第10話 コンビプレー

『・・・これで視野が広がった』

「・・・な、何その肉体からだ?・・・気持ち悪りぃ~!それ本当に悪魔デビルズ刺青モンモン!?僕、オカルト系、無理なんですけど~!!」

服を破り捨てて上半身が露になったチェンの身体に彫られた龍の入れ墨が皮膚の上を自由自在に動き回り、普通に会話する光景にマチマサがドン引きする


「妖刀使いが何言ってんだよ!いくらお兄ちゃんでも今のは、傷付いたぞ!!」

「オカルト以上におぞましい超常現象に今、巻き込まれてるんだけど・・・!!」


『―――入ったぞ!!』

マチマサの間合いに右足を入れたロンが挑発する


「オイ、何してんだ!ロン!!」

「懲りないね!何度、斬られれば気が済む・・・―――っ!?」


・・・あ、あれ?

右足は、無事!斬られてない!!


・・・どうして!?


『片足だけじゃ解りにくいか?―――全身だ!!』

「・・・そ、それ以上は、止めろ!ロン!!細切れにされる・・・ぞ・・・!?」

マチマサの間合いに入った途端、チェンの姿が完全に消え去る


「・・・な、何っ!・・・一体どういうこと!?・・・周りに誰もいないのに・・・何故、斬りかかるんだ?」

妖刀が何に反応して斬り続けるのか解らずマチマサが混乱する


『・・・わかるか?』

「・・・ど、どこだ?・・・何処にいる!?」

『童子の遊戯に付き合ってやってるんだ!躱そうと思えば造作もない!!』

「・・・どっから話し掛けている?」

マチマサが周囲を見渡しても、声のする方へ耳を傾けてもチェンの姿を確認できない


『何を言っている?―――ずーっと目の前におるでは、ないか?』

「―――なっ!!?」

突如、姿を現したチェンが妖刀の刃を指2本で白刃取りして太刀筋を受け止める


『チャンバラごっこは、余所でやれっ!!』

「・・・・・・くっ!!」


・・・よ、妖刀がびくともしない!

指先の筋力だけで妖刀を完全に封じられている!!


「オイ、ロン!アレ見ろ!!簡辛ガンシンの奴、隻腕女に負けちまったぞ!!」

『・・・喚くな!』

「毒手を受けたんだぞ!早く解毒治療をしないと・・・」

『少しは、頭を使ったらどうだ?大体、毒手使いは、解毒薬を肌身離さず身に付けてるもんなんだよ!』


・・・な、なるほど

なら急いで医者へ連れて行かなくてもスミレから奪えば良いんだな!


「行かせないよ!その指を放した瞬間、再び妖刀で斬りかかり、簡辛ガンシンも巻き添えにしてあげる・・・!!」

マチマサが間合いを拡大させ、間合いに侵入した全ての生命を斬り捨てられる体勢を整える


『物騒な童子だ!部屋に引きこもるから、そんな思想を抱く、外へ出て日光でも浴びて来い!!』

「―――うっ!ぐわっーー!!」

妖刀を掴んで離さないマチマサを全力で投げ飛ばし、激突した壁を突き破り、外へと吹き飛ばす


「よ~し!ここからは、人命救助の医療行為だ!!何をされようがドコを触ろうがセクハラには、ならねーから覚悟しろーー!!」

「堂々と変態発言しながら突っ込んで来て・・・!!私の毒手の餌食になっても後悔するなよ!!」

スミレの胸へと伸ばした両手を毒手で防ぎ、払い除ける


「ぎゃぁぁぁーー!!毒手受けちまったぁぁぁーーー!!もうダメだ!・・・う、腕が!腕がぁぁぁーーー!!」

毒手で弾かれた腕の皮膚から聞こえる焼け焦げた音にチェンが絶叫する


『―――何ともないだろ?』

「・・・・・・えっ!!」

ロンに諭され冷静に両手を視認するが痛みは、全くなく、皮膚に毒液が染み付いたが問題ないみたいだ!!


