第53話翼と翔子の言いたい放題(2)その後、写真館で大騒ぎ

翔子に「恋人風」に引きずられながら、翼は思った。

「レンタル彼氏とか、いろんな付き合いも鎌倉で発生した」

「兄さんからは、お見合いが何とかって」

「男女の何とかの前に、まずは学生だから勉学なのでは?」

ただ、そんなことを翔子に言いたくない。

できれば、翔子とは、気軽に文句を言い合える仲でいたいのだから。


翼は、話題を変えた。

「郷土料理研究会で、写真館に行くの?」

翔子は、「はぁ・・・」とため息。

「ねえ、どうして耳がいい加減なの?」

「郷土料理研究会の部長さんが、写真館の娘さん」


翼は「ああ、そうだった」と思い出すけれど、切り返す。

「まだ眠かったしさ、あまりにも翔子さんが美しく見えて、ドギマギしてしっかりとは聞いていない」

翔子は、フンと横を向く。

「さっきは、お尻がデカいって」

「今さら、変な言い逃れは却下」


そんな言い争いをしていると、写真館が見えて来た。

写真館の前に立っている女性がいる。

あの女性が、郷土料理研究会の部長で松山美幸さんだろうか、手を大きく振っている。

翔子が、いきなり大声を出した。

「部長!おはようございます!」

「お目当ての翼君、連れて来ました!」


翼も仕方なく、ちょこんと頭を下げると、松山美幸嬢が歩いて迎えに来た。

「あらーーー!この子が翼ちゃん?」

「いい感じ!」

と、翼の前に立ち、翔子をブンと押しのける。

そのまま、翼の腕を組む。

「じゃあ、おいで」


翼は「はぁ?いきなり?」と思うけれど、立ち止まると転びそうなので、そのまま松山美幸と一緒に歩く。

翔子の寂しそうな顔も気になるけれど、まったくどうにもならない。


松山美幸の声が弾んだ。

「真奈も美紀も恵美も来ているよ、待っている」

翼が「え?」と翔子を見ると、翔子はすねたような顔。

しかし、問答をしている時間もない、そのまま写真館に入った。


すると、、松山美幸の言葉通り、真奈と美紀、恵美が寄って来て、大騒ぎ。

「えーーー?部長!いきなり腕組み?」

「年下好みなの?」

「ねえ、翼君、辛くない?強引過ぎるよね」


翔子も、ようやく文句。

「そうなの、せっかくいい感じで歩いて来たのに」

「部長は横暴」


松山美幸は、ニコニコとして腕を離さない。

翼は、この時点で疲れている。

これから何が始まるのか、何の話になるのかも、全く予想がつかない。


松山美幸が、全員に声をかけた。

「せっかくだから、話し合いの前に、記念撮影しない?」

「衣装もあるしさ」


翼は、「話し合い」どころか、「衣装」の意味もわからない。

首を傾げていると、松山美幸が説明。

「翼君にはタキシードもあるし、和服もあるよ」

「女の子たちは・・・ウェディングドレスとか」

「アキバ風のメイド服もあるよ」


翼が「はぁ・・・」と戸惑っているけれと、お姉さんたちはどんどん衣装室に入り、大騒ぎが聞こえて来る。


「着せ替え人形だよ、面白いよ」

「ゴスロリ風がいい」

「超ミニスカは・・・うーん・・・」

「バニーガールもある、着る!」

「私はセーラー服にするかなあ、難しいかなあ・・・ちょっときつい」

「メイド服にする、その後翼君と結婚写真」

「あーーーダメ、それは順番!」


翼は、この時点で帰りたくて仕方がない。

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