第三章第9話 レベルアップと雷撃

部屋に戻ってきた私は自分のステータスを確認してみる。


────

名前:フィーネ・アルジェンタータ

種族:吸血鬼(笑)

性別:女性

職業:治癒師、付与師

レベル:11 → 15

HP:263 → 355

MP:225 → 305

STR:269 → 365

INT:214 → 290

AGI:203 → 275

DEX:236 → 320

VIT:247 → 335

MND:225 → 305

LUC:225 → 305


Exp:13,934 → 75,385

SP:40 New!


ユニークスキル(13):

吸血:1

霧化:1

蝙蝠化:1

影操術:1

眷属支配:1

血操術:1

魅了:1

雷撃:1

成長限界突破

次元収納:3

精霊召喚(リーチェ)

容姿端麗

幸運


スキル(23):

言語能力:10

魔力操作:1

闇属性魔法:1

聖属性魔法:10

回復魔法:10

火属性魔法:1

水属性魔法:1

風属性魔法:1

土属性魔法:1

状態異常耐性:10

火属性耐性:1

水属性耐性:1

風属性耐性:1

土属性耐性:1

闇属性耐性:10

聖属性吸収

呪い耐性:10

日照吸収

魅了耐性:10

調合:3

薬草鑑定:3

付与:2

付与鑑定:2


────


ええと? 冥龍王の分体を倒した時よりも大量の経験値が入っているんですけど?


って、ああ、そうか。町まるごとジェノサイドしちゃったからね。はぁ。


さて、とりあえず職業に関係なくあげられるユニークスキルだと【雷撃】と【次元収納】、職業関係だと【回復魔法】【付与】【付与鑑定】だ。


収納については容量で困っていないし、今のところは必要ないだろう。


【回復魔法】はオーバードライブを目指すつもりはないし、目指すにしても必要経験値が多すぎてスキルポイントが焼け石に水なのでもったいない。だって、本当に 10 倍ずつで増えていくなら 10 にするだけで必要なスキル経験値は 1 兆。オーバードライブにその 10 倍いるなら 10 兆だ。SP を使っても 1,000 しか経験値が増えないのだから入れる気も起きない。


【付与】は小石に付与するだけで今のところ効率よく稼げている。収納容量が増えて小石のストックが増えたのと MP が増えたおかげで一日に付与できる上限が増えた。


そのおかげで今のところ一日平均 500 くらいのペースでスキルの経験値が稼げているのだ。この調子で行けばあと数か月でスキルレベル 3 となり親方との約束でもある魔法薬師になれる予定だ。


なので、貴重なスキルポイントを割り振るまでもないだろう。


【付与鑑定】についても同じだ。それに私はそもそもこのスキルにあまり必要性を感じていない。付与する物にどの程度の付与ができるのかがわかるこのスキル、付与師として開業するならあった方が良いだろうが、そんなつもりは全くないので今のところは不要だ。


ということは、【雷撃】だろうか?


以前に試したときは雷が落ちてくることはなかった。そう、雷と名前がついているのに雷が落ちないという謎スキルなのだ。


────

雷撃

レベル:1

経験値:0 +

────


うーん、入れるものもないし試してみよう。


私はスキルポイントを 10 消費して【雷撃】のスキルレベルを 2 にする。


────

雷撃

レベル:2

経験値:10,000 +

────


よし。じゃあ、試してみよう。


私は窓を開けると外に人通りがないことを確認する。


「雷、落ちろ!」





やはり何も起こらなかった。ちょっと恥ずかしい。


ああ、もう。どうなっているんだこのスキルは!


こういうのって、こう、空から狙ったところに雷がドーン、と落ちてくるんじゃないの?


もう一年以上前の事だからよく覚えていないけど、この意味不明なスキルを取ったあの時の私を思い切り殴ってやりたい。


あの時【闇属性魔法】を MAX まで取っておけばこんな苦労はなかったのに!


