第八章 黒き野望
第八章第1話 帰国
2022/09/07 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました
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「聖女様。よくぞご無事でお戻りになられました」
「お出迎え頂きありがとうございます。ザッカーラ侯爵」
セムノスの港に無事に到着した私たちは、出発の時にもお世話になったザッカーラ侯爵の出迎えを受けている。
久しぶりのセムノスの町だ。ゆっくりと観光したいところではあるが、シャルとブラックレインボーの事が気になるのであまりそうも言ってはいられない。
「しかし、驚きましたぞ。まさかイエロープラネットからあれほどの民をお連れになられるとは」
「いえ。まあ、色々とありまして」
「左様でございますか。やはり聖女様の慈悲は桁違いですな」
うん? どういうこと?
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あ、そうか。そう言えば出発前に余計な慈悲を起こすなって言われてたっけ。
あはは。それにブラックレインボー帝国の皇女様も拾っちゃったしね。
「ただ……いえ、だからこそ聖女様なのでしょうな。このクラウディオ、感服いたしました」
私が曖昧に微笑んでいるとザッカーラ侯爵がそう言って豪快に笑ったのだった。
「さて、聖女様。彼ら保護民についてでございますが、国王陛下は一時的にであれば受け入れる事は可能だとの事でございますが、いかがなさるおつもりでしょうか?」
「はい。ブラックレインボー帝国を解放した後、そちらで受け入れてもらう事になっています」
「な、なるほど。左様でございますか。ということはやはりブラックレインボー帝国の皇女殿下を保護されたという話も……」
「はい。海で漂流していたところを助けました。あ、でもサラさんのおかげでイエロープラネットでは助かりましたよ?」
「そ、それはそれは……」
うん? どうしてそんな妙な表情をしているの?
呆れているのか驚いているのか、はたまた喜んでいるのか、なんともよく分からない表情だ。
「それで、ルマ人の皆さんについてなんですけど」
「ああ、はい。そうですな。聖女様が保護なさっていますし国王陛下のご許可も頂いておりますので、まずはここセムノスで名簿を作り滞在許可証を発行します。ただ、ここの町で全員を受け入れることはできませんので、王都へと移送されることとなります」
「はい」
「その後、各地に数十から数百人ずつでばらばらに移住してもらい、農作業や土木工事などの仕事をする対価として衣食住を提供するという形になるでしょう。もちろん、何か技能を持っている者がいるならばそれを活かして働いてもらうこともできます。ただ、良い暮らしは保証できませんし、監視下に置かれますので勝手に引っ越すこともできません」
「そうですか……」
うーん。でも確かにいきなり何千人も人口が増えたら食糧難になりそうだし住む家も足りないだろう。それに何の身寄りもない外国人なんだから反発もありそうだ。
「聖女様。心配はいりませんよ。少人数であれば世話をしたいという貴族も多くいることでしょう。何しろ、聖女様のお手伝いができるのですからな。年頃の息子を抱えている家はこぞって手を上げることでしょう」
そ、そういえばそうだった。このところのごたごたですっかり忘れていたけど、私狙われてるんだった。
何だかその気がないのに頼るだけ頼るのは申し訳ない気もするけど、私のお金じゃ彼らをずっと養うことはできないしね。
うん。背に腹は変えられないかな。
「では、助けてくれた方々にはお礼をしないといけませんね。リーチェ」
私はリーチェを呼び出して種を受け取る。
ああ、やっぱりいつ見てもリーチェは可愛いよね。花びらを舞わせているリーチェもすごく綺麗で可愛いけど、こうして普通にしているリーチェの何気ない表情もやっぱりすごく可愛い。
「……聖女様?」
おっと、いけない。ザッカーラ侯爵の前だった。
「この子は私の契約精霊のリーチェです。そして、この種は花の精霊が生み出した瘴気を浄化する種です。これを植えて育てることでこの土地が瘴気に汚染されることを防いでくれるでしょう」
私は種をザッカーラ侯爵に手渡す。
「そ、そのような貴重な物を……」
「お礼です。こうしてルマ人の皆さんを受け入れてくれているのですから」
「聖女様! ありがとうございます。神に感謝を!」
ザッカーラ侯爵は感動した様子でブーンからのジャンピング土下座を決めて見せる。
そうだね。指先までしっかり伸びていなかったけどジャンプからの着地には迫力があったから 7 点かな? いや、8 点をあげても良いかもしれない。
よし、ここは間を取って 7.5 点にしよう。
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