第131話 我慢大会はしていない

「幸せですねー」


しばらくすると海夜が俺にもたれながらゆっくりしている。


「またぽっこりか?」


俺がちょっとからかいつつ海夜に聞いてみると――もたれてきていた奴が俺を見つつほほを膨らませながら――。


「先輩?喧嘩売ってますか?売ってますよね?」


ベシベシ。


俺の肩を叩いてきた。やめろやめろ。お湯が飛んでくる。という状況だったので俺はそんな海夜の手を掴んでから――。


「はいはい。っか海夜」

「——なんですか」


しまった。何も言うこと考えてなかった。と、いう状況になったので――うん。いや、熱いというか。うん。熱くてね。あと。恥ずかしいというか――そうだ。と俺はパッと思い浮かんだことを海夜に言った。


「——なんか恥ずかしいからもたれるな。普通にのんびり浸かってろ」

「いやですよー」

「なんでだよ」

「まあまあこれが良いんです。まったりですから、先輩は私がおぼれないように支えるんですよ」

「謎だわ。っか座ってるのに溺れる可能性は――まあ沈めたらか」

「沈めようとしないでくださいよ!」

「それか甘えん坊だからなー。自滅するか」

「自滅って――勝手に溺れませんから。ってか。溺れたら助けてくださいよ?そんなことはないと思いますけど」


それからしばらく海夜は俺にもたれて――うん。まあ2人でなんやかんやといつものような感じで話していたのだった。

いつもと違うことと言えば――まあこれだな。


お湯の中に入りながら。という事だろう。ホント今日はいつもと違うリッチな生活だな。と俺が思っていると。


「先輩先輩」

「うん?」


先ほどまで話していた海夜が何故か俺の方を見て――いや、なんか俺の顔を見ているではなく。身体を見つつ――。


「先輩って、改めて見ると地味にしっかりした身体ですよね。ちょっとお風呂に入った時は、普段見ない先輩の身体にドキッとしましたが。慣れてきたので観察してみると――うんうん。しっかりした身体ですね」


なんか言いだしたのだった。うん。


「いきなり変態になるなよ。対処できないだろうが」

「ちょ、普通に褒めただけです。あと、ちょっと触りたくなります」


そう言いながら既に海夜は俺の肩から―—腕と。うん。身体を触りだしていた。


「変態じゃないか。おまわりさーん」

「なんでですか!」

「いや、身の危険をだな」

「逆ですから!」

「いやいや、今の状況はどう見ても俺が聞けんだろ。触られてるし」

「私はいいんです」

「何でだよ」

「先輩が触ったらお巡りさんです」

「待て待て、謎すぎる」


元気なやつ……と俺は思いつつなんか急に人の身体チェックをしている海夜を見ていると――ふと。ってか。さすがにずっとお湯に浸かっているので、海夜が火照っているというのか。まあちょっとは恥ずかしくて、というのもあるかもしれないが。でもそこそこ俺たちはお湯の中に居るので――。


「っか、海夜。そろそろ出るか?」

「えっ?あー、でもなんかもったいないような……」


俺が声をかけると海夜は――まだここに居たそうな感じで返事をしたが――やっぱり長すぎるのも。なので――。


「ほら、のぼせるとだし」

「……うーん。せっかくだからもう少し先輩とお風呂も――」

「のぼせる前に出るぞ。また入ればいいだろう?部屋にあるんだし。居る間は好きな時に入れるんだしな」

「まあ、ですね。わかりました。って、先輩先輩」

「うん?なんだ?」

「次は――浴衣ですよね?」

「えっ?あー、まあそうなるだろうな。っか、さっき買い物に言った時。俺が出したから。ベッドに置いてある。椅子のところにあるのは俺はさっき着たやつな」


俺は室内を見つつ海夜に言った。すると海夜は――。


「じゃじゃあ、私洗面所使いますから。勝手に洗面所入ってきちゃだめですからね」

「えっ?」


何だ急に?と俺が思っていると――海夜はバタバタと露天風呂から出て――タオルを持って室内へと向かって行ったのだった。


って――言うと怒られそうだが――着ているものが海夜の身体に張り付いているので後姿がなかなか――って、マジで変なことを言うと何でね。俺は。


「——海夜、別に慌てなくても、覗かないし見ないからな?」


そう声をかけつつ。俺もお湯から出ると……。

「わからないからです。先輩は変態ですからね」

「はぁ……謎な事言ってるよ」


俺がつぶやくと海夜はそのまま軽く体を拭いて中へと入っていった。


「……忙しいやつだな。って、実はかなり暑いの我慢してた?それだと――バカだろ」


俺はそんなことをつぶやきつつ。海夜の後を追うように室内へと向かったのだった。

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