚ではございませんよね?」
「は、はい。女王様の命令は必ず守ります」
「よろしい。それでは地上へお帰りなさい」
浦島太郎はこうして地上へと戻ったのだ。
浦島太郎は自分の家に戻った。しかし、浦島太郎の家はボロボロになっていて、そこには母親がいませんでした。
「あれ? 母さん? 母さんはどこだ?」
浦島太郎は必死に母親を呼びました。しかし、どこにも母親がいませんでした。
「なんだい。あんたは。人ん家の敷地で騒がないでくれるかい!」
おばさんが浦島太郎に話しかけてきました。
「な。ここは俺の家だぞ!」
「いいや。地主であるあたしの家だね。前までは浦島さん親子が住んでいたんだけどね。母親は死んで、息子は行方不明。仕方ないからあたしの父がこの土地を貰ったのさ。この家も近々取り壊す予定だよ」
「そ、そんな……あれ。あんた見覚えが……」
「は? あたしはあんたみたいなおじさんは知らないよ」
地主、あたし、おじさん……その言葉から浦島太郎はある人物を連想させた。この人物は、あの時のメスガキだと気づいた。確かに面影がある。けれど、おかしいことに気づく浦島太郎。竜宮城にいたのはほんの数年だけ。なのに、どうしてメスガキは歳を取っているんだと。
「あんたがなにものか知らんけど。さっさと出てった出てった」
途方に暮れた浦島太郎。自分がいない間に地上になにがあったのだろうか。そこで浦島太郎は乙姫からもらった玉手箱の存在を思い出した。
「開けるなと言われた玉手箱……女王様の命令に背くのは許されないこと。開けたことがバレたら、きっとお仕置きをされてしまうだろう……でも、ドM的にはお仕置きはウェルカムだ!」
浦島太郎は少し葛藤しただけでお仕置きを期待して玉手箱をあけました。すると箱から煙がもくもくと立ち込めてきて、浦島太郎はあっと言う間にお爺さんになってしまいました。
浦島太郎は玉手箱の中に入っていた鏡を見て絶望しました。そこには老けた自分の顔があったのですから。
「こ、これが……わ、わしなのか……」
玉手箱の中には鳥の羽がありました。浦島太郎がその鳥の羽に触れると浦島太郎は鶴になってしまいました。鶴になって浦島太郎はそのまま竜宮城に飛び立ちました。
竜宮城に辿り着いた浦島太郎は乙姫に会いに行き、事情を説明してもらいました。
「この竜宮城は時の流れが地上と違うのです。たったの数年でも地上では何十年という月日が経っていたのです」
「そ、そんな……」
「それにしてもこの豚は私の言いつけも守れずに箱を開けたのですね。全く、どうしようもない豚ですこと。躾け直してあげるから、私の寝室まで来なさい」
「あぁ~」
浦島太郎は鶴になった後でもそれなりに幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし。
ドM浦島太郎 下垣 @vasita
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