女児型AIは恋愛したい『巨大ロボのAIだからパイロットの赤ちゃんは産めない? そんなこと言われてももう遅いのです。だって好きになっちゃったんだもん! あと、滅びよ人類!』
うーぱー(ASMR台本作家)
プロローグ 激闘! オーストラリア大陸奪回作戦
第1話 最強ロボ《ヴァル・ラゴウ》
プロローグなのです!
スーパー○ボット大戦のプロローグを飛ばすタイプの人は、
さくっと飛ばしてしまえなのです!
西暦2002年。
宇宙の彼方エリダヌス座からやってきた異星人が、地球人に観測されることなく木星に入植を始めました。
西暦2005年。
異世界ファーレンディスの魔王ヴァディス・グオウが南極に現れ、追いかけてきた勇者によって討伐されました。
西暦2017年。
魔王の仇討ちのため、魔王軍が地球へ侵略を開始。
劣勢に立たされる地球軍の前に、異星人が援軍として出現しました。
このようにして、人類の長い歴史から見れば同時と言ってもよいタイミングで、21世紀初頭に異星人と異世界人が地球にやってきたのです。
西暦2020年。
異星人の科学技術を借りる我々地球陣営と、モンスターを主力とする異世界陣営との戦闘は激化の一途をたどっています。
激戦区の一つ。オーストラリア大陸。
高度4000メートル。
飛行空母AKAGIからつり下げられたワタシは眼下で繰り広げられる、巨人達の戦闘を睥睨しています。
異世界の大型巨人ギガンテス。
平均身長50メートル。
緑色の肌をしており、鬼瓦のような板で全身を覆っている。
手には、異世界の巨木から切り出した棍棒。
相対するのはAEAF太平洋軍第201艦隊に所属する第2世代ETR。
全高50メートル。
ダークグレーのボディ。流線型の全身。
肩、肘、膝には、近接戦闘で武器への転用を想定した鋭角な装甲。
主兵装の専用ライフルは海上巡洋艦搭載型の超電磁砲に匹敵する威力と連射性能を誇ります。
10体の巨人を相手にし、9機のETR中隊は苦戦を強いられています。
敵の護りが堅いため、ライフルで致命傷を与えることはできません。
しかし、巨人もライフル弾に急所をさらけ出すわけにはいかず、棍棒や巨碗で体を護るため、自由に身動きできていません。
両軍の主力が拮抗しているため、戦況は膠着しつつあります。
巨人達の周辺では、20メートル級モンスターと20メートル級中型ETRが、踏みつぶされないように絶妙な距離を空けて戦っています。
大型ETRはギガンテスやヘカトンケイルなど巨人モンスターに対抗するために。
中型ETRはケルベロスやサラマンダーなどの20メートル級モンスターに対抗するために開発された人型兵器です。
4年間続く戦争で地球の軍艦や戦闘機や戦車などの通常兵器群が壊滅したため、見かねたエリダヌス星人が技術を提供してくれたのがETR(異星人の技術によって造られた兵器の総称)です。
大型と中型の巨人達が大地を揺らす戦場、その周辺でも戦いは起こっています。
グリフォンやオーガといった3メートル級の小型モンスターが、巨人達の足下ですら怯むことなく、前線を押し上げようとしてきます。
小型モンスターでも大型兵器に取り付いてしまえば十分な脅威です。
友軍歩兵部隊も、味方大型ETRを護衛するために前進して、小型モンスターに対処せざるをえません。
こうして、オーストラリア大陸の北端にある半島では、大中小の兵器とモンスター達の入り乱れる大乱戦となっています。
ワタシはこのまま予備兵力として上空待機でしょう。
……と思いきや、AKAGI座乗の新条少将から出撃命令です。
空母から切り離されたワタシは自由落下しつつも、姿勢を変えることにより軌道を変更。
全高170メートル体重30万トンの巨体で、ギガンテスAを踏みつぶして着地。
さらに、隣にいたBに、長大な尻尾を振りおろして脳天に叩きつけてやります。
ギガンテスBはべちゃっと潰れました。
一瞬で2体を行動不能にすると、爆発のような砂埃と同時に、戦場全体の味方機から歓声が巻き起こります。
「すげえ!」「来たーッ!」等と沸き立つ通信電波ですが、パイロットに聞かせる必要は特にないので、ワタシは「ギガンテス、2体、仕留めました」と報告。
「ああ。俺達の力で戦況を変えるぞ」
応じるのはワタシの専属パイロット水瀬光輝17歳。
ワタシの神経が最も集中しているところを、光輝の指先が撫でていきます。
開発されつくしたワタシの体は、光輝の望むままに反応してしまいます。
光輝に従順で甲斐甲斐しいワタシの正式名称はETR-12ヴァル・ラゴウ。
第1世代ETR――Elidanus Technology Robot――の制御システムです。
空や海に溶け込む青い体には、オシャレな白のライン。
チャームポイントは身長と同じ長さの尻尾。8両編成の列車よりも長くて太いのですよ!