「加減し過ぎたようね!猛毒ならどうよっ!!」

「―――っ!!」

毒素たっぷりの毒手による掌底がチェンの胸を突く


「・・・あれっ!何コレ?スゲー!!全く毒が効かないぞ!?」

『言ったろ?我に毒は、効かぬと・・・!!』


・・・いや

確かに言ってたけど・・・


―――ここまで毒耐性が凄いと思ってなかったから!!


「これなら毒手を気にせず身体をまさぐれ・・・―――いや、解毒薬を探すことに専念できる!!」

「変態野郎がぁぁーー!!」

卑らしい手の動きをするチェンを迎え撃つ姿勢で構える


・・・ぐっへへへ!

おっぱい揉み放題だぁぁーー!!


『・・・と、止まれっ!!』

「―――妖気斬裂刃ようきざんれつは!!」

「・・・うっ!―――うおぉぉぉーーー!!」

店の外から飛んできた禍々しい怨念の篭った黒い刃の斬撃が通り過ぎる


・・・あ、危ねぇ~!

何だ、今の斬撃は!?


壁や床、テーブルなど全てを斬り裂いたぞ!

ロンの忠告がなければ直撃していた!!


『あの童子!ここまで妖刀を使い熟すとは!!』

「何笑ってんだよ!ロン、危うく当たるところだったんだ・・・」

『―――また来るぞ!!』


・・・・・・へっ!


「―――なっ!!・・・う、後ろ!?」

通り過ぎた筈の黒い刃の斬撃が再び舞い戻り、チェンを狙い襲って来る


「・・・ど、どういうことだ?何度、躱しても躱しても威力が衰えるどころか消えずに斬り掛かって来る!?」


「これがマチマサの奥義!妖気斬裂刃ようきざんれつは!!マチマサが今まで斬ってきた生命の怨念を乗せた刃は、標的を切断!絶命させるまで成仏せずに襲い続けるわ!!」


・・・な、何だって!

このままじゃ、マズイ!!


「どうする?ロン妖気斬裂刃これ、ブーメランみたいな軌道を描かずに不規則な方向へ動き回るから攻撃が読みづらい!!」

『―――右往左往するな!じっとしてろ!!』

慌てふためくチェンにロンが一喝する


「ぼーっと突っ立ったままで良いの?2対1なの忘れたの!!」

スミレが真っ正面から突っ込んで来る


「毒手は、効かないけど・・・数的不利だし!先に隻腕女を戦闘不能にしといた方が・・・」

『―――勝手に動くな!そこは、童子の間合い・・・―――っ!!』

チェンが一歩踏み込んだ場所は、マチマサの間合いの中で一瞬にして複数箇所、妖刀で斬りつけられる


・・・し、しまった!やっちまった!!

戦闘中なのにロンを無視して動いてしまった!!


「もう~硬いな・・・!!」

チェンの筋肉の隙間や関節を重点的に何度も斬りつけるが傷は、付かず、少し動きを鈍らせることしか出来ずに腹を立てる


妖気斬裂刃に気を取られ、気配を消したマチマサが店内に戻っていた事に全く気付かなかった!

完全に俺のミスだ!!


「―――目潰しっ!!」

「―――うぎゃぁぁーー!!・・・め、目が!目がぁぁぁーーー!!」

そのまま突っ込んで来たスミレがチェンの両目を毒手で突き刺す


「私、史上最大の猛毒よ!擦っただけでも即死する!!それを一番、粘膜の弱い眼球へ当ててあげたわっ!!」


『我の眼球を貴様ら猿の進化版と同じと思うな!こんなもん痛くもなければ痒くもない!!』


「・・・そうだね、僕らは、猿の進化形!非力で臆病な猿達は、知恵を使うことで生き残ってきたのさ!!」


「『―――っ!!?』」

妖気斬裂刃がチェンの後頭部に直撃する


「お前がどれだけ強くて偉いのか知らないけど・・・―――人間嘗めんなよ!!」


・・・ま、まさか!コイツら!!

ここまで予測して闘ってたっていうのか!?

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