第120話翔子と心春の会話(2)

心春は、翔子に確認。

「翼君がレンタル彼氏をやっていたといっても、翼君の意思ではないですよね?」

「そもそもチャラチャラした性格ではないと思うので」


翔子は、頷く。

「私が頼んだの、友達があまりにも落胆していて、可哀相だったから」

「二人とも、同じサークルの仲間」

「翼君としては、一緒に歩いたぐらいかな、お仕事感覚」


心春は、翼の言っていたことを思い出した。

「時々、接客業として、とか口にしますよ」

「そんな考えもあるのかな」


翔子も考えた。

「おそらくね、誰とでも合わせるのが接客業の大切なところ」

「その修行感覚かもね」

「翼君は、ご実家のグループの味見役とか、どちらかと言うと、技術スタッフでね」


心春も頷く。

「そうですよね、少し前まで高校生で、接客そのものは少ないはず」

「それで、受けたのかな」


翔子は苦笑い。

「私が強引にお願いしたの、それで私の顔も立てたの、きっとね」


そんな話をしていると、翼の部屋で物音。


翔子

「起きたのかな」

「おなか減ったのかな」

心春

「声をかけます?」


翔子と心春は、同時に立ちあがり、翼の部屋の前に。

翔子がノックすると、翼の声が聞こえた。

「あ・・・開けないで」

「今、着替えているから」


心配しなくてもいいような、元気な声だった。


翔子はホッとした。

そのホッとしたついでに、からかいたくなった。

「ねえ、翼ちゃん、お着替え手伝おうか?」

「子供の頃、シャツのボタンを、よく間違えたよね」


心春がプッと吹いていると、また翼の声。


「あのさ、翔子さんって、痴女?」

「僕の裸見て、何が面白いの?」

「汗かいたから、着替えたいの」


しかし、そんな文句で引き下がる翔子ではない。

「翼君、それ言っていいの?」

「心春ちゃんに、あれ言っていいの?」


翼の声が、大きい。

「ダメ!個人情報の漏洩でしょ?」

「とにかく、着替え終わるまで待って!」


心春が翔子の顔を見ると、翔子はフフンと笑う。

「翼君ね、小学校の低学年の頃」

「注射を怖がってね、私の親の病院で」

心春も笑う。

「大泣きになったとか?」


翔子は、思い出し笑い。

「もうね、逃げようとするし」

「押さえつければ、怖いって、大粒の涙をポロポロと」

「それが可愛くてね、写真残してあるもの」

心春も興味津々。

「その写真、見たいです」

「スマホに入れておきたい」


翔子は、結局、翼の「あれ」を漏らしてしまったのである。

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