2021 佐々木家の元旦
白い紫陽花 お正月編
佐々木家の元旦
1月1日。
20歳を超えるとこの日の朝が1番辛い。大晦日で盛り上がりお酒のピッチが止まらなくなる。うちはすでにみんな成人しているので、家族でお酒を楽しむ。好きなお酒の種類もバラバラなので大晦日の夜はいろんなお酒の種類が食卓に並ぶ。父さんはワインが好き。母さんは日本酒。真心はハイボール。愛はビール。自分はジントニック。いろいろなお酒が並ぶためチャンポンして、結果的に毎年悪酔いをしている。チャンポンすると悪酔いするというのは迷信で、いろんなお酒を飲むと飽きが来ないので結果的に多くお酒を飲んでしまうかららしい。
「起きて。もう朝ごはんの時間だよ。」
自分は二日酔いでダウンしているのにも関わらず愛が起こしにくる。この家で自分は1番お酒が弱い。真心も意外に強くて、酔うとゲラになって、些細なことで笑いが止まらなくなる。愛はうちで一番の酒豪。水みたいに高いアルコールのお酒を飲む。酔うと甘えたになるので自分の膝の上からなかなか離れない。トイレに行く時も手を繋ぎ、自分を連れて行く。トイレから戻っても自分の膝の上に乗り、黙々とお酒を飲む。
「頭痛い。」
「そういうと思ったら、二日酔いに効く薬持ってきたよ。」
最近はこんな薬まで売られているのかとすこし驚いた。愛から薬をもらい水で流し込む。薬が効き始めるまで10分ほど。愛は自分の額に保冷剤を乗せる。冷たくて気持ちいい。薬もかなり即効性があってだんだん体が楽になる。自分は体を起こして、愛に連れられてみんな集合しているリビングに向かう。
「おはよう。遅かったな。」
「なんでみんな二日酔いにならないのか不思議ですよ。あんだけ飲んだのに。」
「遺伝かな?早く朝ごはんにしよう。」
二日酔いの自分のことを無理矢理起こすのはご飯のため。冷蔵庫を開けるとお節があるから、それを食べて我慢して欲しいが新年最初の食事はみんな揃ってというのがうちのルールだ。自分は冷蔵庫の中からおせちの入っている重箱を出して、鍋に水を入れてお雑煮を作り始める。母さんにも手伝ってもらって、お餅はオーブンで一度焼き、すこしカリッとさせる。白だしとだしパック、めんつゆ、お酒にみりんを入れて塩で味を整える。かまぼことお餅を入れ、最後に三つ葉を入れて完成。シンプルが1番美味しいので我が家ではいつもこれを作っている。二日酔いであまり頭が回っていないのもあってすこしだけ助かっている。
「できたよ。」
自分が一人一人にお雑煮を振り分ける。母さんが重箱を広げて、全員が席に着く。
「では、新年初めての食事。いただきます。」
と、父さんの号令で食事がはじまる。この歳になって初めておせちの美味しさに気づいた。子供の頃、かまぼこ以外は基本食べなかった。今では昆布に黒豆、ナマス、数の子など、メジャーなおせち料理が美味しく感じることができる。いまだに苦手なのは伊達巻くらい。甘くて食べられない。伊達巻は愛が好きなのですぐになくなるから問題はない。真心は栗きんとんばかり食べている。自分はあつあつのお雑煮に苦戦しながらおせちの中にある松前漬けをちびちび食べる。散々昨日飲んだのに母さんは日本酒を飲んでいた。
「ほら、寛も一口だけのみなさい。お清めだから。」
渋々自分もおちょこ1口分だけ飲む。他の4人はガバガバ飲んでいて少し引いた。
食事を終えると父さんが封筒を出す。
「はい、お年玉。」
いい歳してお年玉をもらってもと思うが、貰えるものはもらっとけと思うので心置きなくもらう。封筒の中には5万円ほどとお守りが入っている。厄除のお守りだった。
一通り毎年の恒例行事を終えると、ようやく少し解放される。基本的に自分は寝正月にしたい。だから、自分の部屋に戻り布団に着く。すると、真心、愛が部屋に入ってきて自分の布団に入ってくる。
「狭いけど?」
「いいじゃん。一緒に寝よ。おやすみ。」
愛は自分の左腕を掴んで寝る。真心も自分の右腕を掴んで寝ている。足もホールドされて身動きが取れない。2人は幸せそうな顔で寝ているが動けないとなると窮屈。
「寝れないんですけどー!」
これが佐々木家の元旦の過ごし方です。
明けましておめでとうございます。
おしまい
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