第40話翼の鎌倉散歩(2)江ノ島弁天様のご利益が?

翼はブラブラと歩きエスカレーターにも乗って弁財天を参拝。


「エスカーって言うんだ、面白い」

「正式には江島神社か、日本三大弁財天ねえ」

「縁結びの神か・・・あまり関係ないや」

「男女の縁ではなくて、何か面白いこととの縁が欲しいなあ」


「レンタル彼氏」どころか、男女の恋愛も「どうでもいい」翼としては、別のお願いをする。

その後は八坂神社や稲荷社、秋葉社を簡単に参拝、空腹感も強くなったので下におりる。


昼食場所は、タクシーの運転手に紹介された店。

広い通りではなく、狭い通りに入った店で、渋めの小さな店。

「いかにも地元客ばかりって感じだな、全員が普段着で」

「でも、掃除もしっかりしていて、こういう店は好き」


席に座って、メニューを見る。

「真鯛の刺身」「アジの刺身」と「味噌汁とご飯」を頼むと、店のおばさんが笑う。


「あのさ、若いんだから、それじゃ老人食だって」

「アジフライも食べて、うちの自慢さ、美味しいよ」

「若い子が、ガツガツ食べるのを見るのが好きなの」

「ついでにマグロ丼も頼んでよ」


翼も、これには笑ってしまう。

「わかりました、お願いします、頑張って食べます」


実際、全てが鮮烈で美味しかった。

「いつも、実家では職人が必死に素材と技術、趣向を凝らして作ったものを食べて来たけれど」

「こっちのほうが、パワーがある」

「どうしてもレストランとか旅館の料理は、余所行きで」

などと、完食の勢いを見せる。


その翼に食べっぷりに、店のおばさんも笑顔。

「いいねえ、お兄ちゃん、気に入ったよ」

「最初見た時は、上品な子だなあと思ったけれど、パワーあるねえ、うれしいよ」


翼も笑顔。

「タクシーの運転手に教えてもらって」

「地元の人が入る店で食べたいなと、お願いして」

「やはりねえ、新鮮な素材のパワーと感じます」

「それを、しっかりと年季が入った立派な包丁さばきで」

「感謝します、元気もらいました」


その翼の言葉に反応したのか、狭い店内、他の客も声をかけてきた。

「ああ、こういう店の料理が一番だ」

「そうだ、煮付けも食べなよ」

「刺身とフライ?煮付け食べないとなあ」


翼が「ああ、そうだった」と笑うと、店主らしいおじさんが、「カレイの煮付け」を持って翼の前に。

「食べてみな、兄ちゃん」


翼は、「うわ・・・これは・・・」と口に入れると、涙が出るほどに本当に美味しい。

「甘辛が・・・いや・・・美味しいなんてもんじゃなくて」

「生きていて良かった、そんな味で」

「日本人で良かったなんて、そんなことより」

「この店に来て良かった、うれしくて」

「ちょっと、モヤモヤしていたのが全部消えて」

「弁天様のご利益かなあ、みんな神様に見えますよ」


その翼の言葉が面白いのか、狭い店内が、ドッと笑いが起きる。


「いいねえ!兄ちゃん!」

「昼間だけとさ、お酒飲みたくなったよ!」

「その食べっぷりが気持ちいいよ、なあ、みんな!」

「笑顔もいいなあ、若い頃を思い出すなあ」

「こっちも元気をもらっちゃうよ」

「いい若い衆だよ、今時なあ、目がキラキラしていてさ、素直な性格がいい」

「こりゃ、この子は弁天様にも、気に入られたんだよ、きっと」

「なあ、いきなり入って来て、こんなに俺たちを元気にするんだからさ」

「はやく大人になって、酒一緒に飲もうよ、なあ!みんな」


翼の周りには、どんどん人が集まって来る、そして大騒ぎになっている。

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