とはいえ、後悔先に立たず、だ。


「フィーネ様、先ほどから何をなさっているのですか?」


あまりの挙動不審っぷりにクリスさんが心配そうな表情を向けてきた。


「ああ、ええと、トゥカットの一件でかなりレベルが上がったのでスキルポイントを割り振っていたんです」

「それはおめでとうございます。それで何故窓を開けてらっしゃるのでしょう?」


ああ、確かに。はたから見たら完全に意味不明な行動だ。


「実は、私【雷撃】というよくわからないスキルを持っているんです。それを 2 にしてみたのでもしかしたら雷が落とせるのではないかと思って試してみたんですがダメでした」

「【雷撃】……ですか?」


クリスさんも訝しんだ表情をしている。


「聞いたことのないスキルですね。雷と言われて思いつくのは勇者が雷を自身の神剣に纏わせて戦った、という伝説ぐらいでしょうか。ただ、それは勇者の固有魔法だと言われております。なんでも勇者が神より賜った神剣の力によって使えるようになる、いわゆる勇者の証となる魔法なのだとか」


なるほど、聖剣のほかに神剣なんてものがあるのか。まあ、聖剣って言ってもこれまでのクリスさんの戦いを見ている限り雑魚専って感じだったし、本当に強いのはこっちの神剣のほうなのかもしれない。


しかし雷の魔法が勇者の証って、どっかの有名 RPG で聞いたような設定だな。


「それ以外ですと、神話に謳われる裁きの雷ぐらいしか思いつきません」

「うーん、そうですか」

「フィーネ様はどうやってそのスキルを入手されたのですか?」

「最初から持っていたんです。レベル 1 ですけど」

「なるほど。神より授かったもの、ということですね。それでしたら、きっとそのスキルには何らかの意味があるはずです」


いや、よくわからず自分で適当に設定したんだけどね。


だが流石にそんなことは言えない。だって、あのハゲたおっさん、あれでもこの世界じゃ神様らしいし。そんな神様からタブレットを奪って好き勝手した挙句暴言まで吐いたとか知られたらなんとなくまずい気がする。


「そう、かもしれませんね……」


私は曖昧にごまかす。


しかし、剣に雷を纏わせる、か。確かにそれっぽいかもしれない。


あ、待てよ? ということはもしかして、雷なんて落とせるわけじゃなくてちょっと電気が流れる程度なのかも?


私はお腹を出して両手を添える。


──── 電流をパルスのようにして流す


ピクン……ピクン


すごい! 腹筋が勝手に動いた。やった。これで家事をしながら楽々腹筋が鍛えられるぞ!


はぁ。想像してたのと違う。


このコレジャナイ感はどうしたらいいのだろうか?


私がお腹に手を当てて呆然としているとクリスさんが胡乱気な表情で声をかけてきた。


「フィーネ様? そのようなはしたない格好で一体何をなさっているのですか? それにそんな風にお腹を出していたら風邪をひいてしまいますよ?」


はっとした私は慌ててお腹をしまう。


「いえ。自分が健康器具だったことにショックを……」

「あの? フィーネ様? 一体何をおっしゃっているんですか?」

「じゃあ、クリスさんもお腹を出してください」

「え? は、はい?」


混乱するクリスさんの服をたくし上げてお腹をだす。女性なのにうっすらと腹筋が浮き出ていて健康的に引き締まっている。


そして私はそんなクリスさんのお腹に両手をあて、パルス電流を流した。


ピクン……ピクン


「な? こ、これは? 腹筋が勝手に?」

「これが【雷撃】スキルの力です」


クリスさんが微妙な表情をしている。まあ、雷撃の「雷」も「撃」もどこいったって感じだもんね。


「この力を使えば、寝たきりで筋力の衰えた人のリハビリができたり、酷い肩こりの治療なんかができます」

「な、なるほど。治療に使えるなんてフィーネ様らしい素敵な力だと思います!」


口ではそう言っているが、クリスさんは何とも言えない微妙な表情をしている。


うーん、スキルレベルをあと 2 ~ 3 くらいあげれば何かに使えるのだろうか?


しかし、そうするにはスキルポイントが足りない。


仕方ないので私は今後に備えて残ったスキルポイントは割り振らずに残しておくことにした。

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