少女になる呪いを受けてパーティを追放された俺、仕方無いので魔法少女として生きていきます

惟名 瑞希

第1話 呪い、そして追放


「すまない、リア。お前は今日でこのパーティをやめてもらう」


 そう言われるであろうことは、うすうすは感じていた。今の俺は完全にこのパーティにとって足手まといになっていたからだ。だが、頭ではわかってはいても、やはり俺も人間。感情の整理がおいついていなかった。


「どうして……!」


 苦楽を共にしてきたはずのメンバー。もう我慢の限界と言わんばかりの表情を浮かべながら、ロイは俺に向けて語気を荒げた。


「巷で俺達がなんと言われているか、知っているかリア? Sランクパーティと呼ばれたのは過去の話だ。今や、幼女を連れたロリコン軍団とまで言われている。もうそんな噂がうんざりなんだよ俺は!」


 ギルドの中でも最もランクが高いと言われるSランク。


 リーダーであるロイは、誰よりも戦いの才能に溢れた男であった。ギルドでも屈指の実力を誇っている、言ってしまえば天才剣士である。そして魔法が得意だった俺リア、そしてアランとガリム。俺達4人はSランクパーティとして、ずっとギルドの中でもトップクラスのパーティとして名を馳せてきたのだ。皆からの羨望の目が多かったのは言うまでもない。


 ギルドの英雄とまで評され、数々の功績を俺達は挙げてきた。街では、俺達のパーティを知らない者はいないと言われるまでに、俺達は名を上げていた。


 しかしどうしてこんな事態になってしまったのか。事の発端は、約一ヶ月前に遡る。


 あの日、俺達は魔女テティスの討伐へと赴いていた。



………………………………………



「ぐぅ…… まさか、私が人間なんかに……!」


 俺達は完全にテティスを追い詰めていた。


「残念だったな。ここがお前の墓場だ」


 追い詰めた標的にとどめをささんと、ロイが突っ込んでいく。しかし、相手はさすがに魔族の中でもトップクラスの強さを誇ると言われている魔女テティス。勝ちを確信したロイには慢心があった。


「甘いぞ……人間よ!」


「危ないっ!ロイ!」


 テティスがロイに向けて放った魔法。俺は自然と身体が動いてしまっていた。


 間に合え……!


 必死にロイに向かって手を伸ばす。手の平がロイに触れた感触と共に、俺に魔法が直撃したのはわかった。だがそこから先は覚えていない。そして、俺が目覚めたとき、俺の身体は、すっかり縮んでいて、女の子の身体へとなっていた。


 魔法の正体はよくわからないが、分析の得意だったガリムによると、魔女の呪いの一種だという。こうして、俺は魔女の呪いを受け、Sランクパーティの魔法使いだったリアから、少女の姿へとなってしまったというわけだ。その日、俺はテティスに殺されたことになっていたのだ。


 そのニュースは、巷を騒がせた。魔女相手では流石のSランクパーティであっても勝てなかったという事実だけが広まっていったからだ。


 流石にロイも自らをかばってくれた俺に罪悪感があったのだろう。しばらくは、パーティの一員として俺を迎えてくれた。だが、魔女の呪いのせいか、身体も思うように動かず、メンバーの中に不満がたまっていっているのが肌で感じられた。


 俺とて、黙ってメンバーに介護されていたわけではあるまい。必死に身体の使い方を思い出していた。そんな矢先、少し思い通りに身体が動くようになってきた時に、ロイは我慢の限界を迎えてしまったのだ。だからこそ、必死にリハビリのような努力を続けてきたからこそ、俺は悔しかった。


「そういうわけだ! もう限界だ…… 俺をかばってくれたのは本当に感謝している。だが、あの日、リアは死んだんだ。俺達はトップで無きゃいけない。お前はもう……。わかってくれ、リア」


「……っ!」


 俺とて言いたいことはいくらでもあった。だけど、必死に言葉を飲み込み、何とか感情を抑え込む。俺だって、仲間達が巷でそう言われ続けるのは悔しかった。英雄視されていたパーティの、世間の評判が落ちていく様を見ているのが辛かった。


「わかった…… 今までありがとう……」


 振り絞るように、俺は声を上げた。


 これでいいんだ…… 俺が身をひいて、普通の女の子として生きれば……


 3人は俺に背を向けて、何も言わずに俺の元を立ち去っていった。

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