勘違いから始まる吸血姫と聖騎士の珍道中
一色孝太郎
プロローグ
2022/07/09 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました
2022/08/23 誤記を修正しました。
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俺の名前は
さて、もう既にプレイしている人も多いかもしれないが、俺は新作 VRMMO である
全くもって、不覚だった。先行予約までしていたのに一日勘違いするなんて。
まあ、そんなわけで俺は急いで家に帰り、アニュオンを自慢のゲーミングPCにDLしたのだ。
結構容量が多いらしく中々ダウンロードが終わらない。仕方ないのでコンビニに晩飯を買いに出かた。そして近くのヘヴンイレブンでたらこクリームパスタを買う。これはめっちゃうまいし満腹になるからおススメだ。で、一緒にビールもどきの元麒麟もばっちり買った。これで腹ごしらえをしてからアニュオンの世界にダイブする、というわけだ。自堕落生活万歳!
で、だ。そして今、気が付いたらやたらとだだっ広い空間にいた。
あれ? いつVRヘッドセットかぶったっけかな。
まあ、いいか。きっと元麒麟で酔っぱらったままアニュオンをプレイし始めたんだろう。そこからのキャラメイク兼チュートリアルの流れに違いない。
「目覚めたな。異界の魂よ」
──── なんだ? この変な服を着たハゲたおっさん。アニュオンにこんなおっさん居たっけか?
「そなたは神の手違いによって現世に別れを告げることとなってしまった。よって、そなたには新しい生を用意してやろう」
──── ん?あ、これはアニュオンの開始のシーンか?
そう、アニュオンの世界は、普段は現実世界に暮らしている自分が、並行世界である幻想界を行き来するという設定で、その現実世界と幻想界を繋ぐものを
「そなたに与えらえる新しい生は『魔王』じゃ」
──── は? それはダメだろ。いくらレア引いたからってそいつはダメだ。
そう、アニュオンでは人間の他にもいろいろな種族がいるのだが、魔王はダメだ。これまでに見た動画の情報だと、魔王は他のプレイヤー全員から狙われるドMプレイでまるで面白くないそうだ。昼間に見た動画にも『魔王をフレンド100人でフルボッコにしてみた』なんてのもあったし、魔王だけは勘弁だ。
「いや、魔王はいらん。それよりキャラメイク自由にやらせろよ。てか、運営が勝手に決める権限なんてないだろ」
「はい? キャラメイク? 運営?」
「は? 何言ってんだ。リセマラすんぞ?」
「え? え? え?」
なんかおっさんが混乱しているけど知ったことか。とりあえずおっさんの持っているタブレットをむしり取って設定画面を見てみる。
──── まったく、こういうのって、普通は最初からプレイヤーが持ってるんじゃないのか?
さて、おっさんが勝手に設定しようとしていたのはこうだ。
──
名前:シュヴァルツ
種族:吸血鬼王
性別:男性
成長タイプ:ファイター
職業:魔王
レベル:1
ユニークスキル:
吸血:10
霧化:10
蝙蝠化:10
影操術:10
眷属支配:10
血操術:10
魅了:10
スキル:
言語能力:10
体術:5
身体強化:5
闇属性魔法:10
状態異常耐性:10
火属性耐性:10
水属性耐性:10
風属性耐性:10
土属性耐性:10
闇属性耐性10
呪い耐性10
魅了耐性:10
────
「おい、おっさん。何してくれてんだ。何の嫌がらせだよ?」
「へ?」
「へ、じゃねぇよ。何極振りしてくれてんだ。まったく。俺がちゃんとした振り分けにするからちょっと待ってろ」
そう言っておっさんを睨み付けると、クソ運営が勝手に設定しやがった初期キャラに修正を加えていく。
そして、出来上がった結果がこれだ。
────
名前:フィーネ・アルジェンタータ
種族:吸血鬼
性別:女性
成長タイプ:オールラウンダー
職業:無職
レベル:1
ユニークスキル:
吸血:1
霧化:1
蝙蝠化:1
影操術:1
眷属支配:1
血操術:1
魅了:1
雷撃:1
成長限界突破
次元収納:1
精霊召喚
容姿端麗
幸運
スキル:
言語能力:10
魔力操作:1
闇属性魔法:1
聖属性魔法:10
回復魔法:10
火属性魔法:1
水属性魔法:1
風属性魔法:1
土属性魔法:1
状態異常耐性:10
火属性耐性:1
水属性耐性:1
風属性耐性:1
土属性耐性:1
闇属性耐性:10
聖属性吸収
呪い耐性:10
日照吸収
魅了耐性:10
────
俺はVRMMOのキャラは女でやると決めている。一番の理由は自分のプレイ動画を見直す時に可愛い女の子のほうが見栄えがいいからだ。それに、女のアバターだと何も言っていないのに勝手に貢いでくれる奴が結構な数いるからお得だ。女アバターの七割はネカマだと言われているのに何故貢ぐのかは謎であるが、もらえるものはもらっておくのが俺の主義だ。学生には先立つものが多くない。それにしても、何故アバターの設定を自分でできないのかは謎だが、仕方ない。そういうゲームもたまにはあるしな。
