疎遠になった幼馴染(学園のアイドル)との関係を修復する方法
華川とうふ
第1話 幼馴染のいる人生
「もう、起きてよっ!」
幼馴染みの
ぎゃー、やめろ!
と心の中で叫ぶけれど、心陽はお構いなしだ。
早起きの心陽はとっくに制服に着替えて、なぜだかエプロンをしてお玉をもって、毎日俺を起こしにくる。
すらりとした太ももを布団のなかからのぞく羽目になった年頃の男子高校生の気持ちを書け。配点は五十点。
そりゃあもう、布団をはがれてはいけないわけですよ。
こんな姿を学校のやつらに見られたら大変だ。
なんせ心陽は学園のアイドルだ。顔が可愛いだけじゃない。性格もよくて。その上、勉強もそつなくこなす。
なんでこんなことになったかって?
それは幼稚園のころのささいなやりとりが原因である。
そう、あれはなにかのドラマで「君の味噌汁が食べたい」という場面があって、それが結婚を意味することをしって、翌日一緒に遊んでいる心陽につい、言ってしまったのだ。
「毎日、君の味噌汁が食べたい」って。
ただ、俺は幼馴染みの心陽に自分が大人の格好いい言葉を知っていると自慢したかっただけなのに。
だけど、自慢どころか心陽はその言葉の意味を知っていた。
それ以来、俺はほとんど毎日心陽の味噌汁を飲むことになった。
もちろん、幼稚園のころはおままごとで偽物の味噌汁。
小学校に上がってからは心陽が毎朝うちの母さんの手伝いをして部分的に作った味噌汁。
そして家庭課の調理実習が始まるくらいのころには、毎日うちに来て朝食まで作って俺を起こすまでを日課としているんだ。
どんな、時も。
雨の日も、雪の日も。
心陽は俺のところにやってきて味噌汁を作る。
小さなころのちっぽけな約束だというのに……幼馴染みは約束を守ってて……これじゃあ、まるで夫婦みたいじゃないか。
※※※
ああああああああっっ!!!!!!
パソコンの前で自分の書いた文章をみて頭を抱える。
自分で書いててイヤになる。
ウェブ小説コンテストに応募するために、小説を書き始めた。
異世界転生は世界間を作るのが大変だし。恋愛小説を書くのはまだ高校生の俺には経験がたりない。ホラーは怖いし。ミステリーは難しそう。
そんなわけで選んだのが、ラブコメだった。恋愛小説と違って現実に近いから書きやすいと思ったのだ。
だけれど、現実はこの通り。俺は異世界なみに現実では有り得ない文章で父さんからのお下がりのパソコンの画面を埋めていた。
俺には毎朝エプロン姿で起こしてくれる幼馴染みはいない。
俺には毎日味噌汁を作りに来てくれる幼馴染みはいない。
俺には……………………………………幼馴染みはいる。
そう、すべてが妄想ならばこんなにこっぱずかしくないのだ。
ただ、全て一から書くのは難しいのでちょっとだけ現実の自分の環境を元にした。
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