第7話 魔法に挑戦してみました
どうもこんにちは。ローザです。ビワというものすごく甘い果物をたくさん収納に詰め込んだあたしは今日の寝床へと向かいます。
今日の寝床は近くにきれいな小川が流れていて水汲みがしやすい平らな場所です。
あ、水汲みなんて収納があればって思うかもしれませんけど、実はビワをたくさん収納したせいでお水があまりたくさんは入らなくなってしまったんです。
そんなわけなので、今日からは水汲みのしやすい場所での野宿になります。その辺の落ち葉とか草とかを敷いただけのなんちゃってベッドですけど、硬さは孤児院のベッドとそう変わらないのであたしはそんなに苦にはなりません。
あとはやっぱりそろそろ火が無いと限界な気がするんですよ。これまではほとんど野イチゴを食べてきて、今日やっとそこにビワが加わったじゃないですか。
ただ、キノコとか山菜とか、食べられそうなものは見つけているんですけどちょっと生で食べるのは難しそうなんです。キノコは生の状態だと毒があるって鑑定先生が言っていましたし、あと山菜はものすごく苦かったんですよね。それでもひもじい時は頑張って山菜を食べたりしたんですけど、あんまりたくさんは食べられないのでまずはキノコを焼いて食べられるようにしたいんです。
鑑定先生によるとあたしは火属性の適性があるらしいですし、着火くらいならできるんじゃないですかね?
と、いうわけで早速実践です。
あたしの目の前には拾ってきた小枝が置いてあります。ここにですね。未来の魔術師ローザが魔法で火をつけるんです。見ていてくださいね?
「着火!」
・
・
・
お、おかしいですね? 何も起きませんでした。
これはもしかすると、呪文を唱えなければいけないのかもしれません。それじゃあここは一つ、夢で見た「あろう小説」の呪文を試してみましょう。
「マナよ。万物を司るマナよ。我が手に集いて炎となれ。ファイヤーボール!」
・
・
・
あ、ええと、お、おかしいですね。何も起きませんでした。せっかく大きな声で叫んだのに……恥ずかしい。
え? 魔法の使い方は冒険者のお姉さん習わなかったのか、ですか?
もちろん習っていません。だって、お姉さんは魔法使えないですから。そもそも、孤児がそう簡単に魔法を使えるわけないじゃないですか。
え? お前は使おうとしてるじゃないかって?
だってしょうがないじゃないですか。あたしの生命の危機なんです。魔道具もなしに火なんてどうやって
だったらせっかく火属性に適性があるって分かったんですし、試してみたらできるかもしれないじゃないですか。
というわけで、あたしはもうちょっと色々試してみますね。
****
すっかり日が落ちて暗くなってしまいました。
え? 火ですか?
ええと、辺りは真っ暗です。それで察してください。
はぁ。
やっぱりそう簡単にはいかないですね。
今日はもう諦めて眠ることにします。おやすみなさい。
****
おはようございます。ローザです。
また夢を見ました。はい。何とも都合のいいことに、魔法の使い方を練習する夢です。
もちろん現実世界ではありません。たまに見るあの高いビルとかのある夢の中の世界で、そのビルの中の一室で魔法の使い方を練習していたんです。
周りの人の着ている服とかも全然違いましたし、薄くて四角くてそれでスクリーンのついている魔道具を持って状態をチェックしながらやっていたので「ああ、いつもの夢だ」ってすぐに分かったですけど、やっぱり何だかとてもすごくリアルでした。
また夢の話を、って思うかもしれませんけど、何だか今度はできそうな気がするんです。
あたしはビワの実を一つ食べると夢と同じことを試してみます。
大きく息を吐いてリラックスして、それからちょうどおへその下あたりに集中します。そして集中したあたりがぽかぽかと暖かくなってきたらそれをゆっくりと体中に巡らせていきます。
うん、ばっちりです。はじめてやるはずなのに今までに何度もやってきているような、そんな不思議な感覚です。
全身にこのぽかぽかしたものが巡ったので、今度はそれを右手に集めて、そして昨日失敗した薪に火が点くようにしっかりとイメージします。
「着火!」
あたしがそう言うと、小さな炎が出てあっという間に薪に火が点きました。
「やったぁ!」
あたしは思わず叫んでしまいました。
すごいです! 魔法ですよ! 魔法! 孤児のあたしが、まだ子供のあたしが魔法ですよ?
あはは、夢ってすごくないですか?
という事はですよ?
「えい!」
先ほどと同じようにしてから、今度は風を吹かせて見ました。そよそよと心地よい風が吹いています。成功です。
「えい!」
今度も成功しました。手元に小さな光の球が浮いています。
最後は闇ですけど……闇属性の魔法って何ができるんでしょう?
夢で見た話だとちゃんとしたイメージが無いと魔法は発動できないらしいですし、ちょっと今は無理そうな気がします。
となると闇属性の魔法を使うには誰かに教えてもらわないといけません。するとそのために人里に行かなきゃダメなわけですけど、ちょっと怖いですね。
一応、あたしは売られて奴隷にされそうになっていたわけですし、孤児院に戻ることはできません。それにオーナー様はかなり偉い人みたいですから、あたしが生きていると知られたらきっと捕まえに来るはずです。
そもそもあたしが孤児院から連れ出されたってことは、あたしを連れていくことが合法だったのか、もしくは非合法でも揉み消せるかってことですよね。
合法だったのなら見つかったは時点でアウトでしょうし、そうじゃなかったとしてもオーナー様の権力の及ぶ範囲内はダメってことになりますね。
うーん。それにしてもオーナー様って何者なんでしょう?
・
・
・
はい。考えても分からないものは分からないんですから気にしないことにしましょう。
とりあえず、見つからないように逃げるっていうのが良さそうですね。だって、もしオーナー様が貴族とかだったらどうしようもないですから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます