第8話 荷物運びとケーキ

 ある休みの日。


 その日は普段はあまり行かない大きめのショッピングセンターに俺は1人で来ていた。たまにはちょっと出かけるか。と思い。電車に乗ってきてみた。


 さすが大きなショッピングセンター。なんでもある。という感じだ。

 専門店も多くはいっているので1日居れそうな感じ。

 アパートの近くにこんな店あると便利そうだなぁー。とか思いながら。1人でぶらぶら見て回っていた。1人だからかなり気楽。好きなところ見れるし。入れるし。そして好きな時に休憩できる。見終わったり飽きたら好きな時に帰れる。やっぱり1人は楽だな。とか思いながら欲しかったものを買い。せっかく来たからで普段見ないようなお店も見てまわっていた。


 ちなみに、まさかこの後知り合いに会うとかは全く思ってもいなかったな。

 今の俺には知り合いというのは1人しかいないのでね。その1人とこんなところで会うとかかなりの確率なのでね。

 知り合いと会うという未来に気が付くことなどなく。俺はその後も時間をかけてぐるっとショッピングセンターを1周歩いて見て回り。買い物もしたし。そろそろ買えるか。と思いつつショッピングセンターの最寄駅のある方面に歩いていたら…。


「あっ、先輩?」


 歩いていたら急に前に知り合い登場だった。


「海夜。え?なんで?」


 後輩と偶然会いました。

 っか、またレアな私服の海夜。

 この前もチラリと短時間は見たが。制服姿は見慣れてるが。私服を見るのは今のところ少ないのでかなりレアな光景。今日もなんか落ち着いた感じのいいところのお嬢様の雰囲気を海夜は出していた。


「えっと、海夜も買い物か?」

「はい。ちょっと見たいものがあって。ここの規模くらいないと種類がないかなと思いまして」

「すごい偶然もあることで」

「先輩は1人ですか?」

「悪かったな休みも1人で。って、海夜も1人じゃないか?」

「い、いえ、悪くはないですよ。私も1人ですから。ゆっくりみたいので」

「大人な高校生だな。海夜は」

「先輩も学生ですよ?大学生」

「確かに、って、邪魔してもだから、まあそのじゃまた」


 海夜の買い物の邪魔をしてもなので俺は話を切り上げようとしたのだが。


「えっ、あっ……」


 なんか海夜が言いたそうな顔していたので一応聞いてみた。


「?どした?なんかあったか?」

「あっ。あの、その……」


 海夜は何か考えてるのか少し間があってから…。


「先輩は。この後時間はありますか?」

「まああるけど……」

「よければ私の買い物を手伝っていただけませんか?」

「はい?」


 時間ありますか?と聞かれたので一瞬は一緒にここをまわらないですか?やら言われるか思ったが。なんか違った。手伝って?ショッピングセンターで手伝って、とはなんだ?とか思っていると。

 海夜が「こっちです」と歩き出したので俺は付いていく。


 少し歩いて行くと服屋とかのあるところは人が多かったがそこを抜けて。海夜の行き先は人が少なく静かな売り場だった。

 そこは棚やボックスなど収納棚?とかいうのか。そういう物が集まっている売り場だった。


「家具?棚か。なんか壊れたのか?」

「いえ、壊れたとかではなく。ちょっと部屋の模様替え考えていたのですが。棚かボックスみたいなのが1ついるかなと思ってここに見に来たんです」

「で、俺が連れてこられた意味は。なるほど、荷物持ちか」

「は、はい。すみません。実は良いのがあったのですが。箱を持ってみたら思ったより重くて。組み立て式だからコンパクトはコンパクトなんですが。1人でここから家まで持ち帰るのは厳しいかな?いうことで諦めて。せっかく来たから他のところも見て行こうかなー。と思って歩き出したら。先ほどのところで先輩が。歩いてまして」


 まあカラーボックスでも1人で運ぶは、ちょっと大変か。と近くにあった箱を試しに持ってみると。

 これは2段らしいが。そこそこの重さがあった。中身は木だからな。これだと3段とかだとコンパクトでも重さ。大きさもそこそこあるか。

 ここに置かれている商品はすべて組み立て式みたいなので、1つの箱に入っているがどれもそれなりの重さがあった。


「まあこれだと車やらないとな。女子じゃ大変か。今から駅まで歩いて電車乗ってまた歩きだからな」

「一度は持ってみましたが。なかなか重かったです。少しなら持てたんですが。ずっとはきつそうで、すみません。こんなことをお願いして」

「いや、いいよ…。っか、どれ買うんだっけ?」

「あっ、その2段で扉があるのがいいかと思ったんですが」


 そう言いながら海夜は棚の上にあった見本を指刺した。


「あー、なるほど。扉があれば目隠しもあるしな。色も落ち着いた感じだし。でも重かったと」

「はい。私……力ないので」

「まあ、海夜は力持ちとは思ってはいなかったが。見た目細いから。でも、なるほどなあ。確かにこれはいい重さだから、これ1つくらいなら運べるな」


 海夜と話ながら一度箱を持ってみる。

 なかなかしっかりしたのが入っているのか。重さは先ほどの物よりあったが。

 持てない重さではなかった。ってあれか。扉が付いている分重いのか。あと金具とかも少しだが入ってそうだし。


「大丈夫ですか?」

「買ったらレジで持ち手みたいなんもくれるだろうし。アパートくらいまでなら大丈夫かと」


 それから箱をレジに運び購入。もちろんだが海夜と一緒に帰ることになった。


「あっ、あの先輩の買い物はよかったんですか?」

「ああ。もう終わってたからな。問題ない。もうカバンに押し込んである」

「なら、よかったです」

「海夜も他は良かったのか?」

「はい。今日はこれだけでしたから」

「それならいいが。にしてもあんまりああいう売り場いかないからちょっと新鮮だったわ」

「今どきは通販。ネットでもいろいろ買えますが。やっぱりちゃんと実物見たいと思いまして」

「あー、確かにな。ネットだと。探せば店で買うより送料入れても安いのとかあるけど、色とかは画面で見るのと違うかもしれないし」

「そうです。あと大きさも書いてありますが。やっぱり一度物を見ていないと多少の誤差はあるかと思うので」

「自分で見て買うのが一番いいか」

「はい。私はそっちの方がいいですね」


 ショッピングセンターを俺たちは後にして駅から電車に乗り。

 その車内で海夜と話ながら帰った。

 まさかこんな帰り道になるとは思わなかったが。こういうのもたまには悪くなかったな。


 駅に着いてからは海夜の部屋まで俺は荷物を運ぶ。 

 地味に最後の方は大変だった。俺が運動不足なのか。でもまあ海夜の部屋まで商品を無事に運べたからよしか。途中でへばっていたら、何を言われたことか。海夜なら「ちょっと休みましょう」とか言ってくれるかもだがね。自分で運べると言ったんだから最後まで運ばないとだよな。


「置き場所は玄関で大丈夫か?」

「はい、すみません。あとは大丈夫です。自分で頑張ります」

「まあ無理しないように」

「あっ、その運んでもらった」

「いいよ、荷物運びくらいで」

「いえ。重たいものを運んでもらったのですから。何かしないと」

「いや、別にそんなに気にしなくても」

「ありがとうございます。でもお礼はします」


 海夜がなかなか折れなかったので、後日なんかあるみたいだ。

 俺は別に気にしなくていいのに、と帰ってからも少し俺は思っていたのだが。ま海夜は気にするタイプだったらしく。早速というのか、それは翌日だった。


 ★


 ピンポン。


 俺の家のインターが鳴り出てみると海夜が立っていた


「はい。ちょっと待ってくだ。って、海夜どうした?」

「こんにちは、その昨日のお礼です。荷物を運んでもらった」


 これは翌日の夕方のこと。


 海夜が俺の家にやってきた。

 そしてお礼といい箱を持っている。見た感じ。ケーキ?だろうか。とか俺が思っていると海夜が箱を少し持ち上げて「ここのお店のケーキ。とっても美味しいので買ってきました。ちゃっかり自分の分も買っちゃいました」と言っていた。


「昨日はホント助かりました。ありがとうございます」

「わざわざなんか悪いな」

「いえ、とても助かりましたから」

「あー、せっかくだからあがる?」


 先ほど自分のも買ったとか海夜は言っていたのでもしかしてその箱に一緒にケーキが入っているのではないだろうかとか思い。ちょうどおやつにはいい時間だしで提案したのだが。


「へっ?」


と海夜が固まるというか。その言葉は予想外です。みたいな感じでフリーズした。俺はというと言ってから。

 あっ、なんかまずい事言った気がする。と嫌な汗が流れていた。


「あっ。悪い。男ところだからな。無理には」

「あっ、いえただ、ちょっと予想外で驚いただけです。嫌とかではなく。せっかくですから、えっと、そのお邪魔します。私の買ったケーキも一緒に入っているのでお店の人に別々にというの忘れてしまって」

「ならまあ飲み物くらいは出せるから。どうぞ」

「じゃ、ケーキ食べちゃいましょうか?」

「まあそれもありだな。って、そう思ってあがるか聞いたし」

「あっ。そうですよね」


 ちょっと海夜混乱中?まあいいか。

 ちなみに、初めて後輩を部屋に入れた。って、いやここに他人が来るのも、はじめてじゃないか?多分はじめて室内入った来客だった。


 とか思いつつ海夜を室内へ。

 そして早速というか。こういうのはすぐ食べるのが美味いだろう。と勝手に思っていた俺は早速ケーキを食べることにした。

 ちなみに海夜は部屋をキョロキョロと観察。いや、見たところでなにもないぞ?と、俺が思っていたら。


「先輩の部屋。綺麗にしてますね。整理整頓されてます」

「なにも無いだけだな」

「いえ、普通に綺麗ですよ?居心地良さそうです」

「そりゃ、どうも」


 海夜の部屋チェックされつつ。海夜の買ってきてくれたケーキを食べることに。


 にしてもケーキなんて久しぶりだった。1人じゃな。買うことはほぼないから。たまに甘いもの食べたいなでコンビニのスイーツは買うが。ケーキ屋のケーキはかなり久しぶりと思う。

 箱を開けるとフルーツがたくさんのタルトと。ガトーショコラ?だろうか。チョコレートのケーキが2つ入っている。

 ちなみに、お店の人も上手にケーキが動かないように工夫がされている。


「海夜はどっち食べるつもりだったんだ?」

「あっ。えっとその。お礼とか言っておきながらですが。タルトです」

「なら、俺はチョコだな」

「チョコ大丈夫ですか?」

「問題なし。むしろ好きな方」

「よかったです」


 久しぶりのケーキの感想は、めっちゃ美味かった。


 これどこの店のだろうか。と気にはなったが。多分1人では行かないだろう。とすぐに思い。海夜に聞くのはやめた。でも目の前で食べている海夜のタルトもかなりおいしそうだった。


 ケーキを食べた後海夜はすぐに帰る。ではなく。雑談したりとしばらく俺の部屋でゆっくりとしていた。


 その雑談の中でとりあえず昨日購入したボックスは無事作られて。今はいい感じに部屋で利用できていると。よかったよかっただ。

とかを話していると。なんかゆったりとしたいい時間だった。


 それから少しして。外が暗くなってきた頃。


「突然、お邪魔しました」


 海夜がそんなことを言いながらぺこりと頭を下げた。


「いや、ケーキありがとう。美味かった」

「いえいえ、荷物運んでもらったので。あ、えっと、また、です」

「ああ。気を付けてとか言うほど距離は離れてないが。まあ階段気を付けて」

「大丈夫ですよ。ドジっ子じゃないです」


 と言いながら海夜は帰宅した。

 というか。めっちゃ近くなので。俺の部屋を出てから階段を歩く音がしたと思ったらすぐに、ドアの音がしたので海夜が自分の部屋に入ったのだろう。2階と3階だからな。すぐだわな。

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