三戦目

ダイスロール


「申し訳ありません、負けてしまいました…」


 戻って来た迅兎は酷く陰鬱な表情でそう詫びた。

「いやまあ、しょうがないよ。全力で闘って負けたのなら謝ることなんてひとつもない」

 この面子は誰しもがクセのある者達だが、その誰一人として自身の責務を投げ出したことはなかった。それは風魔の忍びとして邁進していた迅兎とて同じこと。

 彼が本気で挑みそれでも及ばなかったのなら、それは相手がより強大な存在だったということ。

 …正直考えたくはない。風魔迅兎があらゆる手を尽くしてそれでも勝てなかった人間―――厳密には人型兵器らしい―――がいるなどとは。

「戦闘中の傷や異常は全て取り除かれているらしいけど、疲れたでしょ。休んでていいからね。……サイコロに嫌われていなければ」

 六分の一だ、そうそう連戦などありえないとは思うが。

「忍者が殺されるほどの敵か。いいなァ、そういうのとやりてえェええ」

「とっととコイツも地獄を見ないかしら…」

 僅差で先に死亡してしまった、という迅兎の報告を受けてからこっち、二度出番を外したアルは次こそはと早くも闘志を燃やしていた。そんな彼の背後でぼそりと音々の忌々し気な呟きが聞こえるも、この男にとってはどんな戦場でも地獄と見ることはないだろうとも思う。

「頼むぜ白埜!次またお預け喰らっちまったらオレはレンをぶった斬ってこの滾りを鎮めなきゃならなくなるからなっ」

「なんでやねん自分の身体斬れや」

 ジト目でツッコむレンとアルの間で、白埜の手からサイコロが投げられる。

 呪詛にも似たアルの祈りは波動となって自らの目を引き寄せる……ことはなく。

 1。

「お、僕か」

「よっしゃ大将さっさと行って終わらせて来い。その間にオレはレンを斬る」

「マジかお前。だいぶイカレ具合に磨きが掛かってきたな。ちょっ待て武器を出すなこっち来るな誰か助けてー!」


「戦闘は専門外だったとはいえ仮にも風魔を、特異家系当主を倒す者がいるか。旭よ、本腰入れて挑めよ。君の普段の調子では勝てるものも勝てん」

「わかってるって、カナ。ちゃんと気は引き締めてるから」

「この世界にはない理と術法は相当な脅威です。僕が言うまでもないでしょうが、旭さん。ご武運を」

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