60メートル級のちびっ子達を圧倒するワタシ、強い!
ギガンテスCは明らかに狼狽えた様子で腰が引けています。
ワタシは3歩進んで、サッカーボールキックを喰らわすです。
体格差の圧倒的暴力に怯えるがいいのです!
砕け散った鎧の破片をまき散らしながら、ギガンテスは戦場の外まで吹っ飛び、転がり、小さくなり、やがて視界から消えました。
友軍の通信では、驚嘆の連発。
敵味方の視線を集めるワタシは、周辺の戦闘が一瞬止まったのを余裕たっぷりに眺めます。
『また、ワタシ、なんかやっちゃいました?』
ギガンテスは小国の軍隊を単体で壊滅させる程の強さで、その脅威ランクはA。
個体識別名が登録されるような要監視敵勢力なんですけど、ワタシの敵ではありません。
だって、ワタシ最強ですから!
地球陣営最強である第1世代型ETRの最新12番機である私にとって、ギガンテス級なんて雑魚なのです!
もっと強いやつ、かかってくるヴァル!
こうしてワタシが圧倒的な衝撃力で敵モンスター群を蹴散らしていると、希望が叶いました。
機械のボディですら総毛立ったかと錯覚するほどの、大量の警報が一斉に発生。
AKAGIから、ワタシ以外の友軍に撤退命令が走りました。
Aランクがあれば当然のように存在する、さらに上級の脅威Sランク。
前方、高度10000メートルから全長3300メートルの巨体が急速降下。
辺り一面を巨大な影にのみこむのは、開戦してから僅か10体のみ認定されているSランクの一翼、最強のドラゴンです。
いかにもボスって感じのHPと防御スキルです!
『バハムート出現。
真っ直ぐ向かってきています。
もしかして、体当たりするつもり?
あんな巨体が着地したら、余波で友軍が壊滅しちゃいます』
「ヴァルラゴウ前進!
バハムートを引きつけるぞ!」
『了解ヴァル!』
「来い、こっちだ! こっちに来い!」
こちらの目論みどおりバハムートはまっすぐワタシに向かってきます。
まあ、ワタシは地上で一番目立つ巨体ですからね。
「予行演習どおり捕まえるぞ!」
『了解!
ワタシはフィールドの制御に集中します。周囲の警戒はお願いします!』
ワタシは両腕を突きだし重力フィールドを前面に展開。
前方2キロメートルの位置でバハムートの固定に成功。
と思いきや、バキバキッと地面を割ってワタシが膝まで埋まってしまいました。
空間に創りだした重力空間にキャッチしたはずなのにワタシが押されるなんて、いったい、どういう理屈ですか。
これだから魔法世界の連中は意味不明で厄介です。
「力比べだ。負けるなよ!」
『はいです。
魔法と科学、どっちが上かヤツのメモリーに書き込んでやるです!』
重力の檻から抜け出そうと暴れ狂うバハムートを必死に押さえ込むワタシ。
友軍が我々の戦闘に巻き込まれない安全圏に退避完了するまで5分。
長い。
敵が待ってくれるはずもなく、バハムートの1キロメートルある首が動き、頭部に高熱源反応。
ヤバいです。
我々AAAFが異世界勢力にオーストラリア大陸を占拠されている最大の理由が、まさにアレ。
ケアンズの基地を一撃で焼き払った
「ヴァル! 撃たせるな! 絶対阻止だ!
これを凌げば勝ちが見える」
『了解ッ!』
大ダメージを喰らうこと確定ですが、ワタシは光輝の操縦に従い、バハムートの眼前に跳びだします。
そして両腕で巨竜の上顎と下顎をキャッチしてパワー全開!
口を無理やり閉じてやりました。
首をぶんぶん振り回してきますが、絶対に離しません。
しかし、ワタシは口を閉じるためにパワーを集中しているため、巨体を空間に縛り付けていた重力フィールドの出力が低下。
若干の自由を取り戻したバハムートが地面に降下し、1キロメートルの首をしならせて最大限の勢いをつけてワタシを地面に叩きつけてくれました。
ワタシの左腕がもげました。
巨大なクレーターを作りつつ、体が地面に埋まっていき、土砂で視界すら奪われる始末。
しかし見えなくても分かる、眼前に広げられた巨大な口と、マグマを凌ぐ高温。
防御姿勢を取る間もなく火炎放射による直接射撃を喰らいました。
同時にカウンターを喰らわせます。
ワタシも重力フィールドを発生させ、火炎をバハムートの顔面にお返ししつつ、重力ハンマーで下顎をぶっ叩いてやりました。
突如、ブラックアウト。
映像も音声も取得不可能に陥ります。
正直に報告すると、何が起きたかワタシのセンサーでは観測できません。
多分、お互いの攻撃が激突した結果、大爆発しました。
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