あれ? でもアニュオンの動画だとアバター設定あったような? ま、いっか。
ちなみに、フィーネ・アルジェンタータという名前は俺がゲームをやるときの最初のテストキャラで使っている名前だ。フィーネは良いという意味の英語 Fine をイタリア語読みしたもので、イタリア語だと終わりという意味になる。アルジェンタータは俺の苗字の白銀を意味するイタリア語だ。俺は新作ゲームをやるときはに最初は課金せず、攻略情報が揃ってから新しいキャラを作って課金することが多い。なので、最初のテストキャラに白銀の良き終わりという名前をつけるのはそれなりに気に入っているのだ。
職業は、魔王以外でも暗黒将軍とか、いかにも敵役っぽいのしかなかったので無職にしておいた。他のプレイヤーに集団でボコられるのはごめん被る。ちなみに、職業を魔王から無職にしたら種族が勝手に吸血鬼王から吸血鬼になった。種族は変えられるが吸血鬼王には戻せなかったし、人間だとステータスが下がるみたいなので吸血鬼のままにしてみた。
さて、スキルの割り振りはポイント制らしく、俺に与えられた初期ポイントは 250 だ。これは取れるスキルの数を考えるとかなり多いのではないだろうか?ちなみにユニークスキルの分類に入っているものは取るだけで 10 ポイント、それ以外もレベル分の ポイントかかる。ユニークスキルをレベルを 10、つまりMAXまで上げるときには 1 ポイント余計にかかって合計 10 ポイント必要になる。
で、吸血鬼の特性を見てみると、元々の種族特性がとんでもなく優秀なのだ。だが、種族による制限があっていくつかの明らかに有用なスキルや耐性が後からだと絶対に覚えられないものがあった。しかも、覚えられないものの中にはレベルを上げることができないものもあった。なので、それらを優先的に取得してMAXまで上げておいた。吸血鬼固有の能力はどうせ後からレベル上がるだろうから後回しだ。
それと、吸血鬼の天敵は聖職者と吸血鬼というのはどこの世界でも共通だろう。なので、それの対策も完璧にしてみることにした。まずは【闇属性耐性】【状態異常耐性】【呪い耐性】【魅了耐性】をMAXにして、【聖属性魔法】もMAXにした。これで吸血鬼は一方的に撃退できるはずだ。
そして聖職者対策として、【聖属性耐性】をMAXにするだけじゃなく、さらにもう 10 ポイントを割り振って【聖属性吸収】にしてみた。これをオーバードライブというらしいが、これで聖職者にやられることはないだろう。それに、吸血鬼なのに聖なる魔法をくらって回復するっていうシチュエーション、萌えると思わないか?
ちなみに、【日照吸収】というのは、【日照耐性】の上位版だ。【日照耐性】は文字通り太陽の下で活動できるようになるもので、【日照耐性】をオーバードライブすると【日照吸収】となる。すると太陽の光を浴びるとどんどん元気になっていくというものだ。
うん、光合成かな。
で、だ。こうすると吸血鬼のくせに昼間でも一切のペナルティなく活動できるだけでなく、太陽の光を力に変えて行動できる謎の吸血鬼の出来上がりだ。そもそも、いくらなんでもゲームやっているのに夜しか活動できないとか、どう考えてもあり得ないだろ?
【体術】とか【身体強化】とかの戦闘スキル的な奴は職業とセットでついてくるらしいので外してしまった。まあ、【成長限界突破】でレベル上限を取っ払ったので、追々レベルアップしていけば何とかなるだろう。本当はレベルアップに必要な経験値を減らしたりとか、レベルアップでのステータス上昇を上方修正してくれる的なのがあれば良かったんだが、残念ながらそういったものは見当たらなかった。
あと、【容姿端麗】っていうのはそのまま。見た目が美人になるそうだ。だって、自分の動画を見返すときどう考えても美人のほうがいいだろ?
残りはスキル名以外はちゃんと見ていないが、ポイントが余ったのでノリでつけてみただけだ。あまり気にしないでくれ。
「よし、おっさん。設定終わったぜ。結構ポイントくれてありがとな」
俺は確定をタップする。確認ウィンドウが出てくる。
『本当によろしいですか?※【警告】この変更は世界線に重大な影響を与えます』
なんだか意味不明なウィンドウが出てきたが構わずOKをタップする。
『本当によろしいですか?【警告】確定した場合、キャンセルすることはできません』
あー、はいはい。OKっと。俺はさっさと確定をタップする。
『確定しました。対象者を転生させます』
よし、やっと俺はアニュオンを始められるようだ。
「ほいよ。おっさん。これは返すぜ」
そう言っておっさんにタブレットを投げて返す。
「わ、と、と。投げるんじゃない。壊れたらどうするんだ。っていうか、え、ちょっと? 何勝手なことしてくれてんのぉー?」
なんかおっさんが怒っているが知ったこっちゃない。俺の視界は白い光に包まれるのだった。
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