第5話 ワイバーンに乗って

「わ~~~~! 綺麗!」




 ワイバーンに乗ったソールは夢中で、眼下に広がる景色を眺めていた。すでに王都セルシアは遙か遠く、俺達の目にはミニチュアの街のように映っていた。




「そういえばソールってワイバーン乗ったことなかったんだもんね!」




 おもちゃを貰った子供のようにはしゃぐソールの笑顔を見ていると、俺までなんだか嬉しくなる。高い金を出して、買った価値は十分にある。




 しばらく、夢中になっていたソールであったが、少し落ち着いた後に、ソールは俺へと問いかけてきた。




「ねえリア! ちょっと聞きたいんだけど……!一体どこでワイバーンの操縦なんて覚えたの!?」




 そう、以外とワイバーンの操縦には技術が必要なのである。今回選んだ子は、わりと素直で操縦がしやすい子だったが、もし気性の荒い子にあたった時なんて最悪だ。下手したら、飛行どころの騒ぎではない。それはさておき、一見普通の少女である俺が、ワイバーンの操縦なんて、普通に考えたら出来ないだろう。ソールが驚いてそう口にするのも無理はない。




「ま、まあ、ちょっとね! 昔親に教えて貰ったことがあって!」




「リアの親って……」




 ソールはそう口にしかけたが、すぐに言葉を飲み込み、気まずそうに再び私に言葉をかけてきた。




「……ごめんね、変なこと聞きそうになっちゃって! 今のは忘れて!」




「良いよ! ソール! うちの親は昔、ギルドの戦士だったんだ。でも、ある任務にいったっきり帰ってこなかった」




「リア……」




 そう、オレの名前を口にしたソールは、心配そうな表情で俺の方をじっと見つめていた。




「魔女の討伐…… 思えばあのときから、わたしは魔女に縁があったのかも知れないね」




 俺はソールを心配させまいと、何とか作り笑いを浮かべ、ソールに言葉を返した。ソールは一瞬、何かを言おうとしたが、そのまま黙りこんでしまい、少しの静寂の後に、小さな声で一言呟いた。




「そうだね……」




「どうしてソールがそんな悲しそうな表情を浮かべるのさ! 全然気にしないでよ! むしろソールのお陰で、呪いが解けるかもしれないんだから! 感謝しかないよ!」




「……そうだね!」




 俺の言葉に、ソールは先ほどと同じ言葉を口にした。だが、その声色はさっきよりも幾分明るくなっていた。そのまま、小さな声でソールは再び口を開いた。




「呪い…… とけるといいね! リア!」




「ありがとう! 本当に、何もかもソールに頼りきりで……!」




「気にしないで! わたしもちょうどアーデント地方に用事があったから!」




 ソールは少し焦ったように、俺の言葉に笑顔で返した。本当に、ソールには助けてもらってばかりである。最初に人売り達から助けてもらったのもそうだし、こうして一緒に呪いを解くための旅までついてきてくれて……。




 いつか…… いつか、呪いが解けたときには…… ソールのために……




 そう、俺は決意しながら、ルサカの村に向けて、ワイバーンを進めていった。


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