第12話 竜巻
「『―――フハッハハハーーー!!』」
疲弊しきったスミレとマチマサが必死に立ち上がり、まだ闘おうとする姿に
・・・オイ、
もう良いだろ?
毒手を受けた
『あの
・・・・・・いや!
『・・・・・・そんなもん知らんっ!!』
精神内でチェンと
「『こんなに愉しいのは、滅多にない!誰であろうと邪魔立てするのは、許さんぞ!!』」
戦闘の続きを始めようと歩み出す
―――ボッカァァァーーーン!!!
「「・・・・・・っ!!」」
突如、店の壁が爆破したことにスミレとマチマサが驚く
「―――ゲ~ロゲロゲロロ・・・!!見つけたゲコ!さっきは、よくもやってくれたゲロな!!
スキンヘッドで小太りな蛙の
「『・・・・・・』」
・・・お、落ち着け!
冷静になれ、
少し戦闘に水を差されたからって・・・
「『我の逆鱗に触れたな・・・!!』」
・・・や、やばい!
「『――――絶滅させてやる!!』」
鋭い眼孔でジャクシ達を威嚇すると龍人化したチェンの周辺の大気が震え出し、店内が揺れ始める
「ゲ~ロゲロロ~!!・・・絶滅?この軍勢を見て同じセリフが吐けるゲコ?」
店の周辺どころか、この村中にジャクシの手下達が何百、何千人と押し寄せて、完全に包囲されている
「この男、1人でも苦戦してるのに・・・!!」
「ここから蝦蟇蛙盗賊団も相手にしないとダメなの・・・!?」
「俺様の蝦蟇蛙盗賊団の人員は、大陸一ゲコ!その一人一人に充分な兵力と武力を併せ持つ、手下総出ゲロ!!いくら同じ
ジャクシの合図と共に武器を持った手下達が襲って来る
「『―――絶滅だぁぁぁーーー!!』」
龍人化したチェンが村中に響き渡る程の怒りの咆哮をあげると手下達が怖じ気づき、立ち止まる
「相変わらず、デカイ声ゲコ!怯むな臆せず進むゲローー!!倒した者には、褒美をやるゲコ!金、女、好きに言うゲローー!!」
「「「―――うおぉぉぉーーー!!!」」」
ジャクシの報酬に目が眩んだ手下達が雄叫びをあげながら一斉に襲い掛かって来る
「『・・・・・・』」
・・・や、やばいぞ!
流石に、この兵力でごり押しされたら負けち・・・
『―――愚問だな!我を誰と心得る?天上天下唯我独尊だぞ!!』
「・・・?・・・な、何だ!?」
「風向きが変わった?」
「・・・違う!アイツに向かって風が吹いているんだ!!」
突然、気流の流れが変化し、チェンに向かって吹き荒れる強風にジャクシの手下達が困惑する
「『―――遺言は、それで良いな?』」
風の力を操ったチェンが蝦蟇蛙盗賊団に向かって一直線に飛行する
「・・・バカゲロ!返り討ちにするゲコ!!」
ジャクシの命令に従い、剣や槍、銃などを持つ手下達が一斉にチェンを迎撃する
「・・・な、何だ!・・・コイツは!?いくら刺しても撃っても全く効かずに弾かれる!!」
「ジャクシ様~!この男、引き摺り落とすどころか、どんどん加速していき、勢いが増して止まりませーーん!!」
「・・・ゲ、ゲロロ~!?」
チェンがジャクシの手下達の隊列の間を縫うように高速で飛び回ると、そこに突風が発生する
「・・・そ、そんな・・・嘘でしょ!?」
「僕らは、あんな化け物を相手にしてたのか?」
驚愕するスミレとマチマサの視線の先でチェンが台風並みの強風を起こしながら飛び回り、旋風を作り上げ、飛行速度が速くなるにつれて次第に大きく膨れ上がっていき、巨大な竜巻を巻き起こす
「「「―――ぎゃぁぁぁーーー!!!ジャクシ様ぁぁぁーーー!!!」」」
大量にいたジャクシの手下達が枯れ葉のように上空へと舞い上がり、遥か彼方へと吹き飛ばされていく
「・・・お、おお、お前、俺様を倒す為とは、いえ!加減を知らないゲコ!?」
チェンが作り出した竜巻が周辺の木々や民家など全てを吹き飛ばした所業にジャクシが呆気に取られる
「『・・・神経質な野郎だ!些細な犠牲だろ?』」
―――どこが些細だぁぁぁーーー!!
どう見ても大災害!
天変地異、引き起こしてんじゃねーか!!
言ったよな?約束したよな?
誰も殺さないって!!
『・・・まだ、死んでないだろ?』
・・・
ブチギレして加減を忘れてやがるな!!
「『残り、一匹で根絶やしに出来る!!』」
地上から遥か上空へ巻き上げられたジャクシの首を掴み、宙吊りのまま締め上げる
「・・・ゲ、ゲコ・・・ゲロロ・・・!!」
・・・ま、まずい!
このままじゃ、まずいゲロ!!
こんな上空にいたら助からないゲコ!
どうにかして油断させないと完全にまずいゲロ!!
何か奴の気を引かせる方法は・・・!!
「『―――絶命しろ!!』」
鋭い爪でジャクシの身体を引き裂こうとする
「・・・ほ、彫り・・・彫り師・・・」
―――止まれっ!
「『・・・・・・チッ!!』」
チェンの言葉に耳を傾けて寸前のところで踏み留まる
・・・そうだよ!
コイツも
何か伝説の彫り師の情報を持ってるかもしれないぞ!!
「・・・ゲホッ!・・・ゲコ!・・・ゲロ・・・!!」
締め上げる力が緩まりジャクシが呼吸を整える
・・・油断したゲロな!
この至近距離で限界ギリギリまで捻れ巻いた舌を吐き出せば形勢逆転ゲコ!!
「『・・・端的に話せ!!』」
「・・・ほ、彫り師の・・・情報は・・・―――い、岩っ!!?」
突如、地上からチェンに向かって大岩が飛んで来たのでジャクシを盾にして直撃を免れる
「『・・・・・・?』」
・・・な、何だ?
この大岩は!?
一体、誰がどうやって・・・
こんな大岩を
「スミレ、マチマサ・・・!任務中に膝を付いて休むなんて偉くなったな・・・!!」
「「―――マサキ隊長っ!!」」
武装警羅隊、隊長のマサキが現れ、スミレとマチマサが安堵の声を上げる
「昼間から堂々とサボって減給だな!これは・・・!!」
「「・・・そ、そんな~!!」」
肩に金棒を担いだままのマサキ隊長が2人を注意する
「『・・・何だ?・・・あの時代錯誤の原始人は!?』」
「あんな大岩を投げ飛ばせれる人間は、1人しかいないゲロ!武装警羅隊、隊長・・・―――ゲ、ゲコッ!?」
「『彫り師以外のことを許可なく喋るな!!』」
勝手に話し出したジャクシの首を締め上げて、黙らせる
・・・オ、オイ!
このタイミングで武装警羅隊、隊長の登場は、かなりヤバくねーか!!
『石で狩りをする旧石器時代の人類相手に何言ってる?』
・・・いや、違ぇーよ!!
時間だよ!時間!!
龍人化してられる時間が残り2分ぐらいだろ!?
「『問題ない!文明を知らぬ、
手の平に出した火の玉に風の力を加えて、火力を増幅させて、大きな炎の球体を作り上げ、地上にいるマサキに目掛けて放つ
・・・ロ、
それ、大丈夫なのか!?
『無論だ!全てを焼き払う火力だぞ!!』
・・・いや
そうじゃなくて・・・
『・・・・・・?』
あの位置、
「『―――あっ!!』」
龍人化したチェンの声が掻き消される程の轟音と共に炎の球体が急降下していく
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