白い紫陽花 特別編
有馬悠人
2020 佐々木家のクリスマス
多くの人は子供の頃はこの日が楽しみだった。大人になるとこの日は普通の日。仕事もあれば商談もある。少しだけまちが綺麗に着飾り、普段よりも豪華な食事が出て、企業側もクリスマスとうたって、すこしだけいつもより商品を高めに値段設定をするから出費がかさむ。今年で24になる自分はそれでもこの日がいまだに好きだ。それは食費を自分たちが出していないということも、裕福な家にいるということもあるだろうが、こういった行事ごとに佐々木家では全力でこだわるからだろう。このご時世、コロスケの影響で例年通りの会社でのクリスマスパーティーは開けなかった。いつも通りなら社員の子供たちを読んで、プレゼントを渡したり、豪華な食事を自分たちで用意したり、サンタのコスプレをして男性陣が鼻の下を伸ばしたりしていたのだができなかった。父さんが子供たちにプレゼントを渡せないことで悲しませるのは嫌だということで各社員の住所に本来渡すはずだったプレゼントを郵送で送った。何を送ったらいいのか話かからなかったので各家庭に自分の身長ほどある大きなクマのぬいぐるみを1体ずつ送った。
「準備できたよ。」
隣の部屋から愛の声が聞こえる。
「なら、こっちおいで。」
自分は愛を自分の部屋に招くと、愛と一緒に真心も入ってきた。2人はお揃いのサンタのドレスを着て自分の部屋に入ってきた。父さんがこの日のために作ったもの。男性陣が想像するような短いスカート半袖ものの安物ではなく、1着10万円ほどするしっかりとしたもの。赤を基本に、膝下のスカート丈の先にもこもこがついている。装飾もしっかりしたもので、うちのブランドで使っているものを総動員して作り上げている。希望する社員には配るのだが、恥ずかしいということでいつも愛と数名しか着ない。愛はいつもドレスを楽しみにしているのだが、今回真心が着るのはとても珍しいことで少し感動している自分もいる。それを着て、頭にはサンタの帽子をかぶっている。
「どうかな?」
少し顔を伏せぎみの真心が自分に問いかける。
「似合ってるに決まってんじゃん。いつも通り綺麗だよ。」
すでに自分はカメラを2人に向けて写真をとっている。愛はそれに気づくとノリノリでポーズをとっているが、真心はなかなか動いてくれない。
「ほら、お姉ちゃんも。」
愛が真心の手を引き、顔を近づけて強引にポーズを取らせる。
「よし、いいのが撮れた。」
そう言って自分はカメラとパソコンを繋いで、写真を読み取る。
「ほら、にぃにも着替えて。」
いつもなら自分の衣装はないのだが愛の手には茶色い服とトナカイのツノのカチューシャがあった。
「これって?」
「早く着替えてきて。お姉ちゃんの部屋使っていいから。」
しぶしぶ自分は真心の部屋でその衣装に着替えた。真心たちとは比べ物にならないくらいの安物だと分かった。着てるとすごく寒い。生地が薄すぎてスースーする。愛が大学帰りに買ってきたものだろう。
「着替えたよ。」
自分は自室に戻る。
「よし、なら、にぃには床で四つん這いになって。」
仕方なく自分は愛の要求を飲む。そうすると愛が自分の背中に乗ってきた。
「ほらお姉ちゃん!シャッターチャンス!!」
真心は自分たちにカメラを向けてシャッターを押した。
「どう?撮れた?」
愛は写真を確認すると大爆笑した。
「今度はお姉ちゃんの番だからね。にぃにはそのまま。」
真心はごめんねと言いながら遠慮なく自分に跨って、愛に向けてピースサインを出して写真を撮った。2人は普段あまり見せない自分の滑稽な姿に爆笑していた。
「もう終わりでいい?これ寒くて着替えたいんだけど。」
「待って!最後に一枚だけ。」
そういうと、愛はカメラのタイマー機能をつけて、自分の2人両端にきた。シャッターが切られる瞬間、自分の頬に優しい感触があった。
「メリークリスマス。これからもよろしくね。」
2人からの突然のプレゼントに自分顔を赤くした。その姿を愛はしっかりと写真に収めていたことを後で知った。
「ありがとうございます。」
自分はすぐに写真を家族のグループにのせた。愛はそれと同時に自分の上に乗っていた写真と顔を赤くした自分の写真をあげた。
おしまい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます